左打ち偏重は日本野球の“病”か。藤原恭大、根尾昂のU18も同傾向。

左打ち偏重は日本野球の“病”か。藤原恭大、根尾昂のU18も同傾向。

 U18アジア選手権1次ラウンド第3戦の韓国戦、スーパーラウンドの台湾戦で日本は以下のようなスターティングメンバーで試合に臨んだ。

<韓国戦> 
(遊)*小園海斗
(二)奈良間大己
(三)*中川卓也
(中)*藤原恭大
(右)*根尾昂
(一)*野尻幸輝
(左)*蛭間拓哉
(捕)小泉航平
(指)日置航
(投)吉田輝星

<台湾戦>
(中)*藤原
(遊)*小園
(右)*根尾
(一)*野尻
(三)*中川
(左)*蛭間
(二)奈良間
(捕)小泉
(指)日置
(投)柿木蓮

 名前横に付けた「*」は左打ちの印だ。

 スタメン以外ではキャッチャーの根来龍真も左打ちで、野尻を含む全野手11人のうち7人が左打ちだった。これを見ればライバルの韓国、台湾が先発に左腕を持ってくるのは容易に予想がつく。

 案の定、韓国はキム・ギフン、台湾はワン・イェンチェンという左腕を先発に起用し、日本チームは低めの変化球とコーナーを突くストレートを交えた緩急を打ちあぐみ、ともに1−3というロースコアで敗退した。

 台湾は“台湾の大谷”の異名を取る右腕のリ・チェンシュンが先発すると思ったが左腕のワンだった。日本には左腕をぶつければ大丈夫、最速155キロのエース・リは韓国戦にぶつけて必勝を期す、どうもそんな狙いが伝わってくるのだ。正直、なめられたと思った。

日本野球の“病気”である。

 左打者をスタメンに多く並べる、というのはもはや日本野球の“病気”と言ってもいい。優勝した第1回WBCの決勝、第2回WBCの決勝、準決勝のスタメンも紹介しよう。

<第1回決勝>
(遊)*川崎宗則
(二)△西岡剛(両打ち)
(右)*イチロー
(指)*松中信彦
(左)多村仁
(捕)里崎智也
(一)*小笠原道大
(三)今江敏晃
(中)*青木宣親

<第2回決勝>
(右)*イチロー
(遊)中島裕之
(中)*青木宣親
(捕)城島健司
(一)*小笠原道大
(左)内川聖一
(指)栗原健太
(二)*岩村明憲
(三)片岡易之

<第2回準決勝>
(右)*イチロー
(遊) 中島裕之
(左)*青木宣親
(指)*稲葉篤紀
(一)*小笠原道大
(中)*福留孝介
(捕) 城島健司
(二)*岩村明憲
(三)*川﨑宗則

 スタメンに左打者を多く並べる「日本野球の定型」が第1、2回WBCによってもたらされたことがわかる。第2回大会は決勝こそ4人に押さえているが準決勝のアメリカ戦では7人の左打者をスタメンに並べた。左打者の優位性を信じ、代表メンバーに左打者を多く送り込んでいたことがわかる。

 確かに左偏重打線で連覇はしたが、両大会とも韓国の奉重根(ポン・ジュングン)に何度も苦杯を舐めることになり、緩急を操る左腕にこの陣容では弱いことは証明されていた。

 今回のU18アジア選手権の左打ちが並ぶ野手の選定を見て、WBCの教訓が生かされていないことを知り非常に残念だった。

“変態的打線”の責任は筆者にも?

 ストップウォッチ片手に野球を取材し続けてきた過去16年間。折に触れ打者走者の各塁到達タイムを紹介してきて、左打者が一塁への走塁にある程度有利なことは伝え続けてきた。そういう意味では、スタメンに左打者を6人以上並べる“変態的打線”を生んだ責任の一端は私にもありそうだが、野手で最も大切なのは当然ながら「打つ」ことである。

「打撃7割、走塁・守備3割」――それくらいの構成比で私は野手の全体像を捉えている。

 しかし、今回の野手の選定を見ると「打撃4割、走塁・守備6割」くらいで打撃が軽視されているように思える。

 確かに一塁ベースに速く到達するには左打席に立つほうが有利で、右打者とは0.2〜0.3秒くらいの差がある。そのため左打者を6人以上並べるのが常態化している。たとえば、東都大学秋季リーグ戦の開幕戦では、各大学がスタメンに左打者を6人並べていた。

左偏重打線の弊害はこんなところにも。

 その東都大学リーグは近年、全国大会でなかなか結果を出せていない。

 今年の大学選手権では優勝候補に挙げられていた東洋大が九州産業大の左腕、岩田将貴(2年)に7回3失点に抑えられ、コールド負けを喫しているが、スタメンに並んだ左打者は秋季リーグ開幕戦より1人多い7人。対する九州産業大は4人だった。

 こういう左偏重打線の弊害を憂いながら、U18アジア選手権で日本代表チームはもっと右打者を選べなかったのだろうかと思った。

 何と言っても春夏連覇を果たした大阪桐蔭は、投打二刀流の根尾がショートを守るときは右5、左4が多く、根尾が投手でも右4、左5でバランスが取れていたのだ。

 強豪校としての素材のよさばかりでなく、左右のバランスのよさにももっと目を向けるべきである。

招集されなかった右打者の逸材は?

 U18アジア選手権に選出されなかった右打者で私が注目しているのは夏の甲子園大会の鳴門、横浜戦で1本ずつホームランを記録した野村佑希(花咲徳栄・投手)と智弁和歌山戦で2本のホームランを放った北村恵吾(近江・三塁手)の2人だ。

 野村が今甲子園で放った2本のホームランは鳴門・西野知輝、横浜・及川雅貴とも左腕相手で、北村は3回戦の常葉大菊川戦でやはり左腕の榛村大吾からヒット、二塁打2、三塁打1を放っている。

 この2人がスタメンに入れば左6、右3の左偏重打線は右5、左4に改められていた可能性があり、韓国、台湾戦のような貧打はなかったと思う。

機動力への過信はいけない。

 私はこれからも打者走者の各塁到達タイムを計測し続けるが、左右のバランスの理想は右5、左4に置いている。

 俊足の目安にしている「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」をクリアするのは最多4人になると思うが、それくらい走れば十分である。そもそも、甲子園大会3回戦の日大三は右打者の日置航、大塚晃平が俊足基準タイムをクリアしている。右打者でも走る選手は走るのである。

 機動力への過信、それが導く左打者偏重打線はそろそろ改める時期にきている。

 大切なのは何ごとにもバランスである。

文=小関順二

photograph by Kyodo News


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