冬季アスリートは夏どう過ごしてる?実は多忙なオフで、筋トレも過酷。

冬季アスリートは夏どう過ごしてる?実は多忙なオフで、筋トレも過酷。

 現役時代はスキーのアルペン男子代表として、冬季オリンピックに4大会連続で出場した皆川賢太郎氏。2014年、36歳のとき20年近い現役生活に終止符を打った。翌2015年10月には全日本スキー連盟(SAJ)理事に就任し、マーケティング担当として改革を進めた。
 その後、常務理事に昇格し、2017年6月には強化部門トップにあたる競技本部長に就任している。スキー産業の復活と競技強化の底上げに奮闘している皆川氏がスキー業界の現状や未来、着手した改革や冬季(雪上)スポーツの魅力などを語る新連載がスタートする。
 第1回は雪上スポーツのトップ選手たちの夏場の強化や過ごし方について自身の経験をもとについて語った。

年間約200日を雪の上で過ごす。

 冬季スポーツは文字通り、「冬」に行われるスポーツです。では、真逆となる「夏」に選手や連盟はどのような活動を行っているのか、そんな疑問を持っている方も少なくないと思います。

 アルペン、ジャンプ、スノーボード、クロスカントリーと毎年ワールドツアーが行われていますが、ツアーそのものは冬にしか行われません。しかし、選手たちは年間約200日間、1年の半分以上を雪の上で過ごしているのです。

 北半球と南半球では季節が全く逆となりますが、北半球の夏である6〜8月は、南半球ではちょうど冬。夏の時期は南半球にトレーニングの場所を求めて旅立ちます。主な渡航先としてはニュージーランドが多いですね。今年アルペンチームは8月上旬に出発し、氷河へと向かいました。

 私の現役時代を参考に、アルペンスキー選手の1年の主なスケジュールを紹介します。

 ワールドツアーは毎シーズン、10月から3月下旬にかけて開催されています。4月からオフに入り、5月には氷河のある海外遠征に出かけていました。

 6月中旬に帰国した後は、7月いっぱい日本国内で陸上でのフィジカルトレーニングやフィジカルテストを実施。7月終わりから南半球に飛び、9月中旬頃まで雪上でトレーニングを行いました。

 その後、一度帰国し、再びフィジカルテストを行ってから欧州で行われるワールドツアーに突入という日々を過ごしていました。こう考えると、意外にも長期間。雪の上に立っているものなんだと感じるのではないでしょうか。

フィジカルトレを1日5〜6時間。

 なので、陸上でのフィジカルトレーニングも大事ですが、やはりスキー選手にとって“滑る”ことが何よりも重要とされています。

 スキー選手はどれくらいのフィジカルを持っているのかはあまり知られていませんが、他の競技の選手たちと比較しても劣らない、むしろポテンシャルが高いと私は思っています。それはなぜなのか――。雪上練習と同時に他の競技と同じくらいフィジカルトレーニングを行うからです。

 例えば、プロサッカー選手はシーズン中に1日1時間半〜2時間程度練習すると思いますが、スキー選手の練習時間はその3倍くらいになります。もちろん、サッカー選手は試合数が多いことも考慮しなければなりませんが……。

 大体、シーズン前は1日5〜6時間、フィジカルトレーニングに励むことが常識化されています。雪がある場所での練習も、雪上練習の後にフィジカルトレーニングがついてくるんです。鬼のような練習量でしたね(笑)。ただ、ツアーがはじまってしまうと、1日1時間半程度、私は1日に5〜10本程度しか滑りませんでした。

持久力と瞬発系のバランスを。

 フィジカルトレーニングではかなり負荷をかけます。時期にもよりますが、オフ明けは筋力トレーニングと並行して持久力をつけるメニューも。その後、ツアーのスタートを見越して、動ける体にしなければならないので、トレーニングをスピードと瞬発系中心のものに変えていきます。

 ただ、シーズンは長いので、それに耐えうる持久力が必要なため、そこを鍛えるトレーニングも継続する。両方鍛えていかなければならないのですが、本来、ウェイトトレーニングを行った後に有酸素系のトレーニングを行うとほとんど意味がなくなってしまうので、そのさじ加減は非常に難しいものでした。 

 これはアルペンの一例ですが、スノーボード、ジャンプ、クロスカントリーと競技が異なれば内容も変わります。たとえばスノーボードはアルペン競技ほどの体力を必要としないものが多く、さらに専門的なトレーニングが多いものです。

冬季スポーツの「夏」は忙しい。

 スノーボードの場合、スキーと決定的に異なるのは、雪上で新しい技にトライしようとすると体が壊れてしまう可能性があるため、雪上に上がるまでにテクニカルなトレーニングをいかに積めるか、“技”としての完成度を高められるかどうかということです。ウォータージャンプやマットなど、安全なところで練習し、自分の技を確立してから雪上に上がらなければなりません。

 競技以外の部分でのウィンタースポーツの「夏」という面では、われわれスキー連盟にとっては実は多忙な時期とも言えます。ツアーや大会が行われる冬の方が忙しいと思われがちですが、春〜秋の仕込みの時期の方が業務は多く、シーズンに入ればすでに商品が販売終了している状態。あとは選手たちが活躍するニュースを待つだけというわけです。

 ですから、雪がない時期に私たちがどれだけ選手たちのサポート体制を整え、資金を集められるか。その結果が冬の彼らの成績につながっていくといっても過言ではありません。

 冬の競技は他の競技に比べ、通年化が難しいスポーツで、それを実現できるかが将来的な課題でもあります。ご存知の通り、日本では冬以外、雪が降りません。雪が降らない季節にもスキーができるインドア施設がないので、海外に行かなければ選手たちが雪上に立つことはできないという問題があります。

 いずれお話をすることになると思いますが、1年を通じて楽しめる室内スキー場「スキー・ドーム」の建設や同様のフィールドを作ることは、競技者のためだけに限らず、スキー産業復活のためにも必要不可欠なものだと考えています。

(構成・石井宏美)

文=皆川賢太郎

photograph by 2018 HEIDI Co., Ltd.


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