大谷翔平は1年目でどこまでいくか。イチロー、松井、城島の記録超えは?

大谷翔平は1年目でどこまでいくか。イチロー、松井、城島の記録超えは?

 8月9日現在、「打者・大谷」は62試合に出場して223打席に立ち、198打数54安打、12本塁打32打点、31得点5盗塁、打率.273、出塁率.351、長打率.535と非凡な才能を発揮している。

 「投手・大谷」も9試合に登板して4勝1敗、防御率3.10と非凡だが、現在はまだ右肘の怪我からの復帰途上にあるため、ペナントレースが白熱化する8月のメジャーリーグでは、地元ロサンゼルス以外で話題になることはほとんどない。

「打者・大谷」は、投手として出場していた期間とそのための休養日があるため、フル出場している他の新人野手より出場した試合数が少なく、規定打席にも達していない。

 だが、新人資格を持つ選手の中での54安打はア・リーグ9位(メジャー全体では19位タイ。以下同様)、12本塁打は同4位(6位タイ)、32打点は同7位(12位)、31得点は同9位(17位)、5盗塁は4位(7位)と立派な数字を残している。

 打席数が少ないので、足し算で計算する成績は上位3位までに顔を出すのが難しい。では、割り算で計算する成績はどうか。

 175打席以上の新人選手を対象にすると、大谷の打率.273はア・リーグ4位(7位)、出塁率.352は同2位(6位)、そして何と、長打率.535は同最高(2位)である。ちなみに出塁率と長打率を単純に足した攻撃力の指標OPS.887もリーグ最高(2位)だ。

「大谷は違いを起こせる選手なんだ」

 メジャーリーグは、これをどう捉えているのか。

 メジャー通算521本塁打の米殿堂入り選手で現解説者のフランク・トーマスは、自身が出演した番組の中で、大谷が反対方向へ本塁打を打ったシーンを見て最大級の賛辞を送っている。

「大谷はオフェンスにおける“Difference Maker=違いを起こせる選手”なんだ。ホームランが多発する今のメジャーリーグでも、左方向にこれだけの飛距離の打球を飛ばせる選手はそういない。まるで(通算630本塁打で殿堂入りの)ケン・グリフィー・Jrみたいじゃないか。

 エンゼルスが彼をマウンドに立たせたいと思っているのは知ってるが、僕は彼がもう投げなくたっていいと思っている。なぜかって? 彼はただ単に盗塁しているのではなく、一塁から三塁、二塁から本塁へと一気に帰って来られるスピードを持っているからだ。

 そして、彼の肩が良いのは時速100マイルの速球を投げられることで実証済みだ。つまり彼は外野手として成功する能力を持っているし、3番を打つには最適な能力も持っている。僕は彼を毎日見たいと思っている」

新人の誰よりも「語りたい」存在。

 元スーパースターから「毎日見たい」と思われるスラッガー。それがショーヘイ・オオタニであり、彼は自分の力でその立ち位置を確立したのだ。

 誤解を恐れずに書くと、メジャーリーグは現在のエンゼルスのことはまったく眼中にない。今の彼らが注目しているのはペナントレースの主人公であり、それはエンゼルスの同地区のライバルであるアストロズやマリナーズ、そして、アスレチックスである。

 そして、その3球団でさえ、田中将大投手のいるヤンキースとレッドソックスの「宿敵対決」に飲み込まれる。各地区で優勝争いをしているフィリーズやブレーブス、ダルビッシュ有投手が右肘の炎症からの復帰を目指すカブスやブルワーズ、前田健太のいるドジャースや平野佳寿のいるダイヤモンドバックスらの健闘に、エンゼルスの存在感はほとんど消えかかっている。

