大谷翔平の復帰登板と“自制心”。イチロー、野茂、黒田からの教訓。

大谷翔平の復帰登板と“自制心”。イチロー、野茂、黒田からの教訓。

 右肘の靭帯に新たな損傷が見つかったのは復帰登板から3日後の9月5日のことだった。医師団からはトミー・ジョン手術(靭帯再建手術)の勧告を初めて受けた。手術を受けるのか、回避するのか。最終判断を下すの自分自身だと、大谷翔平は言った。

 手術を受ければ、投手としての復帰には術後12〜18カ月を要する。'19年シーズンの登板は絶望的となり、復帰は'20年開幕からになる。一方で野手としては6〜8カ月での復帰が可能になる。

 DH専任である大谷の場合、スローイング・プログラムのリハビリが省かれるため、5カ月未満での復帰が可能となる。仮にシーズン終了後に手術を受けたとしても、来季開幕には間に合う。この事実が、打者としてシーズン終了までプレーを続ける判断に至った一つの要因であろう。24歳は最終的にどんな判断を下すのであろうか。

手術を受けない可能性も。

 大方の予想はシーズン終了後にトミー・ジョン手術を受けると言うもの。将来を考えれば早い方がいいと言う意見だ。だが、手術を受けない可能性もまだ捨てきれない。

 三たび、PRP(多血小板血しょう)注射を受け、組織の再生をはかる。筆者自身、手術を受ける決断に至る可能性の方が高いとは思うものの、大谷が“やり直し”を希望するのではないか。

 彼が発した言葉にその端緒はある。

「そんなに力を入れる必要はなかったんですけど、やっぱり人が入っていて、上の舞台で投げるというところで勝手に出力があがってしまうところがあったのかなと思う」

 88日ぶりの復帰登板を果たした2日のアストロズ戦後の彼の言葉だ。

“全力投球は『自制』し、肘への負担を考慮しながら投げるつもりだった”

 こう言っているように聞こえた。

最強打線を前に全力投球。

 それが、である。登板前に言い聞かせていた誓いをマウンドでは忘れてしまった。

 1回の最速は99.3マイル(約160キロ)。直球の平均速度は96.8マイル(約156キロ)。故障前同様の投球スタイルは自身の想定を超えていたことになる。だがそれも、戦う男の本能を考えれば、無理のないことと感じる。

 スプリンガーから始まり、アルテューベ、ブレグマン、コレアと続く破壊力満点のアストロズ打線は、今やメジャー最強の称号を持つ。その相手に“自制心”を持って投げることはなかなか難しい。

 ましてや、大谷はまだ24歳。日本ハム時代からケガなどで自制を求められる状況下で全力プレーをつい見せ、栗山英樹監督から怒られていた事実は記憶に新しい。

「やっぱり人が入って」

 当日はチケット完売の4万1506人の大観衆でもあった。

アストロズ戦の復帰は不適切だった?

 米メディアは、マイナーでの調整登板を経ずに“ぶっつけ本番”とした過程をケガの要因と散々に批判していたが、ESPNの全米中継が用意され、地区首位を走るアストロズの日曜日の本拠地試合は超満員の観衆が集まることが容易に想像できた。

 全力プレーを自制することが苦手の大谷にとって、アストロズ戦での復帰は相応しくなかった。翌日からは地区最下位レンジャーズとの試合が控えていたのだから、尚更のこと。エンゼルス首脳が批判されるべきはこの点ではないだろうか。

 だが、既にあとの祭り。逆の言い方をすれば、失敗は成功へのターニングポイントとなる。ひとつひとつのことにしっかりと向き合い、対処していくことは最も重要なことである。

 エンゼルスと大谷が立てた復帰計画が道半ばで終わった。その事実を考えれば、もう一度、PRP療法を選択し、やり直す可能性は残る。その上で大谷にはマウンドで自制心が求められる。 

「ケガも選手の実力のうち」

 長い野球記者生活で選手からはたくさんのことを教わってきた。

「太く、長く、輝いてこそ、一流選手なんです」と、言ったのは先駆者・野茂英雄氏だった。

「凄い才能を持っている選手が凄いのではないんです。結果を出す選手、結果を出し続ける選手が凄いんです」これはヤンキース時代の黒田博樹氏の言葉だった。

 どちらの言葉にも共通することは『ケガをしないこと』、『試合に貢献し続けること』となる。イチローは「ケガもその選手の実力のうち」と、常に言う。

 大谷翔平がどのような選択をするにしろ、今後、彼が、最も大事にしなければいけない、教訓であろう。

文=笹田幸嗣

photograph by Getty Images


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