憲剛の予言的中。新人・守田英正が大島僚太と“川崎の三角関係”に。

憲剛の予言的中。新人・守田英正が大島僚太と“川崎の三角関係”に。

「守田はいいね。試合に絡んでくると思うよ」

 開幕前に、そんな予言をしていたのは中村憲剛である。

「大学ナンバーワンボランチ」と評されて流通経済大学からやってきた守田英正は、加入当初から期待値の高い新人だった。今季初の公式戦となったFUJI XEROX SUPER CUP2018では後半途中に出場。いきなりプロデビューを飾ると、球際の激しさや局面守備の強さだけではなく、確かな配球技術も披露。その後もコンスタントに出場機会をつかみ、シーズン前半戦では、フィールドプレイヤーとしてチーム唯一の公式戦全試合帯同を果たしている。

 そしてリーグ再開後の現在は、大島僚太の隣でチームの舵取り役として成長中だ。

 前節の横浜F・マリノス戦では先制弾の起点となるスルーパスを通し、後半には3列目の飛び出しで相手センターバックの注意を引きつけて、小林悠の追加点をお膳立て。2得点に絡む活躍を見せて勝利に貢献した。

 中村が予言したように、王者・川崎フロンターレの中盤に新たな風を吹き込む存在となりつつある。

ネットの名古屋移籍で再構築。

 これまでを振り返ってみると、流動性と緻密さが同居するパスワークで成立する川崎の中心には、大島僚太とエドゥアルド・ネットのダブルボランチ、そしてトップ下の中村憲剛の存在があった。

 もともとは風間八宏前監督が2016年に確立したトライアングルだが、チームを引き継いだ鬼木達監督は、このユニットを解体せずに継続。この三角関係の機能性も失われることなく、昨季にリーグ初制覇を成し遂げている。

 しかし今夏に、エドゥアルド・ネットが名古屋グランパスに電撃移籍。川崎の中盤は新たな三角関係を構築する転換期を迎えた。その一角を担うことになったのが、出場機会を増やしている新人・守田だった。

 チーム全体の手綱を握るポジションだけに、そのチューニングには繊細な作業が求められたはずだ。だが指揮官は、守田にネットの代役を求めることはなかった。

鬼木監督は2人の推進力を買った。

 リーグ再開前、大島と守田のコンビに期待する役割を鬼木監督に尋ねたところ、こんな風に口にしている。

「彼らの運動量、カバーの意識。そういうところで、前も後ろも力を持っていける2人。そこのところがバランスよく出れば良いですね。2人とも推進力がある」

 かつて風間前監督がダブルボランチに求めていたのは、「ゲームコントローラー役」だった。ボールを失わずに握り続けるために、中村、大島、そしてネットをボランチで固定し続けた。

 一方で鬼木監督が求めるのは、大島と守田によるコンビの持ち味をチームに還元すること。それが攻守両面の機動力であり、攻撃に厚みを加える推進力ということになる。

 中断明け最初のリーグ戦となった北海道コンサドーレ札幌戦では、守田がゴール前に出て行く推進力と積極性を発揮し、小林へのアシストを記録。続くV・ファーレン長崎戦では、今度は大島が高い位置で攻撃に絡み、守田が後ろで重心を取るという縦関係が機能した。

「僚太くんが『こうしよう』と」

 試合を重ねるごとに、両者の間に適切な関係性も構築されつつあるのだろう。大島もまずまずの感触を口にしていた。

「どっちかというと、守田が後ろにいた方が守備のバランスは良いし、やりやすさはあるのかもしれないですね。そこは自分と守田の関係だけではなく、憲剛さんも含めて、誰かが降りてきたら抜け出したりという関係を意識しています。守田が前に行ってチャンスを作っているシーンもあるし、誰かが背後にランニングをかける動きは、自分とネットとのときはなかったもの。そういった意味で、攻撃に関わるというのは守田のよさでもある。そこは消す必要はないと思ってます」(大島)

