スピードワゴン・小沢一敬が明かすスポーツ漫画と我が芸人人生。

スピードワゴン・小沢一敬が明かすスポーツ漫画と我が芸人人生。

 芸人界随一の漫画の達人・スピードワゴンの小沢一敬が、これまでの人生で影響を受けてきたスポーツ漫画の名場面、名言から人生訓や芸人魂をひもといた『夜が小沢をそそのかす スポーツ漫画と芸人の囁き』を上梓した。
 数千冊の蔵書を誇る小沢の“漫画愛”が色濃くにじむこの本の序文を、今回はNumber Webにて特別公開!
 もし生きるのに辛くなったら……とりあえず、この本を読んでみろ!

 小学生の頃、小沢一敬少年は漫画雑誌の“編集長”だった。

 自分で漫画雑誌を買うお金はないから、友達に借りていた。「週刊少年ジャンプ」だったら『リングにかけろ』とか、「週刊少年チャンピオン」だったら『ドカベン』だとか。お気に入りの作品を選んで、1ページずつに薄い藁半紙を乗せて、絵と吹き出しのセリフを丁寧になぞっていた。

 絵を描くことには、多少なりとも自信はあった。何しろ私、小学1、2年の頃に、愛知県知多市の「知多ライフ大賞・水彩画の部」で、金賞を受賞したくらいですから。

 描き写した藁半紙を1枚1枚丁寧に重ねて、1冊にまとめたら「週刊少年オザ」の出来上がり。これを大事に保管して、毎日読んでいた。

「甘い言葉」の源流は『コブラ』!?

 初めて自分でコミックを買ったのは、『キン肉マン』の第6巻だった。それまで読んだこともなかったし、なぜ惹かれたのかはわからないんだけど、本屋にたまたま『キン肉マン』の6巻と8巻だけが置いてあって、俺が6巻、弟が8巻を買って帰った。

 今でも本屋に行くと漫画を“ジャケ買い”することが多いけど、そのルーツは『キン肉マン』の6巻だったのかもしれない。

 当時から、小沢は漫画の登場人物の「言葉」を気にする子どもだった気がする。特に影響を受けたのは、『COBRA(コブラ)』という作品だった。主人公は左腕にサイコガンを持ち、常に葉巻をくわえる一匹狼の宇宙海賊コブラ。彼が宇宙空間で活躍するSFストーリーなんだけど、名言の宝庫のような作品で、コブラのセリフがとにかくお洒落だったんだ。

 例えば、夜中に女の子から電話がかかってくる場面。普通の作品のダンディーな主人公ならば、「何か事件か?」と聞くところだけど、コブラの場合はこう言いながら電話に出る。

「どうした 背中のファスナーでもとまらないのか」

デヴィ夫人からの衝撃の言葉!

 めちゃくちゃかっこいいと思った。俺もコブラみたいに粋な言葉を発したいと思った。『COBRA(コブラ)』を読んで以来、どんなときも洒落とユーモアを忘れない生き方をしようと決めた。

 コブラのセリフは、いわば昔のアメリカ映画のテイストに近い。今、読み返したら、多くの人がダサいと思うかもしれない。でも、小沢にとってはみんながダサいって思うことのほうが、逆にカッコイイじゃんって感じるんだよね。

 言葉の意味や成り立ち、漢字の使い方にすごくこだわるようになったのも、漫画の影響かもしれない。

 例えば、「道路」と「ロード」。

 日本とイギリスって10000kmくらい離れているのに、なんで日本語と英語で同じ意味の言葉の語音が似ているんだろうって、不思議に感じてしまう。

 例えば、アメリカ人が誰かに嫉妬したとき、「shit(シット)!」って吐き捨てて悔しがることがある。これも、不思議だなって。

 でも、このことをデヴィ夫人に言ったら、冷静にこう返されちゃった。

「あなた、あっちで嫉妬は『シット』じゃなくて『ジェラシー』よ」

 さすがに小沢も「嫉妬=ジェラシー」は知っていたんだけどね……。

人生、どうしたってつらい時がある……。

 芸人の仕事をしていると、よく「がんばってね」と言ってもらうことがある。「がんばる」って、漢字では「頑なに張る」と書く。だから俺は、「がんばる」って、汗をかいて努力することじゃないと思ってる。

 自分のスタイルや生き方が1本の糸だとしたら、それを頑なに張り続けよう。「がんばって」と言われたら、どんなことがあっても自分らしくいようって思うんだ。

 そうやって自分らしく生きようと思っていても、どうしても苦手なことや、我慢しなきゃいけないことに直面するときもある。子どもの頃、小沢は注射が苦手だった。学校でインフルエンザや日本脳炎なんかの予防接種があるたびに、憂鬱な気分になっていた。

漫画のおかげでつらさが減った!

 でも、そんなときにはこう考えるようにしたんだ。

「ザ・魔雲天と闘ったとき、テリーマンはもっと痛かっただろうな」

 注射の一瞬のチクッなんかより、『キン肉マン』に登場する超人たちは、よっぽど痛い思いをしながら闘ってきたんだ。それを乗り越えたからこそ、スーパーヒーローになれたんだ。だから俺も、注射の痛みを乗り越えるんだ。

 本気でこう思って、小沢少年は注射を克服した。これが、漫画に救われた原体験かもしれない。

 大人になってからも、漫画のおかげで「つらい」と思うことは、ずいぶん減ったような気がする。なぜなら考え方の応用が利くようになったから。

承太郎なら、桜木花道なら……。

 窮地に陥ったとき、漫画に出会っていなかったら自分の能力・武器だけで立ち向かわなきゃいけなかった。でも、たくさんの漫画のキャラクターと知り合いになっていた小沢は、こう考えられるようになった。

「空条承太郎(ジョジョの奇妙な冒険)なら、どう考えるだろう」

「桜木花道(SLAM DUNK)なら、どう行動するだろう」

「それでもダメなら、キン肉スグル(キン肉マン)でいこう」

「最後に頼るのは、フランケン(根こそぎフランケン)だ」

 こうやって、いろんな困難を克服してきたように思う。これまで読んできた漫画の数だけ、自分の中に解決方法があったんだ。

 この本には、小沢が夜な夜な読みふけり、小沢をそそのかしてきた漫画たちの名言、そこから小沢は何を感じて人生に役立ててきたかを詰め込んでみました。読者のみなさんの誰かが、注射の痛みを我慢するときに、この本のことをちょっとだけ思い出してくれたら、嬉しいな――。

文=小沢一敬

photograph by Sports Graphic Number


関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索