 にもかかわらず大谷は、現在メジャー最多の20本塁打を放っているパドレスのクリスティアン・ビヤヌエバ三塁手や、田中の同僚グレイバー・トーレス二塁手、メジャー最多の53打点を挙げているマーリンズのブライアン・アンダーソン外野手、新人最高の打率.317や大谷を凌ぐOPS.999を記録しているナショナルズのワァン・ソト外野手らの有力な新人選手よりも多く語られている。……少なくとも全米中継の野球番組では。

日本人打者への偏見は完全に消えた。

 大事なのは、そこに「日本人」という括りがないことだ。

 ショーヘイ・オオタニは最初、単なるHype=前評判に過ぎなかった。ファンやメディアだけではなく、選手や解説者たちも「Two Way Player≒投打二刀流」という看板に興味津々で、同時に半信半疑だった。

 その理由の大部分は「投手として成功している日本人は過去にも多いが、打者として成功している日本人は少ない」からだ。

 そんな「日本人メジャーリーガー」に対する偏見は今、完全に覆ったと言っていい。

 それは「メジャーリーグから見たショーヘイ・オオタニ」であり、「日本人メジャーリーガー大谷翔平」としてみると、それとはかなり違った意味での存在感が溢れてくる。

日本人の1年目最多本塁打まであと6本。

 大谷はすでに日本人メジャー1年目=新人の本塁打記録で、イチロー(現マリナーズ会長付き特別補佐役)の8本塁打、新庄剛志(当時メッツ)や福留孝介(現阪神)、そして青木宣親(現東京ヤクルト)の10本塁打を上回る日本人歴代4位の12本塁打を記録している。

 日本人メジャーリーガー新人最多は、城島健司(当時マリナーズ)が2006年に記録した18本塁打だ。2位は松井秀喜(当時ヤンキース)が2003年に記録した16本塁打で、3位は2005年に井口資仁(当時ホワイトソックス)が記録した15本塁打だ。

 日本人メジャーリーガーの1シーズン記録では、松井秀喜が2年目の2004年に記録した31本塁打が最多で、2位が井口と城島の18本塁打である。

 今季の大谷が城島の日本人メジャーリーガー新人最多記録に迫り、1シーズンの記録でも上位につける可能性は高い。

 ただ大谷は本塁打数と長打率、そしてOPSで歴代の日本人メジャーリーガーを凌駕していると言っても過言ではないが、それは規定打席に到達しない中での特殊な数字だ。

規定打席には達していないものの。

 たとえば日本人メジャーリーガー新人最高の長打率は、イチローが2001年に記録した.457で、2位は城島が2006年に記録した.451、3位は井口が2005年に記録した.438なので、大谷がごぼう抜きして一気に日本人の新人歴代最高を記録する可能性が高まっている。

 ただし、前述の通り大谷は規定打席に達しそうにないので、それをどう評価するか。

 それは日本人メジャーリーガーの1シーズンの長打率も同じだ。

 歴代最高は松井秀喜が2004年に記録した.522で、これもやはり大谷が破る可能性があるものの現状はあくまで規定打席に達していない数字。

 それならば、大谷のように規定打席に到達しなかった選手での歴代最高は、青木宣親が昨2017年に記録した.594になってしまうので、これも評価が分かれる。

大谷の残す数字が、歴代日本人を甦らせる。

 日本人メジャーリーガー新人最高のOPSは、イチローの.838で、2位は松井秀喜の.788、3位は井口の.780となる。

 日本人メジャーリーガーのシーズン最高のOPSは、松井秀喜の.912だ。2位はイチローの.869で3位は福留の.809だから、規定打席をまったく度外視すればOPSでも大谷が記録を更新する可能性が高い。

 きっと本人はまったく気にしていないだろうが、「打者・大谷」が残す数字を追えば、歴代の日本人メジャーリーガーの数字が掘り起こされ、当時の彼らの闘いぶりが明らかになり、そして、最終的には彼らへのリスペクトが高まることになる。

 そういう意味では、「日本人メジャーリーガー大谷翔平」は、世代をつなぐ存在なのかも知れない。

文=ナガオ勝司

photograph by AFLO


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