山崎紘菜のラグビー愛が深すぎる。女優業と1日4試合観戦の超多忙生活。

山崎紘菜のラグビー愛が深すぎる。女優業と1日4試合観戦の超多忙生活。

 5年前に交換した彼女の名刺の裏には、こう書いてある。

『全国大学選手権を戦う大学生世代は、ラグビーワールドカップが日本で開催される2019年に日本代表の中心を占めることになる世代、「2019年世代(Generation 2019)」です。ラグビー選手、女優と立場は違いますが、私も未来に向けて夢を追いかける世代のひとりとして「Generation 2019」の選手たちが活躍する本大会の魅力を伝えさせていただきます。』

 2013年当時、まだ19歳の大学1年生であり駆け出しの女優だった山崎紘菜は、ラグビー大学選手権のイメージモデルに起用された。そんな彼女がどういう人物かを紹介する記事をNumber Webに載せた。

 あれから5年。

 彼女は大学在学中4年間にわたって大学選手権のイメージモデルを務め、今年からトップリーグのアンバサダーに抜擢された。

 女優としての活躍ぶりもめざましい。この5年間で数々のCM、ドラマ、映画に出演し、今年9月に興行収入20億円を突破した話題作『検察側の罪人』では、主演の木村拓哉が演じる検事・最上毅の娘・奈々子を好演している。「おかげさまで、5年前より忙しく仕事を楽しむことができています」と微笑む。

当初は「好きを仕事にする」話かなと。

「常に自分の気持ちに正直にやっていきたいんです」

 5年前、彼女はこう言った。きっかけは仕事だったかもしれないが、ラグビーに魅せられた、ラグビーが好きで好きでたまらないキュートなティーンエイジャーだった。

 いまもラグビーを好きでいてくれているんだな、だから、トップリーグのアンバサダーという仕事も受けたんだろうな、と勝手に推察した。

 ただし、「好きを仕事にする」というフレーズは巷にイヤというほど氾濫しているが、本当にその道のプロとして食っていくには、相応の覚悟と不断の努力、運と縁も必要になる。

 現在24歳、いま最も勢いのある若手女優に、「好きを仕事にする」ことについて聞けばいいだろう。取材前はそう、軽く考えていた……。

「ラグビー好き」と言える自信がなかった。

――5年前にもらった山崎さんの名刺に書いてあることが、そのまま現実になっています。

山崎 あの時から2019年を見据えて、日本のラグビー界全体が動いていましたね。いよいよ1年前という大事な時期に、トップリーグのアンバサダーに任命され、また、ワールドカップ開催都市である東京都の特別サポーターも任され、身が引き締まる思いです。

 こうした大役を立て続けに任せていただけたのも、まわりの皆様のお力添えがあってのことですし、任せていただいた以上、ちゃんと恩返ししたい、期待に応えたいと思います。

――5年前、山崎さんは「自分がお世話になった方々に恩返しがしたい。そのかたちが、日本アカデミー賞受賞です」と話していました。まわりの人たちに「何かを返したい」という思いは変わりませんね。

山崎 変わってはいないですけど、昔は本当に何もできなかった、というのが正直な感想です。大学選手権(イメージモデル)1年目は、ラグビー自体知らなかったし、まわりの人たちのサポートがなければ到底続けられませんでしたし、サポートがあってこそ前に進めました。

 正直に言うと、胸を張って「ラグビー好きです!」と言える自信がなかった。好きなんだけど、みんなほど好きなのかな? という気持ちがあって。協会や現役選手、ラグビー経験者や代表OBの方々とお会いすると、自らの経験に基づいた豊富な知識をお持ちで、わたしなんかがイメージモデルやっていいの? という迷いはずっとありました。

 でもいまは、心から「ラグビー大好き!」と言えるようになったし、自分の女優業に対しても自信もついてきたし。あと、好きって言える、それを裏付けるくらいの試合をちゃんと観ている自信もあります。そこが5年前と大きく変わったところかなと思います。

サンウルブズ、日本代表は全試合観る。

――どれくらい試合を観てるんですか?

山崎 けっこう観てますよ。今年のサンウルブズは全試合観ました。日本代表も必ず観ています。できる限りライブで観たいですけど、無理な場合はJ SPORTSさんのオンデマンドを活用して、移動中の新幹線の中とかで(笑)。

 でも大学選手権のイメージモデル時代は、自分の勉強不足のせいで上手く発言できなかった時とかに、すごく厳しい意見もいただいて。

本当に好きじゃなければ、それは透ける。

――厳しい意見とは?

