森保ジャパン最高の第一歩を刻んだ。システム、人選、正しい競争原理。

森保ジャパン最高の第一歩を刻んだ。システム、人選、正しい競争原理。

 上々のスタートと言っていい。

 9月11日に行なわれたテストマッチで、日本代表はコスタリカを3−0で退けた。森保一監督は初陣を白星で飾ったわけだが、結果はもちろんふたつの理由でこの試合は評価できる。

 ひとつはシステムである。

 森保監督が好むシステムと言えば、すぐに連想されるのは3-4-2-1だろう。サンフレッチェ広島で3度のJ1リーグ優勝を成し遂げたオーガナイズは、兼任するU-21日本代表でも軸足となっている。

 しかしコスタリカ戦の日本代表は、4-2-3-1のシステムで戦った。トップ下の南野拓実が1トップの小林悠と横並びにもなるが、2トップと言える立ち位置を取るのは主にディフェンスの局面である。いずれにせよ、最終ラインは4バックだった。

 森保監督が思い描くのは、ロシアW杯の日本代表だ。

 ロシアW杯でベスト8に迫った西野朗前監督のチームは、攻撃ではカウンターとポゼッションを使い分け、守備では前線からのプレスとブロックを敷いた対応を用いた。4-2-3-1のシステムをベースとしながら、フレキシビリティのあるサッカーを展開した。そのなかで、一人ひとりの選手が持ち味を発揮した。

「広島でやっていた形にこだわっていくというのはあるが、選手には色々な形に対応してもらいたい。柔軟性、臨機応変さを持ってやってほしいので、今日の形にした。それは、ロシアW杯にコーチとして参加させてもらって、西野監督から多くのものを学ばせていただいたから。それをこの先へつなげていくためにも、私自身トライをしたということです」

W杯で方向性が途切れなかったことの価値。

 ワールドカップ終了後では史上初となる日本人監督の就任にせよ、U-21日本代表監督との兼任にせよ、好意的な視点ばかりではない。一部には懐疑的な見方もある。

 しかし、ロシアW杯のコーチだった森保監督が日本代表の指揮権を託されたことで、これまでW杯を区切りに途切れ途切れだった日本代表の方向性がつながりを持った。使い慣れた3-4-2-1ではなく4-2-3-1を選ぶことで、森保監督自身が柔軟性や臨機応変さというキーワードを実践した。前監督のサッカーを土台としてレベルアップをはかっていくと、50歳の指揮官はコスタリカ戦で宣言したのである。

 そこに、我々は大きな価値を見出すべきなのだ。

W杯レギュラーはゼロでも、違和感はなし。

 ふたつ目はキャスティングである。

 森保監督が今回招集したメンバーには、ロシアW杯のレギュラーがひとりもいない。登録メンバーも東口順昭、槙野智章、遠藤航、植田直通の4人だけである。

 ここまでドラスティックにメンバーを入れ替えると、背番号に対する違和感が生じてもおかしくない。ロシアW杯までのレギュラーの不在が、観る者の脳裏を過っても不思議ではないものだ。

 それがどうだろう。

 香川真司のアイコンである背番号10を着けた中島翔哉は、彼らしい思い切りの良さと創造性を存分に発揮した。原口元気が背負ってきた背番号8のユニフォームを着た南野拓実は、デュエルで一歩も引かない逞しさを示し、ゴールという結果を残した。

 長谷部誠から背番号17と主将の腕章を引き継いだ青山敏弘は、サンフレッチェ広島と変わらないテンポのいいパスワークで攻撃を組み立て、ワンタッチのスルーパスでDFラインの背後を狙っていった。本田圭佑を象徴する背番号4を背負った佐々木翔は、16分に相手のオウンゴールを誘うヘディングシュートを浴びせた。

 右サイドバックで先発した室屋成は背番号3を、センターバックでフル出場した三浦弦太は背番号19を与えられた。ロシアW杯では昌子源と酒井宏樹に託された番号である。彼らもまた、国際舞台に臆することなくプレーした。

中心選手の幻影におびえることはなく。

 今回のチームでは国際Aマッチ出場数が多い槙野、小林悠、遠藤らも、初代表の堂安律も、自分は何ができるのかをピッチに記した。今夏にシント=トロイデンへ移籍した遠藤は、日本代表のボランチとしてはこれまででもっとも躍動感に溢れていた。

 85分から途中出場した伊東純也は、短い時間のなかで得意のドリブル突破をはかり、90+3分にダメ押しのゴールを突き刺した。さほど見せ場の訪れなかった東口にしても、ほぼ危なげなくクリーンシートを記録している。

 コスタリカ戦に出場した選手たちのプレーが、ロシアW杯のメンバーより優れていた、などと言うつもりはない。ただ、幻影におびえる選手はひとりもいなかった。「チームの戦い方のなかで積極的にプレーし、それぞれの特徴を発揮してくれたと思う」という森保監督の言葉は、そのまま受け止めていいものだ。

正しい競争原理も垣間見えた。

 この日のコスタリカは、強敵ではなかった。彼らもまた、2022年のカタールW杯へ向けたスタートを切ったばかりである。4日前に韓国でアウェイゲームを戦っていたロナルド・ゴンサレス監督のチームは、チリ戦が中止となった日本代表に比べて全体的に疲労を抱えていたと言える。

 それでも、日本代表が希望に満ちた戦いをしたのは間違いない。ロシアW杯のサッカーを継続しながら進化を求めていくチームには、国内、海外を問わずに所属クラブでアピールをしている選手が集められた。正しい競争原理が持ち込まれていることも、このチームへの期待を膨らませる。

 コスタリカ戦に出場した選手も、出場できなかった選手も、次もまた招集されるためにアピールを続けるだろう。今回は招集を見送られた選手たちも、次回のメンバー入りに意欲をかきたてているだろう。

 森保監督の日本代表は、この上ない第一歩を踏み出した。

文=戸塚啓

photograph by AFLO


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