フェンシング協会がビズリーチで副業兼業限定の人材を募集する理由。

フェンシング協会がビズリーチで副業兼業限定の人材を募集する理由。

 若き太田雄貴会長のもと、スポーツ競技団体の新しいカタチを目指してさまざまな積極策を打ち出し続けている日本フェンシング協会が、さらなる一歩を踏み出した。即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」で、戦略プロデューサー4職種を副業・兼業限定で公募することを発表したのだ。

 今回の連載は特別編。公募の狙いや実現に至った経緯などを、株式会社ビズリーチ代表取締役社長・南壮一郎さんとの対談形式でお送りする。

「副業・兼業」が進む中で。

太田 まず最初に、今回の公募プランを簡単に説明します。詳しくはサイト(https://www.bizreach.jp/content/592)をご覧いただきたいのですが、公募期間は10月4日から10月31日まで。日本フェンシング協会の経営戦略アナリスト、PRプロデューサー、マーケティング戦略プロデューサー、強化本部ストラテジストの4職種を募集します。副業・兼業限定で、勤務時間としては月4日ほどとなります。

 ビズリーチの会員を対象とするアンケートでは、回答者の83%が「今後副業・兼業を行ってみたい」と考えています。日本の政府も働き方改革の中で「副業・兼業」を推進していて、企業側の動きとしては、中小企業の85%ほどは兼業を認めていませんが(中小企業庁「平成26年度兼業・副業に係る取組み実態調査事業報告書」による)、大手企業では解禁が相次いでいます。その意味でも、今回の公募はとてもよいタイミングです。

太田 改めまして、今回は本当にお世話になりました。南さんをはじめビズリーチの皆さんが、プランの細部についても丁寧に、しかもありえないくらいのスピード感で取り組んでくださいました。フェンシングはスポーツ界の中では「頑張っている」と言われるようになりましたが、ヨコを見たら、もっとすごい組織、人がいることに気づかされた。感動しつつも、僕たちももっと頑張らなければ、と反省しているところです。

 この話が雑談の中ではじめて出たのは今年の6月ぐらいですよね。

太田 近況報告かたがた現時点での課題をお話ししたら、「だったらこうしたら?」という明確なビジョンがすぐに返ってきて、過去の事例なども教えていただいて。

 そのあと9月初めに新潟でお会いして、そこでプランを磨き上げてから1カ月足らずで発表することができました。

フェンシングだけの文脈ではなく。

太田 南さんとは、もう6年ぐらいのお付き合いでしょうか。仲間のつながりで自然とお会いするようになりましたが、企業の経営者の中では普通の感覚をしっかりお持ちの方で、何よりも自然体で愛に溢れている。本当にいつも勉強させてもらっています。

 私はもともと学生時代からスポーツが大好きで、東北楽天ゴールデンイーグルスでも球団創業メンバーの1人として3年ほど仕事をしていましたし、その後もジュビロ磐田のアドバイザーを務めるなど、今に至るキャリアの中でもスポーツビジネスには意欲的に関わってきました。ですから、アスリートへのリスペクトがあり、太田さんのすごさも大変さもよくわかります。

 今回の公募が形になったのは、太田さんがご自身で、日本フェンシング協会の会長に就任したあとに、何が問題であり何が課題なのかを明確にしていたから。さらにいえば、太田さんはその問題を、フェンシングだけの文脈で語りませんでした。

 もっと広く、「自分たちの課題は、日本のスポーツ界全体の根っこにある問題だ」と捉え、「そこを変えていくことで、日本のスポーツの歴史を変えたい」という強い意欲を私に見せてくださった。その気持ち、姿勢に共感できたのが、このプロジェクトをスピード感を持って実現できた一番の推進力だったと思っています。

協会の中の人材だけでは限界が。

太田 会長に就任した2017年8月から、協会としていくつかの目標を立てて動いてきました。競技力向上は無論なのですが、ほかにも「協会登録者数を6000人程度から5万人に増やす」「2020年の東京五輪を成功させ、メダル獲得のみならず、日本社会にフェンシングを根付かせること」「財政基盤の安定」などを掲げて活動しています。

 特に、収益事業を増やしていくことが大きな課題であり、全日本選手権のエンタメ化も含めてさまざま、いろいろな方の協力を得て実現させてきました。これからも、取り組みたいことはたくさんあります。でも、協会の中の人材だけでは限界があります。

 もともと会長に就任した直後から、フェンシング界だけでなく、外からさまざまな知恵をお借りしてはいました。ヤフー株式会社の小澤隆生さん(常務執行役員、コマースカンパニー長)や、メディアアーティストの落合陽一さんなど、錚々たるメンバーでマーケティング委員会を立ち上げ、さまざまな議論を重ねてきています。

 が、彼らも手弁当で集まってくださっていて、なかなかそれを具体化するところまで手が回らない。実現させるために、経験とスキルを有するプロフェッショナルがいれば……と考えていました。ただ……予算がありません。そういったスキルを持つ人材獲得のノウハウもありません。

スポーツ界の外側にいる人を。

 そうやって課題が可視化されたことで、私も問題意識を共有することができました。そして、「この課題解決は、さほど難しいものではない」と思えたのです。

 カギとなるのは、スポーツという文化の持つ大きな魅力です。それこそ私は学生時代にサッカーをずっとやっていましたが、あの頃は部活動費を自分で払ってまで、夏休みに50メートルダッシュを40本やっていたわけです。何でそんな苦しいことをやっていたのかといえば、それだけの魅力がスポーツにあったから、としかいいようがない。