山崎 「なんでこんな子がやってるんだ?」という……。ラグビーをよく知っている方からすると、本当にラグビーが好きじゃないと、その中途半端な気持ちがどこかで透けちゃうと思うんです。「ああ、コイツは仕事としてやってるんだな、別にラグビー好きじゃないんだな」って。

 このままじゃいけない! と思って、それ以降は大学選手権のイメージモデルとしてふさわしくあるために、手に入れられる大学ラグビー情報は片っ端からチェックしました。大学ラグビーの難しさって、年度ごとにどんどん新しい選手が入ってくることじゃないですか。チームもガラッと変わって。試合数もすごく多いじゃないですか、春季大会から。

――しゅ、春季大会!?

山崎 だって、春から押さえないと、まず対抗戦とリーグ戦の開幕に間に合わないんです。もちろん、夏の菅平情報もチェックして。いざシーズンが始まって、まわりから「このチーム、春はすごかったよね」って言われた時に、知らなかったら何も答えられないじゃないですか。

「何のクイズですか、これ(笑)」

――僕、インタビューの場で春の大学ラグビー事情について話すの、今日が初めてです。

山崎 例えば、大学1年の選手が活躍したら、目の付け所のいい人は「あの子は高校時代からよかったよね」とか言うじゃないですか。じゃあわたしも、新しく入った1年の選手の顔と名前、出身校も覚えなきゃって。

――しゅ、出身校!? じゃあ、山崎さんと同世代であり、帝京大でキャプテンを務め、サンウルブズとサントリーでもキャプテンを務める流大の出身高校は?

山崎 (即答で)荒尾。合ってます?

――合ってます。熊本の。

山崎 でも、流選手は福岡出身ですよね。

――そこまでリサーチ済みですか。じゃあ、流の1年先輩で、帝京ではキャプテン、サントリーでチームメイトの中村亮土は?

山崎 えーっと、伏見、いや、伏見は松田力也選手だ。中村選手は……鹿児島出身で鹿児島実業! 何のクイズですか、これ(笑)。

映画の撮影現場でラグマガを読む生活。

――イメージモデル3年目の2015年に、前回のワールドカップがありました。その時は何を?

山崎 試合は長野のホテルで観ました。あの頃、『orange』という映画のロケ地が長野で。南アフリカ戦の翌日は撮休だったので夜中まで起きて、ひとり泣きながら部屋で観て、誰とも感動を共有できませんでした(笑)。あっ、思い出しました。ワールドカップ前にNHKの番組収録があるから、一度東京に戻るよって話があったんです。その予習として、映画の撮影現場でラグビーマガジン読んでました。

――ラグマガ!

山崎 ちょうど撮影セットが高校の教室で、机に座って教科書みたいに読んでました。そしたら共演者たちにすごい言われて。「現場で何読んでるの? 馬鹿じゃないの?」って(笑)。ラグマガは今も読んでますよ。飛行機の中で、次の表紙誰だろうなあ? って考えたり。

――そこまでラグビーに染まっちゃったんですね。

山崎 一昨年の大学選手権が終わった後、私も大学を卒業して、イメージモデルのお仕事から離れたんですけど、その時、ものすごくさびしかったんです。気がついたら、仕事でもないのにラグビーを追いかけている自分がいて。大学4年間は大学ラグビーにつきっきりでしたけど、トップリーグやサンウルブズ、ジャパンにも視野を広げて、まんべんなくラグビーを観始めました。そして気がついたら、今年の1月2日、大学選手権の準決勝を観に、わたし秩父宮にいましたから(笑)。年明けすぐに“秩父宮参り”するのがルーティーンになっちゃって。

ラグビーの見方は「おじさん系」。

――そんなラグビー漬けの山崎さんは、どんな感じで試合を観るんですか?

山崎 たぶん、おじさん系だと思います。

――例えば?

山崎 「2人目遅いよ!」とか。あと、「あまってるよ!」とか。やだ、すごい恥ずかしい!(笑)

――そこにたどりつきましたか。この5年間、正しくラグビーを積み上げてきたんだなと実感しました。ちなみに、1日に最高で何試合くらい観ます?

山崎 4試合ですね。

――よ、4試合!?

