インターハイで見るべき逸材は……。Jリーグでスター確定の「弟」たち。

インターハイで見るべき逸材は……。Jリーグでスター確定の「弟」たち。

 今年の夏を彩るのは、才能あふれる「弟」達だ――。

 8月7日から第1試合が行われるインターハイ。1週間で1回戦から決勝までの6試合をこなすハードな一発勝負のトーナメントが、今年は三重県で開催される。

 この夏の主役になりうる選手の中に、多くの「弟」たちがいる。兄を追いかけて同じ高校に進学し、同じユニフォームを身に纏う男達にフォーカスを当てたい。

 その前に、まず触れておきたいのは、今大会ですでにJクラブへの入団が内定しているのはたった1人だけ、ということ。だからと言って今年はタレントがいないわけではない。複数のJクラブからオファーを受けてどのクラブにするかまだ迷っている選手もいるし、プロか大学かで迷っている選手もいる。そして早くもJクラブのスカウトが熱視線を送る1、2年生もいる。

 そんな彼らの中に、冒頭で挙げた「弟」たちがいる。最初の弟は、唯一のJ内定者である青森山田のCB三國ケネディエブスだ。

192cmのDFは元“点取り屋”。

 ナイジェリア人の父と日本人の母を持ち、192cmという特筆すべき高さと身体能力を持ち、アビスパ福岡へ進む彼は、2学年上に兄・三國スティビアエブスがいる。

 現在、順天堂大学でプレーする兄は、182cmの大型サイドバックとして高円宮杯チャンピオンシップと選手権の2冠を達成している。

 この兄の背中を追うように、ケネディも東京から青森山田中に入学。青森山田中では大型ストライカーとして活躍し、3年時の全国中学校サッカー大会では得点王に輝くなど、点取り屋として注目を浴びていた。

「このままでは目標であるプロになれない」

 高校進学後もFWとしてプレーするが、チームの分厚い競争の前になかなか出番が掴めなかった。そこで「どうやったら試合に出て成長ができるか」を考えた結果、昨年の春に自らCBへのコンバートを決意し、黒田剛監督に申し出た。

 兄も高校途中まではセントラルプレーヤーだったが、左サイドバックにコンバートしたことで出番を掴み、不動のレギュラーとして2冠に大きく貢献している。その姿を間近で見ていたケネディは、自分も新たなポジションで成長することを心に誓ったのだ。

「このままでは目標であるプロになれないと思った。CBとしてプレーすることでより幅を広げられると思ったし、やれる自信はあった。FWとしての経験がCBで活きますし、その逆もあると思うので、CBでプレーしたいと思ったんです」

 彼が固い決意を示したことで、黒田監督もCBでの起用を決断。一方で、途中出場からとなる圧倒的な高さを活かすべく、FWとしての起用も続行し、昨年の1年間はFW・CB兼任としてプレーを続けた。

「僕の中で、この先はCBで生きて行こうと」

 そして、今年はついにCBとしての起用に一本化。昨年は途中出場が大半だったが、CBの不動のレギュラーとしてのシーズンをスタートさせた。

「ヘッドを磨きながらも、スピードがあったり、小柄な選手への対応はプロのスカウトからも見られると思うので、対応できるように日頃の練習から意識をしている」と、大型選手にありがちな『潜り込まれたときの弱さ』を解消すべく、重心の置き方、ステップワークなど細部にまで意識を張り巡らせて自己鍛錬を続けた。

 徐々にその効果が出始め、1対1の対応、裏への対応などの質が上がり、CBとしてのクオリティーが上がってきた。

「僕の中で、この先はCBで生きていこうという思いが強い。ここが居場所だと思っています」

 この強い意思が目標であるプロ入りを引き寄せた。もちろんこれがゴールではない。CBとしての経験が浅い分、彼にはまだまだ大きな伸びシロがある。インターハイではその『余白』も頭に入れながら、彼のプレーを見て欲しい。

兄と壮絶なポジション争いをする弟。

 同じDFで注目を集めているのが、東福岡の右サイドバック・中村拓海だ。

 彼も三國同様に高3になってからレギュラーを掴みとった男だ。

 ただ、三國と違うのは中村の兄・駿(現・国士館大)は同じ右サイドバックで、学年も1つ上。同じチームに進めば、ポジション争いのライバルになることは間違いないのだが、大分トリニータU-15から東福岡に入学した兄の後を追って、彼も大分U-15から東福岡の門を叩いた。

 当然、昨年は兄と激しいポジション争いを演じ、結局この弟は1年間控えに回ることになった。

 だが、「兄とはライバルだけど、何でも言い合える仲なんです。だからポジション争いをしても、凄く良い刺激になった。兄とはストロングポイントも違って、僕より守備がうまかったので、自分の守備のプレーの指摘もしてもらえて、一緒に成長することができたと思います」と、同じ道を辿ったことに後悔は1つもなかった。

