企業名なし日野のラグビー&地域愛。初めて尽くしのトップリーグ挑戦。

企業名なし日野のラグビー&地域愛。初めて尽くしのトップリーグ挑戦。

 68年目の初陣だ。8月31日に開幕する日本ラグビー最高峰のトップリーグに、東京・日野市を拠点とする日野レッドドルフィンズが初参戦する。

 1950年創部。長らく社会人2、3部相当で活動してきたが、近年強化が進み、昨シーズンついにNTTドコモとの入替戦に3点差(20−17)で勝利。トップリーグ初昇格を決めた。

 日野にまつわる“初めて”はこれだけではない。これまで母体の「日野自動車」をチーム名に冠してきたが、今年5月に大英断を発表した。

 より地域に愛されるチームを目指すため、チーム名から企業名を外し「日野自動車」から「日野」になったのだ。企業名を使用しないチームの参加は、トップリーグ発足16年目で初めてだ。

日野市になくてはならない存在に。

 1990年代前半まで日野でプレーし、現在はチームマネジメントを担当する安保優さんは、企業名が外れたことに驚きつつ、新時代の到来を歓迎している。

「チームOBとしては『まさかそんなことが起きるとは』という気持ちでした。でも(企業名を外したと)宣言してくれたことで、これからは周囲を巻き込みながら成長していくんだ、というビジョンが伝わりました。こちらも地域の方も動きやすくなったと思います」

 昇格決定まもない、今年2月のことだ。そんな日野の地域密着を推し進めるべく、大胆に先陣を切った男がいた。今年から日野の主将を務めている村田毅。NECから移籍して2年目のフランカー。29歳のプロ選手だ。

「トップリーグ昇格が決まった時点で、地域を巻き込んでやっていきたいなと思っていました。それで今年2月、日野市の青年会議所に電話をしました。そこで『チームを日野市になくてはならない存在にしたい』といった想いを伝えました」

バーで村田主将らと触れ合える!

 ワインバー『H.P.STYLE Kitchen』の高田代表は、一般社団法人日野青年会議所のメンバーだ。飲食店経営者のコミュニティなどにも参加している高田代表は、村田のアプローチを歓迎した。

「『スポーツ選手の中に、そういう志のある人がいるんだ』と驚きました。地域のことを考えてくれていた。それから実際に動きました」

 村田の大胆な行動がひとつのキッカケとなり、チームと地域飲食店の距離が縮まった。

 8月23日には、チームと地元飲食店のコラボ第1弾となる街企画「ひのレッドバル」を開催。6枚綴り食券チケットを使い、日野駅周辺の17店舗から好きな店を選んで楽しむスタイルだった。

 各店舗の店員は、「初陣」のバックプリントが目立つ応援Tシャツを着るなどして盛り上げ、村田主将ら選手約20人は数組に分かれ、参加店舗を訪問。自己紹介や乾杯をするなどし、ファンらと交流を深めた。

ただシビアな声があるのも事実。

 企画参加店舗のひとつ、日野駅前のバーに、村田主将らとの談笑を楽しんでいる男女2人組がいた。

 ともに日野市在住の会社員で、ラグビー観戦は日野のトップリーグ開幕戦が人生初になるという。8月31日、町田市立野津田公園陸上競技場(東京)で行われる宗像サニックス戦だ。

「日野にスポーツチームがあるなんて、素晴らしいじゃないですか」

 だから応援するのだと男性の方は好意的に答えたが、女性の方はシビアだった。

 電車内で見かけたラグビー選手の大きさに驚いた経験から、ラグビーの試合に興味を抱いていたという女性。これからも日野を応援しますか? との質問に、「それは分かりません」と答えた。

「まだ『あの大きい人たちがぶつかったら、どうなるんだろう?』っていう興味だけで。これからのことは分からないです」

“初めて”の力を結集させて。

 それでも人口約19万人の日野市と少しずつ、共に歩みつつある。

 日野のトップリーグ開幕戦は金曜夜。日野市の飲食店関係者は店を空けることができないだろう。前出のワインバー経営の高田代表は言う。

「僕らはグラウンドには行けないと思います。でも僕らがひとりでもサポーターを増やして、いつか町田のグラウンドを赤一色で染めたい。そう話しているんです」

 開幕戦当日は、働きながら町田のグラウンドへ想いを馳せることになる。そこには、初めてラグビーの試合を見る人、初めてトップリーグの舞台に立つ社員選手、チームOB――。いろんな“初めて”が結集している。

「僕らはチャレンジャー。思いきり戦って、勝って皆さんと一緒に喜びたいです」(村田主将)

 強敵がひしめいている。3連覇を目指す王者サントリー。スター軍団・パナソニック。トップリーグ初制覇に燃えるヤマハ発動機。新星・姫野和樹擁するトヨタ自動車。世界的スター、ダン・カーターが加入した神戸製鋼――。

「最近、ドキドキしてるんですよ」

 村田主将はどこか嬉しそうに開幕戦へ向けた心境を語った。

 日本ラグビー最高峰の戦いは、まもなく火蓋が切られる。

文=多羅正崇

photograph by Masataka Tara


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