西武で大阪桐蔭出身の“4番目”。中村、浅村、森、そして岡田雅利。

西武で大阪桐蔭出身の“4番目”。中村、浅村、森、そして岡田雅利。

 現在、熱い戦いが繰り広げられている夏の全国高校野球選手権大会。

 北大阪大会決勝では新記録となる23得点を挙げて甲子園行きを決め、甲子園でも優勝候補の筆頭に挙げられる大阪桐蔭高校は、多くのプロ野球選手を輩出していることでも有名だ。

 現在は16名の選手がプロの世界でプレーしており、強打者が目立つのも特徴である。中村剛也は6度の本塁打王と3度の打点王に輝き、中田翔(北海道日本ハムファイターズ)も2度、最多打点タイトルを獲得している。

 最も多い4名の現役選手が在籍するのが阪神タイガースと埼玉西武ライオンズだ。特にライオンズは4名全員が一軍ベンチ入りを果たし、8月7日には中村が1000打点の記録を樹立。浅村栄斗はパ・リーグ単独トップとなる82打点目を記録し、通算600打点も成し遂げた。クリーンアップを打つ森友哉も含め主力として優勝争いに関わっている。

 そんな中、ライオンズで「大阪桐蔭出身4番目の男」と呼ばれているのが岡田雅利である。

一見“大阪桐蔭らしくない”が。

 4番目というのは年齢順ではない。最年長の中村剛也が2002年、主将の浅村栄斗が'09年入団。岡田と森友哉が同じ'14年入団となるが、森がドラフト1位で岡田はドラフト6位。年齢は4名の中で上から2番目であるものの、社会人チームを経ている岡田は、指名された順番で数えると大阪桐蔭出身の4人目の選手となるからだ。

 とある企画で4名の座談会を担当したときに、岡田は「僕もこのメンバーに入れてもらえて安心しました。忘れられてるんやないかと思いました」と自虐気味の冗談を言って周囲を笑わせていた。確かに、フルスイングで観客を沸かせる、派手なプレースタイルの3名に比べると、岡田は一見“大阪桐蔭らしくない”選手だ。

 かつて、森がこんなことを言っていた。

「岡田さんは社会人野球を経験するうちに大阪桐蔭色が薄まったんですよ」

今年は積極的に打ちに行く。

 岡田は語る。

「高校時代、西谷監督にはどんな結果も恐れずに、しっかり自分のスイングをしろと常に言われていました。でも、社会人野球はトーナメントやし、ホームランが打てるバッターがそれほど多くはない。たとえばボールが先行して相手投手が苦しんでいる場面で、自分が振りに行ってアウトになると、試合の流れがガラッと変わってしまうんです。

 そういう試合を経験して、バッティングに対する考え方がだいぶ変わりました。ランナーをためて、そこからチャンスをつないでいこうという、きっちりした野球が叩き込まれたせいかもしれませんね」

 しかし、今年の岡田は一味違う。野球観に変化が起きたのだ。

「昨シーズンまではフォアボールを選ぼうとか、次につなげようと考えて打席に立っていました。でも結果的に3−2になってしまって、凡打で終わることが多かった。慎重に行こうと考えることで、甘いボールを見逃す打席も多かったんです。そういうところは変えていかないとこの先、出番は増えないなと思いました」

 昨シーズン、自己最多の68試合に出場した岡田だったが、今年は森が故障から完全復帰したことや、森に経験を積ませるというチームの方針もあり、森がマスクをかぶる試合が大幅に増えた。

「銀さんと森がいる中で……」

「同じポジションに銀さん(炭谷銀仁朗選手)と森がいる中で、自分も守備だけではなく、打席で何か違うことをしないとダメだなと思いましたね。昨年までは振りに行くべきカウントで、バットが出ていなかったので……。打者にとって有利なカウントでは、強く、思い切り振るようにしています。打席の中で、そういう意識を持っています」

 その積極的な姿勢が、数字に顕著に表れている。8月7日現在、出場試合数は35試合ながら、3割2分8厘、3本塁打という成績を残している。

「その意識は開幕当初から、今まで、変わらずできていると思います。勝てている今はできるけれど、かといって、うまくいかなくなったときにバッティングが小さくなるのはいけないと思うので、今と同じように、しっかりと振るように心掛けたいですね。ボールが先行しても甘いボールが来たら振るという意識は忘れずにいたいです」

 ただし、積極的な打撃は大前提ではあるが、「場面によっては社会人野球で学んだ“慎重さ”も見せていきたい」と、状況を見ることの大切さも付け加えた。

主役に囲まれての「気配り」も。

 10年ぶりの優勝を目指すライオンズにとって、残り50試合を切ったこれからのゲームが、まさに正念場となる。

「キャッチャーとして、試合の途中から出場することも当然、多くなります。大事な場面での交代や、逆に、点差が開いた場面での交代もあると思います。どちらにしても、ピッチャーとコミュニケーションを取ることがいちばん大事だと思っています。そして、ベンチ入りをしているいち選手として、投手がマウンドからベンチに帰ってきたときに、必ず何かしら言葉をかけようと心掛けています」

 ときにはノックアウトされた投手にも、遠慮せずに自分からズカズカと歩み寄る。

「打たれたのはどんなボールだったのか、もし自分が違うと思ったら『こういうボールでもよかったんじゃないか』と意見をします。そうやって話を聞いていかないと、そのピッチャーがどんなことを感じているのかわからないし、自分がいざマスクをかぶったときに配球できないからです」

 こうした一見、小さなことに見えるが、チームにとっては大切な積み重ねが、途中出場でのプレーに生きてくると話す。

 連敗中は沈んだベンチのムードを盛り上げ、勝ったときには全身で喜びを表す。サヨナラ勝利を収めた試合では、貢献した選手に浴びせられる水を、岡田も一緒に浴びてはしゃぐ。

「周りの選手からイジられるのは大丈夫。そういうキャラやし、それでチームの雰囲気がよくなるならそれでいいんです。そういう性格は、そういえば高校時代から変わっていないですね」

 主役級のスラッガーに囲まれた「気配りの人」にスポットライトが当たる日も訪れるはずだ。

文=市川忍

photograph by Kyodo News


関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索