風船と遊び続けるオカダ・カズチカ。G1自力優勝消滅危機と今後の変貌。

風船と遊び続けるオカダ・カズチカ。G1自力優勝消滅危機と今後の変貌。

 風船をプーッと膨らまして、風船を振り回して、風船を飛ばして、風船と遊んでいるオカダ・カズチカがいる。

 風船にはドルマークの「笑顔」がマジックで書かれている。

 新日本プロレスのG1クライマックスは終盤戦を迎えたが、オカダの風船遊びはまだ変わらない。

 オカダはAブロック公式試合8戦を戦って6勝2敗。2連敗後の6連勝だが、ずっとオカダ本来の勝ち方ではなかった。ただ、8戦目となった8月5日の大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)でのEVIL戦ではやっとオカダらしい戦い方が見えて来た。

 1年前には同じ大阪で不覚の敗戦を喫したEVIL相手に、オカダは花道で助走をつけたドロップキックでEVILを吹っ飛ばした。

 オカダはEVILの得意技である“EVIL式・大外刈り”も繰り出して、最後はパイルドライバーから強烈なレインメーカーで仕留めて見せた。やっとオカダらしさが戻ってきた気配が感じられた。

 でも、そのキャラクターは、依然として風船男のままだ。

「前のオカダ・カズチカに戻ろうと思ってない」

「そんなにオレが余裕で勝ったように見えますか。そんなにオレが強かったですか。そんなにオレは格好よかったですか」

 オカダはマイクを握って続けた。

「6勝目! 順調だね、オカダ・カズチカ。みんなが思っているオカダ・カズチカに戻ってきたんじゃない?

 でも、オレ、別に前のオカダ・カズチカくらい強くて格好いいオカダ・カズチカに戻ろうなんてまったく思ってないんだよね。

 もういくつか上に行くよ。オレが上に行くってことは新日本プロレスが上に行くってことだからね」

「棚橋さんがかわいそうだから」

 オカダは8月10日の日本武道館で、棚橋弘至との公式戦がある。

 館内から「タナハシ」という声が飛ぶと、それにも反応した。

「みんなやめて。棚橋さんがかわいそうだから。まあかわいそうだけど、日本武道館初日、オカダが勝って、優勝します」

 棚橋とは5月4日に福岡国際センターでIWGPヘビー級王座戦を戦った。そして、王者オカダは粘りを見せた棚橋を振り切る形でIWGP12連続の防衛記録を達成した。

 だが、6月9日の大阪城ホール、ケニー・オメガとの13度目の防衛戦でまさかの黒星を喫して、今、オカダの腰に王者のベルトはない。

 オカダは豹変した。

 髪の色を変え、「奇人」のようになってG1クライマックスに参戦した。戦い方もちぐはぐでアンバランスだった。

IWGP王者への挑戦のためにも。

「忘れたわけじゃない」というIWGPのベルトを取り戻すための近道は、このG1クライマックス優勝が手っ取り早い。

 G1優勝者には来年1月4日、東京ドームで行われる「WRESTLE KINGDOM」でIWGP王座への挑戦の権利証が与えられるからだ。

「ああ、きつかった。みんな強いね。

 G1クライマックス、こうやって短期間でいろんな選手と当たって、みんなの強さってのを肌でもって感じて。そして、その上を行くオカダ・カズチカは、もっと強い。

 改めて、罪な男だよ、オカダ・カズチカっていうのは」

 オカダはインタビュースペースの床に座りこんで、壁にもたれかかっていた。汗がまだ流れていた。

優勝のために棚橋戦は落とせない。

 ここでオカダは現実と直面することになる。オカダは8月5日の大阪大会を終えて勝ち点12で、公式戦では日本武道館初日でのAブロック首位の棚橋(勝ち点14)を1つだけ残していた。

 棚橋との過去11戦の通算戦績は、オカダが5勝4敗2引き分けと1つリードしている。

 棚橋はこのG1は決してきれいな勝ち方とは言えないが、札幌でホワイトに敗れた以外は7試合で勝利を収めてきた。

 棚橋は勝ち点を奪うことに徹して、エビ固め、首固めなどの地味な逆転技で3カウントを奪っている。

 生き残るために手段を選ばずに、省エネ・ファイトで勝ち点を積み重ねて首位をキープしている。

 オカダは首位の棚橋を倒せば、自動的に武道館最終日8月12日の優勝戦にコマを進められると思っていたようだが、ジェイ・ホワイトという存在をつい忘れていたのだ。

「今年のオレのテーマは何でしたっけ?」

 オカダはホワイトに開幕戦で敗れているから、武道館で同じ8月10日、勝ち点12のホワイトがEVILとの試合に勝つと勝ち点14になり、オカダが棚橋に勝って、勝ち点で並んでも、直接対決の成績で、オカダの優勝戦進出は消滅する。

 現実に直面してオカダはちょっと肩を落としたが、気を取り直したように付け加えた。

「どっちみち答えはシンプル。

 まあ、ジェイが勝ったとしても、別に同じCHAOSですから。そうなったらジェイに決勝に行ってもらいたいしね。 ジェイは好き放題やっているけれども。G1クライマックスらしくない戦い方をしているのかもしれないけれど。

 それはね、後で、終わったら、また話し合いでも、戦ってでも、わからせてやればいいと思う。ジェイが勝ったら勝ったで、オレの夏はおしまい。

 まあオレは、勝つしかないんで。今年のオレのテーマは何でしたっけ?」

 オカダは「ニーッ」と笑顔を見せて立ち上がった。

文=原悦生

photograph by Essei Hara


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