鷹の新1番打者・牧原大成は規格外!“奇跡の育成世代”の遅れてきた男。

鷹の新1番打者・牧原大成は規格外!“奇跡の育成世代”の遅れてきた男。

 初球打ちの打率5割2分5厘。

 ホークスの新1番打者、牧原大成が超積極打法でヒットを重ねている。

 その男は突如一軍に現れた。7月8日に今季初昇格を果たすと、その日のオリックス戦(京セラ)に「8番セカンド」で即スタメン出場。するといきなり2安打の活躍し先制のホームも踏んだのだった。

 打てる二塁手はチームにとって待望だった。

 その頃のホークスは3位と4位を行ったり来たりのジリ貧状態。主力打者の不振が響き、脇を固める選手たちにも一定の打力が求められた。しかし、二塁手は、牧原出現までに6人もの選手が代わる代わる出場するも、こう言っては失礼だが五十歩百歩で、即マルチ安打の牧原の存在は際立つものだった。

千賀、甲斐という同期の存在。

 7月16日のライオンズ戦(ヤフオクドーム)。2安打して迎えた第5打席に、右翼スタンドへ飛び込む第1号本塁打を放ってみせた。

 プロ8年目にして嬉しいプロ初本塁打。

「最初は何が起きたのか分からなかった」と途中まで全力疾走でベースを回っていた。

 ホームランを含む猛打賞で計3打点。試合後はお立ち台に呼ばれた。本拠地のヒーローインタビューもまた、初めてだった。

 この試合、牧原はいつも以上に気合を入れて臨んでいたという。

「先発が千賀(滉大)でキャッチャーが(甲斐)拓也。育成で一緒に入った同期で、3人一緒にスタメンで出るのは初めてだったので」

育成ドラフト出身がチームの主力へ。

 彼らは'10年育成ドラフトで順番に名前を呼ばれた。育成4位が千賀、同5位が牧原、同6位が甲斐だった。

 育成指名のしかも下位の3人がチームの主力を担うまでに成長したのは驚くばかりだが、牧原は他の2人に比べて後れを取っていたのをとても気にしていた。支配下登録を勝ちとったのは牧原もプロ2年目6月と決して遅くはなかったが、千賀の方が2カ月ほど早かった。

 あの頃、千賀が登録された直後の牧原は「おめでとうと声をかけたけど、なんか気まずいというか、会話がなくなりました」とモヤモヤした心境を漏らしていたのを記憶している。

ホークスの潮目が変わった日。

 ようやく同じステージまで這い上がった。ただ、これまでもチャンスがなかったわけではない。

 '16年には41試合に出場し、うち24試合でスタメン出場した。しかし、打率2割4分4厘と平凡な数字しか残せずに定位置を掴みきれなかったのだ。

「あの頃は結果を欲しがり過ぎて自分の打撃が出来ていなかった。今はいい意味で開き直っています。一軍に上がってきた最初の頃も、もしダメならばまた二軍でやり直せばいいという気持ちで臨むようにしていました」

 その後も順調にヒットを重ね、8月10日、上位を争うファイターズ戦のカード初戦で今シーズン初めて1番に座った。この日はノーヒットに終わったが、チームは対戦7連敗中だったファイターズを相手に5対0で快勝した。

 これを機に、ホークスは潮目が変わった。

 ならば流れを崩す必要はなく、牧原は1番に定着。その期待にバットで応えていった。特に固め打ちをする。8月19〜22日は3試合で計10安打を放ったかと思えば、同28〜9月5日には6試合連続マルチ安打を記録した。

固定観念にとらわれない一番打者。

 冒頭で記したように、とにかく早いカウントから勝負を仕掛ける。

 9月10日時点で207打席、193打数67安打、打率3割4分7厘を残している。うち、初球打ちが40打数21安打、1ボール0ストライクが19打数11安打、2ボール0ストライクが2打数2安打、3ボール0ストライクが打数なしの1四球。

 つまり0ストライクに限定すれば、61打数34安打となり、打率5割5分7厘と驚異的な数字が弾き出されるのだ。

 1番打者は投手に球数を投げさせるのも役割とされるが、牧原は固定観念にとらわれることなくバットを出していく。

「攻める姿勢はもともと二軍でやっていたこと。自分は振っていく中で感覚を養うタイプなので、それを変えずにやるのが今は大切なのかなと思っています」

 その是非はともかく、一振りで仕留める技術の高さにはアッパレの一言しかない。

「じつはダンスに興味があった」

 牧原の際立つ打撃力のルーツは少年時代にあった。

 本人いわく「小学生の頃は遊びの野球で、厳しい環境に身を置いたのは中学生になってから」。その頃、父が打撃マシンを自宅の庭に設置した。しかも2台だ。1つは直球、もう1つは変化球を練習するためだった。

「毎日バットを振りました。父が仕事で遅くに帰ってきた時でも叩き起こされて、夜11時くらいから打ったこともありました」

 直球マシンは打席までの距離がどんどん縮まっていき、「体感で170キロはあった」というスピードボールを打ち返していたという。

「プロに入ってからもたまに実家に帰った時は打つんですけど、速過ぎて当たらないです(笑)」

 熊本・城北高に進学後ももちろん野球部でバリバリ活躍したが、甲子園出場はならず。牧原は何が何でもプロへという球児ではなく、別の夢も密かに抱いていた。

「じつはダンスに興味があったんです。浜崎あゆみが好きで、ミュージックビデオに出てくるバックダンサーがとてもカッコよくて憧れました。別にダンスなんてやったことないし、ライブに足を運んだわけでもない。ただ、漠然と、高校卒業したらソッチ系の専門学校に行こうかなと考えたこともありました」

 プロのスカウトが学校を訪れたが、同級生のエースを見に来たのだと思っていたくらいだった。

まだ自分は「ラッキーボーイ」。

 昨年、右肩痛を発症してシーズンのほとんどを棒に振った際には随分と気持ちが落ち込んだ。だからこそ、いい意味で開き直れた今がある。

「まだ自分はレギュラーだと思っていない。ラッキーボーイって言われます。それってまだラッキーで打てていると思われているってことですから」

 ただ、ホークスのコーチは「首位打者、盗塁王を獲れる才能を持っています」とじつは高く評価している。工藤公康監督も「今は1、2番が好調で得点力が上がっている。チャンスも多いから5、6、7番あたりがこれからのポイントになる」と話している。

 ホークスは奇跡の逆転優勝に向けて、ライオンズとの直接対決をまだ7試合も残している。15日からメットライフドームに乗り込んでまずは3連戦だ。勝ち越しは最低ライン。とにかく先に主導権を握りたい。

 1回表、1番牧原が初球を打って出塁すれば、球場の雰囲気はガラリと変わる。この大事な終盤戦、牧原が間違いなくキーマンとなる。

文=田尻耕太郎

photograph by Kyodo News


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