 その魅力は、スポーツ界内部にいる人よりも、外側にいる人の方が、より感じていたりするものなのです。ならば、大人となり、ビジネスパーソンとなった人たちの中に、今もなおスポーツに関わりたいと考えている人は必ずいるはずです。

 もっといえば、これからの時代の働き方は、仕事はもちろんしっかり取り組みつつも、仕事以外の時間をどう自分に投資していくか、自分自身が変わるために学び続けることが大切になってきます。学びの場は、読書だったり、異業種の人と会うことだったりとさまざまですが、その選択肢の中に、スポーツ団体の業務に関わる、というものがあってもいいし、それこそ報酬がなくとも関わってみたい人は、たくさんいると思うのです。

 やりたい人がいない、お金がない、そういう人たちへのアクセスができない、というのは、すべては認識の違いだけ。ならばそのギャップを、私たちの事業で、インターネットをはじめとしたテクノロジーの力で埋めていけば解決策を提供できるはずだ、と考えました。

「未来の新しい働き方」の実験。

太田 副業兼業での人材募集、というモデルについては、先行事例がありましたよね。

 広島県福山市のケースです。2017年11月、日本で初めて、市の戦略顧問を副業・兼業限定で公募しました。採用枠は当初1名だったのですが、応募人数はなんと395人。それも、投資ファンドのバリューアップ部門の方もいれば、製薬会社、映像関係会社の方など、そうそうたる経歴の方ばかり。

 全員採用したいくらいの状況のなかで最終的には5名の方を採用し、今年3月から月に4回程度、市長の掲げた公約実現のためのプロジェクトのマネジメント業務などについていただいています。この事例があったので、今回の仕組みに応用できると考えました。人がいない、というボトルネックをクリエイティブな形で解決すると同時に、「未来の新しい働き方」の実験もできるのではないか、と。

財政的に苦しい状況があるから。

太田 ビズリーチは、日本サッカー協会の人事部長や、B.LEAGUEの広報・マーケティング部長、ラグビーワールドカップ2019組織委員会の経営人材など、いろいろなスポーツ団体の人材公募も手がけていますよね。

 そうですね。ただ彼らは、フルタイムでしっかり採用できます。いわば財政的に余裕のある団体であって、スポーツ団体としてはむしろ特殊で例外的だと思っています。サッカーや野球、ラグビーなどのメジャースポーツを除けば、日本のスポーツ団体のほとんどは財政的に苦しい状況にある。

 むしろ今回の取り組み──私はこの副業兼業モデルを太田モデル、と呼んでいるのですが──は、将来的には他のスポーツ団体はもちろん、行政やNPO、究極は営利団体にも採用してもらえる可能性があります。

いいものを独占せず共有したい。

太田 僕たちは、他のスポーツ団体さんと競争しているわけではないし、比べるものではないと考えています。もちろん指標として協会登録者数、というものはありますが、僕たちは僕たちの戦い方をしていく、という覚悟を持って、今回の公募に踏み切りました。

 でも、いいものは独占せず、みんなで共有したい、という思いはあるんです。スポーツ界における働き方としての「副業兼業モデル」としては、僕たちがいわばファーストペンギンとして飛び込むことになりました。うまくいけば、どんどんシェアできたらいいですよね。

 実は、公募はゴールではなく、あくまでもスタートです。応募してくださった方々を、どんな基準でどなたを採用するか、そして、採用された方々の「この仕事を通じてどんなことが得られるのだろう、学べるのだろう」という期待にしっかり応えられるようなアウトプットを準備し、プロジェクト全体をマネジメントできるか。そこがうまくいかなければ、太田モデルは失敗例になってしまいます。

 残念ながら、私たちはその部分はお手伝いすることができません。厳しい注文ですが、長い時間軸の中で、きちんと採用された方々へのリターンを作っていってほしい。それこそ3、4年後に「あの太田モデルは新しい風を日本に吹かせたよね」と振り返ることができれば、そのとき初めて成功といえるのではないでしょうか。

業務すべてが東京五輪に直結。

太田 なかなかのプレッシャーですね(笑)。でも、僕はプレッシャー、そんなに嫌じゃないんです。それに、今回募集する職種ではいずれも、刺激的で面白い経験をしていただけるはずです。マーケティング関連であれば、落合さんをはじめ刺激的なメンバーと仕事ができますし、PRプロデューサーは、PR対象である選手との距離も近くなる。

 強化本部ストラテジストに至っては、まさに競技力向上というスポーツの最もコアな部分にタッチすることができる。これはなかなかできません。それに何よりも、すべての業務が東京五輪に直結してきます。オリンピックは観るだけでなく、「参加する」「携わる」方が絶対いい。報酬は日当で15000円ですが、バリューはそれ以上だと思っています。

 オリンピックでメダルを獲ったトップアスリートが現役を引退し、いまは組織のトップとして活躍をされている。太田さんを見ていると「生き残っていく人は、強い人ではなく、変わり続ける人だな」と思うんです。

 まさに太田さんご自身が、いろいろな方とのつながりを求めて貪欲に動き、自分の時間と労力を投資して学び続けてきた。だから、今回の公募も、たまたま副業という形ではありますが、この機会を太田さんのように、自分自身を磨く一つの成長の機会、環境として使っていただけるような方にご応募いただけたら嬉しいですね。

太田 一緒に、日本のフェンシングの未来を作っていきましょう。たくさんの方々のご応募、お待ちしております。

文=Number編集部

photograph by Sports Graphic Number


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