 そして、高3になって彼の才能は一気に開花した。

 課題だった守備力も少しずつ向上したことで、彼の最大の持ち味である「プレーの多様性」が効力を発揮しているのだ。

昨年は全く無名の存在だったが……。

「彼は持久力とスプリント力は陸上部でも全国レベルにあると思う」と東福岡・森重潤也監督が語るほどのアップダウン能力を持つ中村。ただスプリントして攻撃参加するだけでなく、ビルドアップやゲームメイクにまで携わることができる。

 ボランチの位置に入ってボールを受けては両サイドに展開のボールを入れたり、ロングスルーパスを通してDFラインをブレイクすることもできる。さらにドリブルでボールを持ち出してのワンツーや、ラストパスなど守備的MF、攻撃的MFの役割をもこなしてしまう。

 昨年まではまったくの無名の存在だったが、今年の春のサニックス杯でその多彩なプレーの幅を見せつけると、彼の周囲は一変。Jクラブのスカウトがこぞって注目するようになり、6月には初の代表となるU-18日本代表にも選出。すでにJ1クラブが正式オファーを出すなど、「今年のスカウティングの目玉」として争奪戦が繰り広げられるまでになった。

矢板中央戦は1回戦屈指の好カード。

「サイドの選手は常に全体を視野に入れることができる。だからこそ、見えている自分が常に顔を上げて、プレーにかかわり続けられれば、チームにとってプラスだと思う。世界レベルのサイドバックは、アシストはもちろん、点を決められるし、当然守備力も高い。将来的にはそういう選手になりたい」

 この夏、彼の多様な才能はより成長していくのか……。初戦の相手はハイレベルなプリンスリーグ関東を無敗で独走する強敵・矢板中央(栃木)。1回戦最大の好カードで何ができるか。

 Jクラブのスカウトがさらに色めき立つような活躍に期待したい。

マリノスユース昇格を断って高校へ。

 最後に桐光学園(神奈川)の2年生レフティー・MF西川潤を紹介する。2年生ながら、早くもJクラブの争奪戦が始まっている逸材である。

 彼の兄・公基は3学年上のため高校は入れ替わりだが、中学から桐光学園に進んでいた兄は、高校2年時にレギュラーを掴むと、181cmの身長と類まれなスピード、そして強烈なシュートを持つサイドアタッカーとして活躍。卒業後は神奈川大に進んだ。

 弟・潤は中学時代、横浜F・マリノスジュニアユースに所属。中心的な選手として活躍し、ユース昇格の話もあった。

「選手権に出たかったし、兄が出ているのを見て羨ましかった。兄から『桐光学園は厳しいぞ、体力も必要だぞ』と言われて、覚悟はできていました。僕にとっては、もともとその要素が足りないと思っていたし、現に兄も高校に入ってからどんどんフィジカルが強くなっていくのを間近で見てきていたんで。自分が成長できる環境はここだと思って決めました」

 結局、トリコロールではなく、兄と同じ水色のユニフォームに袖を通すことを決めた。

中村俊輔の「10番」を1年生から。

「相当な能力を持っている選手。より厳しい場面で決定的な仕事ができるようにしたい」と桐光学園・鈴木勝大監督が語ったように、入学してからすぐ、かつて中村俊輔(現・ジュビロ磐田)らが背負ったナンバー10を託され、攻撃の中枢として据えられた。

 1年生ながら大きな責任を背負い、兄から伝え聞いた通りの甘えを許さない厳しい練習環境の下、彼は着実に成長を遂げた。

 2002年2月生まれの彼はU-16日本代表としてもプレー。今年は来年のU-17W杯出場を懸けたAFC U-16選手権もあり、大忙しの1年となりそうだ。

「今年はプロになるために必死でやりたいと考えていました。昨年はプリンスリーグ関東で1点しか獲れなかったし、選手権予選も勝てずに大会にも出られなかった。そういう面では悔しすぎる1年だった。今年は2年生ですが、すべてのレベルを上げて、チームを勝たせる選手になりたい」

「兄は越えないといけない存在」

 入学当初は179cmの高さを持ちながらも華奢だった彼は、この1年半で胸板も厚くなり、フィジカルコンタクトにも屈しない強さを身に着けた。

 もともとその突破力では抜きん出た存在だっただけに、そこにさらなる力強さが生まれたわけだ。

 確実にやれることが増え、より左のアタッカーとしての怖さが増したことで、早くもその獲得を目指して本格的に乗り出しているクラブも複数ある。

「左サイドからどうやっていい形でゴール前にアプローチできるか、いい状態でシュートを打てるかが課題。もっともっと伸ばせる場所は多いと思います」

 伸びシロ十分の彼を射止めるのはどのクラブか。熾烈な獲得のサバイバルレースはすでに始まっている。

 真夏の三重を彩る「弟」たち。

 彼らに共通しているのは、「兄は越えないといけない存在」(中村拓海)であり、「学ぶべきものが多い重要な存在」(三國ケネディエブス)であること。

 先を走る兄の背中を見て、そして追いかけて育ち、やがてそれを追い越そうとする――兄達も弟達に負けじと努力する。家族だからこそ存在する絆が、彼らの成長速度を上げている。

 インターハイはそれを証明する1つの舞台。少しでも成長した姿を見せるべく、3人はそれぞれのピッチに立つ。

文=安藤隆人

photograph by Takahito Ando


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