甲子園からU18への移行の難しさ。不出場組を呼ぶ手もあったのでは?

甲子園からU18への移行の難しさ。不出場組を呼ぶ手もあったのでは?

 U18球児たちの長い長い夏が終わった。

 心から「お疲れさまでした」と、その健闘を称えたい。

 7月の地方予選から甲子園大会、そして「U18」と続いたおよそ2カ月の長丁場。心身にストレスをかけ続けながら、プレーを継続させた彼らの健闘にはまったく頭が下がる。

 U18はテレビでの観戦だったので、試合中の選手たちの表情の変化やちょっとしたしぐさが、むしろよく見えた。

 韓国戦のダグアウト。甲子園のときのような、弾ける笑顔がない。

 べつに笑ってなくてもよいのだが、これから“大一番”を迎えようとする者なら、もうちょっと表情に張りのようなものがあってもよいのでは……。むしろ、ひと試合終えた後のようなムードを、試合前のダグアウトから感じてしまった。

 ちょっと待てよ……。ひと試合終えた後の……?

 ああ、そうか。彼らは、確かに大一番を終えているんだ。「甲子園」という大一番を終えて、それから宮崎へやってきた選手たちがほとんどなのだ。

最大の目標を戦い終えた後の気持ちは?

 今年の「U18」は明徳義塾・市川悠太投手以外の17選手が、この夏の甲子園組で編成されている。

 それも、ほとんどがベスト8以上に勝ち進んだ選手たち。疲れてもいるだろうし、それ以上に、大一番を全うした達成感が、今のこの時期は“やれやれ感”に変質していてもおかしくない。それが「人間」というものだろう。

 一度パンパンにふくらませた思いが、大舞台を終えていったんスッとしぼむ。そこからもう一度パンパンに戻すのは、やってみるとそうは簡単なことじゃない。そもそも、選手たちの最大の目標は「夏の甲子園」なのであって、この「U18」で活躍することを心の支えにして懸命に頑張ってきた選手というのは、ほんとのところ1人もいないのではないか。

甲子園に「出られなかった選手」の気合。

 メンバーの選び方を、大会が終わった今ごろになってああだこうだ言うのも気がひけるが、発表された18人のメンバーを見た瞬間、えっ! と思ったものだ。

 近未来のプロ野球を担っていかねばならない逸材たちが、きら星の如く並んでいる。誰も文句をつけられない豪華メンバーなのだが、ムリさせるなあ……と思わずつぶやいてしまった。

 ドラフト候補という評価を得ながら夏の予選で敗退した選手の中に、その後もこの「U18」を目指して懸命に練習している選手がいる……そんな話がちらほら耳に入ってもいた。

 ならば今こそ、再び気合いをパンパンに充填させた「地方大会敗退組」の出番! 勝手にそう考えていたから、甲子園出場選手が多いメンバーに驚いたのだ。

 たとえば右打ちなら、早稲田実業・野村大樹(内野手)は、一発もある怖いバッターだ。ポジションは限定されても、右のスラッガーはチーム構成の「必須条件」であろう。いないと、相手が怖がらない。

 元気注入なら、明秀日立・増田陸(内野手)のエネルギッシュなプレーも突き抜けた存在だった。

 甲子園のスラッガーたちのスイングに疲れが見えているなら、日大鶴ヶ丘・勝又温史の渾身のヘッドスピードが一枚入っていても……。

 そんなことも、つい考えてしまう。

韓国に敗れた翌日の過ごし方。

 5日の「1次ラウンド」。韓国戦で、1−3と惜敗したジャパン。

 翌日、フッと考えた。果たして、彼らは今日をどう過ごしているのだろう。

 練習などしないで、1日休んでくれたらいい。窓の向こうは一面の海。そんな恵まれた環境の中で寝起きしていると聞く。

 ならば、1日ボンヤリ海を眺めて過ごすもよい。それも面倒なら、終日ベッドにあって惰眠をむさぼるもよし。

 この先「スーパーラウンド」で台湾、中国と戦い、そこで勝ち上がれば、おそらく再び韓国と覇権を争うことになるはずだった彼らに必要なのは休養であろう。

甲子園とはまったく違う姿だった選手たち。

 韓国に敗れてしまった、さあたいへんだ。なんとかしろ、なんとかしなくっちゃ……。

 そういう場面で、何かしなくては、行動を起こさなくては、と考えるのが、勤勉なる日本人の国民性のようだが、果たしてそれは本当に有効だろうか。

 何かすることがむしろマイナスになったりすることもあるんじゃないのか。場合によっては、何もしないのも「手」なのではないか。

 痛んでいるときは、休むことが前に進むことだ。

 そして、元気な者たちの“隠し持った力”を信じることも、手なのではないか。

 吉田投手の目力の弱さ、小園選手のありえない4失策、蛭間選手のすっぽ抜けのバックホーム……。「甲子園」と何も変わらないで見えたのは、根尾昂だけだった。

 その後の、台湾、中国との2試合。あまりに想定外のそんな場面を目の当たりにしながら、ツラツラとそのようなことを考えていた。

文=安倍昌彦

photograph by Kyodo News


関連ニュースをもっと見る

関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索