オリ福田周平のメンタルは新人離れ。「10がゴールとしたら、まだ2か3」

オリ福田周平のメンタルは新人離れ。「10がゴールとしたら、まだ2か3」

 7月に行われた第89回都市対抗野球は大阪ガスの初優勝で幕を閉じたが、1年前の大会で36年ぶりの日本一とMVP(橋戸賞)をつかみ、人生を変えたのが、当時NTT東日本に所属していたオリックスのルーキー、福田周平だった。

「初めて日本一になれたあの瞬間は、それまでに味わったことのない最高の気分でした。それまで僕は、準優勝は経験したことがあったけど、日本一になったことがなかったので。都市対抗という大舞台でしっかりと自分のパフォーマンスを発揮できたから、夢だったプロ野球への道も開かれたんだと思います」と福田は振り返る。

都市対抗の首位打者でつかんだ自信。

 その大会で、福田は5割5分という驚異的な打率で首位打者にも輝いた。

「あの都市対抗の東京ドームで、技術的にも1つ上がれたものがありました。それはボールの見逃し方。以前は、打ちにいきながらというところがあったんですが、あの時はしっかり軸足に体重を乗せてステイバックした状態で、ボールを見極められていました。とにかくよくボールが見えていたんです」

 その感覚を今も継続して持ち続けている。バットを短く持ち、打席のホームベース寄りに立って際どいボールを見極め、プロの世界でも3割を超える出塁率を残し先発に定着しつつある。

 福田は、「NTT東日本というチームが、人間的にもチーム的にもすごく好きだったので、そのチームで優勝できたということも嬉しかった」とも語っていたが、チームをそのように変えたのは福田だった。

 昨秋のドラフト会議後に行われた社会人の日本選手権の際、NTT東日本の飯塚智広監督は、寂しさと嬉しさが入り交じった表情でこう話していた。

野球に対してガツガツしている。

「福田の加入のおかげで、チームがガラッと変わりました。彼は本当にストイックな一匹狼で……。甘えがないというか、妥協をしないというか。それは勝負に対しても、人に対しても。野球に対してガツガツしていて、うちにはいないタイプでした。うちは仲良し軍団だったから、最初は『何こいつ?』という感じで、ちょっと浮いちゃっていた(苦笑)。でもそれが次第に融合していきました。

 彼は練習がとにかくストイックで、しっかり目的と目標を持ってやるので、それは本当にすごいと思うし、周りがそれにつられるように、意図を持って練習するようになった。みんなが自主的にやるもんだから、『あれ? もうやる場所がないじゃねーか』となるぐらいです」

 飯塚監督が初めてスカウトした選手の1人が、明治大学の遊撃手として活躍していた福田だったという。

「一番最初に目を付けた選手でした。ファイターのショートが欲しいなあと思っていた時に目を引いて。キラキラしてたしね」

打てない時にスカウトの目が……。

 ただ当初、福田は闘志や感情をコントロールすることがうまくはなかった。しかしNTT東日本のメンタルトレーナーである若山裕晃氏にメンタルコントロールの術を学んでから、攻守ともに安定した結果がついてくるようになった。そして、プロに行くためには何が何でも結果を残さなければと照準を定めた昨年の都市対抗野球で、見事に結果を出した。

 若山氏は明治大OBということもあり、福田は大学時代にも講習を受けていたが、その頃はさほどメンタルコントロールの重要性を感じていなかったと言う。その必要性を痛感したのは社会人1年目だった。

「全然打てなかったんです。バックネット裏のスカウトの目ばかりめっちゃ気にしてしまって……。『オレ、よえーな』と思いました。そこでやっと気づいて、若山さんのところに行くようになりました」

ルーティンを確立してリラックス。

 まず取り組んだのは、ルーティンを確立することだった。

「人間は感情があるからいい面もありますけど、野球においては、機械のように動いた方が結果が出る。だからルーティンが大事なんです」と福田は言う。

 ベンチの中でヘルメットをかぶり、手袋をつけた瞬間に、「ここからはバッティングに集中する」というスイッチを入れる。

 ネクストバッターズサークルでは、自分が打席に立っているとイメージしながら、投手のリリースポイントに集中しタイミングをはかる。そして自分の体の気になる部分をストレッチして、打席に入る、というのが福田の一連の流れだ。

「そういう一連のことができていたら、『あ、オレ、今リラックスできてるな、落ち着いてるな』という確認にもなります。もちろん試合前には投手の映像を見たりして、相手がどういう球を投げるのかをイメージし、それに対して、例えばこのコースはこう打とうとか、自分ができるプランをしっかり立てます。

 あとは打席でそれを迷わず実行する、という流れです。その計画の中には、『ヒットを打つ』という項目はありません。そこはもう自分では操作できないですから」

重要視する出塁率も3割3分前後。

 メンタルへの理解を深めている福田だが、「100%できているかというと全然できていない。まだまだ発展途上」だと言う。

 オリックス入りした今年、キャンプは一軍で過ごしたが、オープン戦ではなかなか安打が出ず、開幕一軍入りを逃した。

「あの頃は、打ちたい打ちたいと結果を欲しがりすぎていました。ルーティンが全然できていなかった。計画を立てたとしても、舞い上がって、計画に対する迷いが出てしまい、だからスイングも迷っていました」

 それでも、自らの状態に気づいて修正し、プロの環境にも慣れていくにつれて徐々にチャンスをものにし、一軍に定着。二塁手での先発出場の機会が増え、打率は2割6分2厘(8月7日時点)、福田が最もこだわる出塁率も3割3分前後を維持している。

首位打者も獲れる時が来るはず。

 心技体の中で、「一番は“心”」と言い切る福田だが、だからと言って“技”や“体”を疎かにしているわけではない。特に“体”の向上は重要課題と捉えている。

 質のいい食や睡眠にこだわってコンディショニングに細心の注意をはらい、体幹を鍛えるトレーニングを欠かさない。

「選手として10がゴールだとしたら、僕はまだ2か3あたりです」

 将来的に目指す出塁率は4割。首位打者も「獲れる時がくる」と言う。26歳を迎えたルーキーの、野心と可能性は果てしない。

文=米虫紀子

photograph by Kyodo News


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