 守田自身は、自分の武器をチームで発揮すると同時に、ボランチとしての引き出しを増やす作業に取り組んでいる最中でもある。例えば相手が出方を変えてきたときの対応力や試合運びなどは、隣にいる大島の指示に従っていると証言する。

「(大島が)すぐパパッと決めてくれるので、試合中はそれを遂行するだけです。内容は言えないですけど(笑)。例えば、相手の配置が変わったときに、自分たちの好きな形で守備をしている。でも、それを相手にかいくぐられたときに、『じゃあ、ああしよう』、『こうしよう』と僚太くんが言ってくれる。それでやっていますね」(守田)

 もっとも、当の大島は「誰と組んでもできることは変わらないです。言葉が通じるので、しゃべりながらやれますし」と、守田とのコミュニケーションに関しては、多くを語ることはない。ただ彼もまた、ネットとのコンビ時代とは違った刺激を受けながら、自身の成長につなげているはずである。

憲剛が機を見てボランチ教育中。

 そしてもう1人、守田の成長を楽しみにしている選手がいる。

 中盤での三角関係を築く、トップ下の中村憲剛だ。「技術もあって走れるし、素直で話も聞ける」と守田を評価しつつ、「でも、うちのレギュラーでやるなら、もっとやってくれないと困る」と言い、機を見てボランチ教育を行っているほどである。

「自分と僚太に相手のマークが厳しくついてきたら、守田が3番目のゲームメークをすることが必要になってくるからね。今までは自分と僚太がマークされても、ネットがいた。ネットがいたときは、そこでの意外性というか、クサビやサイドチェンジもあったし、そこでフリーになれた。2人が消されても誰かが活路を見出す関係性だったから、あの三角形は止まらなかった。でも守田との3人だとそういうわけにもいかないから」(中村)

ビルドアップ時の工夫を提案。

 例えば敗戦を喫した浦和レッズ戦では、相手守備陣を攻略しきれなかった。中盤で中村と大島が厳しく監視されると、打開する術を見出せず、守田自身も消極的になってしまったことを悔やんだ。浦和戦を経た練習後、守田から助言を求められた中村は、その場で懇切丁寧にレクチャーしている。

 具体的には、相手を見て工夫するビルドアップの仕方だが、その一端をこう明かす。

「最終ラインに落ちた時に、ボールをどう入れれば良いのか。ただ落ちるだけでは意味がないし、なんで落ちて数的優位を作るのか。それを考えるということ。それは、相手の足を止めるため。相手が見ているだけで、動かなくていいパス回しをしていた。すぐにサイドにボールを出されるのは、前の守備者としては楽。だって、味方に任せればいいから。

 夏場なので、いかに相手の足を使わせるかが大事。それを何回もやれば、相手の選手は攻撃する時にも疲れるかもしれない。だったら、そういうことを意識して、次はやってみようかと言っている。『こうしろ!』とは言わないけど、『こうするとディフェンスは嫌だよ』という話をしているかな」

憲剛が大島を育て、大島が守田を。

 横浜F・マリノス戦では、相手の綻びを意識した崩しで、守田は2得点に関与する働きを見せた。スポンジのように教えを吸収して、成長を遂げていくルーキーには、試合後の中村も「すごいスピードで自分の世界が変わっていると思う。毎試合、毎試合、あいつには話すことが多いよ」と、今後の伸び代を楽しみにしているようだった。

 川崎フロンターレといえば、長らく中村がチームの手綱を握るチームであり続けた。しかしここ数年で、中村が育て上げた大島が日本を代表する選手となり、近年は独り立ち。現在ではその大島が新鋭のボランチ・守田を引っ張る立場となり始めている。

 そして中村と大島の背中を見て試合に出続ける守田もまた、日本を代表する中盤に成長していくことだろう。

 鬼木フロンターレに生まれた、夏の新たな三角関係。その行く末は、しばらく目が離せなさそうだ。

文=いしかわごう

photograph by J.LEAGUE


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