山崎 じゃないと、追いつかないんです。サンウルブズの試合とか、仕事が立て込んで追えない時期があって、予定空いた日に4試合観てましたよ。

――選手やコーチはもちろん、記者や解説者といった、いわゆるラグビーでメシ食ってるプロでも、1日4試合の荒行している人は、そういないと思います。

山崎 えっ、やらなくていいのかなあ? でも、それくらいやらないと、認めてもらえないので。すごくラグビーが好きでこの活動しているんだから、認めてもらえるまでやり続けたいと思っています。初めてお会いする方で、どうせ(ラグビー)知らないんでしょ? って態度で来られると、すごい悔しくて。

――いや、もうほとんどの人が太刀打ちできないレベルに達していると思います。

山崎 ラグビーに関して何の肩書きがない1年を過ごして、ようやく気づきました。わたし、本当にラグビーのこと好きなんだなあって。好きだからまたラグビーのお仕事したいなと思っていた矢先に、今回のトップリーグアンバサダーのお話をいただけて、本当に嬉しかったです。

女優としてのポジションも大きく変わった。

――ラグビーから少し離れますが、19歳の時といまとでは、女優としてのポジションもだいぶ変わったかと思います。女優・山崎紘菜として、この5年間で何が変わりました?

山崎 気持ちが変わりました。いま思えばすごく浅はかですけど、以前は自分のためだけに仕事してたんです。目の前の仕事を上手くやろう、賞をもらって認めてもらおう、とか。もちろん賞をいただけたらうれしいんですけど、ある時、「5年後、10年後にどうなりたいの?」と聞かれて、何も答えられない自分がいたんです。

 その時、自分は何も持っていないんだということに気づきました。目先のことばかり気にして、その動機も自分のため、でしたから。そこから自分と向き合って、ちゃんと考えるようになりました。

 わたしは偶然と偶然が重なり合って、たまたま芸能界に入れただけのただの女の子ですけど、わたしが出演した作品を観てくれた方が、「学校行くのがイヤだったけど、行く気になりました」とか、「元気になりました」って言ってもらえることって、すごいことだなって思うんです。人の気持ちを動かせて、人の気持ちを明るくすることができる仕事って、本当にすごいなって。

 大学選手権のイメージモデルをしている時、ラグビーのことが全然分からなくて、もどかしくて、すごく落ち込んだ時期があったんですけど、ある日、「紘菜さんのポスターを観て、ラグビーを始めました。この仕事をやってくださって、ありがとうございます」って声を掛けられたんです。ああ、思いって誰かに届いているんだな、誰かに届けられるんだなって。

 女優としてまだまだ未熟ですし、簡単な言葉ですけど、人に勇気や元気を与えられる仕事というのは、本当に尊いものだと思うんです。昔は「自分のため」でした。でもいま、自分はどうでもいいです。賞がほしいとも思いません。わたしの作品を観た誰かが、楽しい時間をすごせたら、それでいい。いやなことが一瞬でも和らいだのなら、それだけでいい、と思っています。

デートを申し込むキャプテンはいなかったそう。

 取材時間の残りが15分を切った頃、彼女の方からニヤリと笑みを浮かべながら切り出してきた。

「そういえば、誰も言ってきませんでしたよ。4年間ずっと。わたしOKだって言ったのに」

 5年前の原稿で僕はこう書いた。

『80分間の死闘のあと、ピッチ上で行なわれる山崎さんによる勝利キャプテンインタビュー。質問に答え終えたキャプテンが最後に言い放つ。

「優勝したら、僕とデートしてください!」

 そんな肝の座ったキャプテンがいたら、決勝はかつてない(方向性から)異様な盛り上がりを見せるのではないか、と。』

 やっぱり、無謀なキャプテンはいなかったようだ(いてほしかったけど)。

「わたしにとってラガーマンって……」

 5年前は「好きな男性のタイプは?」と、何のてらいもなく聞けた。目の前にいるのはただの大学1年生の女の子だ、30代前半のおっさんが遠慮する必要なんかない、と開き直ることができた。

 でも、いまは違う。目の前にいるのは、れっきとした女優さん。こっちは四十手前のただのおっさんだ。女優に恋愛のことを聞くなんて野暮すぎるだろ、と思っていたところに、渡りに船だった。

 5年前と同じ質問をぶつけた。

――まだ、彼氏ラガーマンOK?

「全然OKです。だけど、わたしにとってラガーマンって、憧れというか、神聖なものというか、もうリスペクトの対象なんですね。自分が彼女に、なんておこがましすぎます。ラガーマンに対して恐れ多すぎて、そういう気持ちが起きないかもしれません」

 5年前はまだうぶだった可愛い大学生が、24歳「職業・女優」の美しい女性になっていた。

 19歳のラグビー好き女子が、もうラグビーなしの人生なんて考えられない、「今シーズンのトップリーグは全試合観ます!」と宣言する、立派なラグビー馬鹿になっていた。

文=朴鐘泰(Number編集部)

photograph by Asami Enomoto


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