神戸製鋼はカーターだけじゃない。司令塔パーカーが魅せる黄金の左足。

神戸製鋼はカーターだけじゃない。司令塔パーカーが魅せる黄金の左足。

 愛知でリーグ史上初の観客3万人超えを記録するなど、例年以上の盛り上がりを見せる日本ラグビー最高峰のトップリーグ。8月31日、神戸では、神戸製鋼コベルコスティーラーズに新加入した“黄金の左足”がお目見えした。

 ニュージーランド代表“オールブラックス”のレジェンド司令塔、ダン・カーターのことではない。W杯4大会に出場した世界的スターはこの日、神戸製鋼サイドで「WATER」のビブスをつけていた。

 ピッチで背番号10を背負っていたのは、ヘイデン・パーカー。

 スーパーラグビー参戦3年目の日本チーム・サンウルブズで司令塔を務め、超人的なゴールキック成功率を披露した27歳だ。8月31日、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で行われたNTTコミュニケーションズ戦で、パーカーはキック成功率100%。6本あったプレースキックをすべて決め、34−27の勝利に貢献した。

「今日はプレースキックだけではなく、相手と競るためのコンテストキックも上手くいきました」(パーカー)

 神戸製鋼の新たな総監督であるウェイン・スミスは試合後、開幕戦勝利に貢献したパーカーについて「本当に良いゲームメイクをしてくれた」と評した。

カーターはいつでもリスペクトの対象。

 自信を持って背番号10を争えるだけの実力を持っているが、カーターに話が及ぶと、パーカーは少年時代の憧れが甦ってしまうようだった。

「彼は間違いなく世界一のプレイヤーです。経験値が高く、まだトップレベルでプレーしている。彼からできる限りのことを学びたいです」

 ニュージーランド出身のパーカーにとって、オールブラックスで112キャップを重ねたダン・カーターは英雄に違いない。

 しかし今年サンウルブズを応援したファンにとっては、パーカーも立派な英雄のひとりだ。

「成功率96%」という異常なキック。

 パーカーは南半球最高峰の国際リーグ・スーパーラグビーの2018年シーズンで、サンウルブズに新加入。13試合に出場し、プレースキック成功率96%(50回中48回成功)という超人的な成功率を披露。そのなかで38回連続成功というスーパーラグビーレコードまで打ち立ててしまった。

 2015年W杯で日本代表だった五郎丸歩が、当時のエディー・ジョーンズHCから「成功率85%」を厳命されていたことを思えば、「成功率96%」がいかに現実離れしているかが分かる。

 サンウルブズは今年、チーム史上最多の1シーズン3勝を挙げた。その全3試合のすべてに10番で先発したパーカーは、勝利した3試合の計131得点のうち、実に74得点を記録。

 その中には、日本代表のジェイミー・ジョセフHCが「パーカーのスキルはワールドクラス」と評した第13節レッズ戦の36得点(1T、5G、7PG)、劇的な逆転勝利をもたらした第14節ストーマーズ戦での“サヨナラドロップゴール”も含まれる。

「正直なところ、なぜそうなったのか自分でも分かりません(笑)」

 成功率96%を記録したシーズンを笑顔で振り返ったが、もちろん偶然ではない。2015年に1シーズン在籍したパナソニックでは、トップリーグの順位決定トーナメントで24本のキックをすべて成功させ、トーナメントMVPに選出されているのだ。

彼ほどの選手でもNZでは控えに。

 ただこれだけの選手でも、ラグビー王国NZでは控えに回ることが多かった。

 身長175cm、体重82kgの小柄な司令塔。スーパーラグビーのハイランダーズ(ニュージーランド)には4季在籍したが、出場は30試合。途中出場が多かった。

 NZ代表のダミアン・マッケンジーのように、後半から途中出場して強烈なインパクトを与えることは難しい。先発出場し、アベレージで貢献できる場があれば――。

 だから、13試合中10試合で先発10番を背負うことのできたサンウルブズは、パーカーにとって願ってもない舞台だった。周囲の期待に、成功率96%という最上級の結果で応えた。

「日本のラグビーファンは世界一です」

 サンウルブズがこの世になければ、その左足がこれほど注目されることはなかったかもしれない。サンウルブズに感謝している。

「(サンウルブズに参加して)本当に良かったと思っています。スーパーラグビーは世界中で放送しますし、良いプレーをすれば世界中の人が見てくれます。本当に素晴らしい期間でした」

 本人は来季もサンウルブズへの参加を希望している。しかし目の前の目標は、神戸製鋼ファンを熱狂させることだ。

「日本のラグビーファンは世界一です。とてもマナーが良いと思っています。しかし神戸製鋼では、そんなファンを興奮させて、大声援が起きるようなシーズンを送りたいです」

 神戸製鋼にはダン・カーターがいる。そして、ヘイデン・パーカーがいる。

文=多羅正崇

photograph by Getty Images


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