ロナウドを抑えて得点ランク首位。セリエAの“新・殺し屋”ピアテク。

ロナウドを抑えて得点ランク首位。セリエAの“新・殺し屋”ピアテク。

 8節までを終えたセリエAで、得点ランクのトップに立っているのは、社会現象と化しているクリスティアーノ・ロナウドではない。

 歴代得点王の4人、ゴンサロ・イグアイン(2015-16シーズン得点王)でも、エディン・ジェコ(2016-17得点王)でも、マウロ・イカルディ(2014-15&2017-18得点王)でも、チロ・インモービレ(2013-14&2017-18得点王)でもない。

 8戦全勝で他を引き離すユベントスの選手でもない。2位ナポリの選手でも、3位インテルの選手でも、4位ラツィオの選手でもない。

 ラツィオのインモービレはここまで5ゴール(得点ランク3位タイ)、今夏の移籍でユベントスに加入したC・ロナウドとミランに移ったイグアインはそれぞれ4ゴールずつ(5位タイ)、インテルのイカルディは3ゴール(9位タイ)、ローマのジェコは2ゴール(19位タイ)にとどまる。

 誰よりも多い9ゴールをすでにマークし、セリエA得点ランクのトップを走っているのは誰なのか(得点ランク単独2位はナポリのロレンツォ・インシーニェで6ゴール)。

W杯選外だったポーランドの23歳。

 ポーランド人ストライカーだが、日本代表と同居し、グループリーグ敗退に終わったロシアW杯にはエントリーされていない。1995年7月1日生まれの23歳で、セリエAは今季が1年目という文字通りのニューフェイスだ。

 ほんの2カ月前までは無名で、今夏に加入したジェノアでも当初はジャンルカ・ラパドゥーラの控えという見立てだった。

 23歳のそのポーランド人ストライカーは、名前をクシュストフ・ピアテクという。

 セリエAのジェノアは1試合未消化なので、8試合出場4ゴールのC・ロナウドよりも1試合少ない7試合出場で倍以上の9ゴールを決めている。ジェノアがここまでの7試合を4勝3敗とし、暫定11位につける大健闘を牽引しているのがピアテクなのだ。

 ジェノアと言えば、かつてカズ(三浦知良)が所属したイタリアの古豪であり、当時のカズのチームメイトに“爆撃機”と称されたチェコ代表FWトマーシュ・スクラビーがいた。ピアテクもヘディングを得意としているが、ニックネームは“ピストル”だ。ゴール後のパフォーマンスでは、両腕を胸の前で交差させて、両手に握ったピストルを左右に向けて撃つ仕草をする。

シェフチェンコ超えの得点ペース。

 ピアテクが注目を集めるようになったのは、イタリアで迎えた最初の公式戦、2018年8月11日のコッパ・イタリア3回戦からだろう。相手がセリエB(2部)のレッチェだったとはいえ、開始2分で左からのFKにダイビングヘッドで合わせると、9分、18分のゴールであっという間にハットトリックを達成する。

 それだけではない。38分にはイタリアで「ポーケル」と称される1試合4ゴールをやってのけたのだ。

 初参戦のセリエAでも、早々にレジェンドの記録を塗り替える。最初の6試合で8ゴールをマークし、セリエA1年目の選手としては1999-2000シーズンのアンドリー・シェフチェンコ(当時ミラン/最初の出場6試合で7ゴールをマーク)を超えている。そして開幕からの7戦連続ゴールは、すでにセリエA歴代2位の記録となっている。

 歴代1位は、1994-95シーズンに当時フィオレンティーナのガブリエル・バティストゥータが打ち立てた開幕11試合連続ゴールだ。

「バティストゥータの記録に並ぶのは難しいだろう」

 ピアテク自身がそう予想しているのは、今後の対戦相手を勘案しているからでもあるようだ。10月20日のユベントス戦(第9節)から、28日のウディネーゼ戦(第10節)、31日のミラン戦(第1節順延分)、11月3日のインテル戦(第11節)、10日のナポリ戦(第12節)まで、たしかに難敵との戦いが続く。

昨季までは知る人ぞ知るレベル。

 まずは代表ウィーク明けの初戦――CLを含めた今季の公式戦10試合に全勝しており、直近6試合では1失点しか喫していないユベントスとの戦い――が大きな難関となる。ピアテクの話はこう続く。

「チャンスは限られているだろうが、胸を借りてみよう。プレーするすべての試合でゴールを奪いたい」

 昨季までは、ポーランド国内を主戦場とするドメスティックな選手だった。唯一の例外となった2016-17シーズンのEL予選も6試合無得点に終わっている。2017-18シーズンのポーランド1部リーグで36試合21ゴールを記録し、今夏はちょっとした争奪戦が繰り広げられたとはいえ、つい最近まで知る人ぞ知るストライカーにすぎなかった。

国内外の強豪が関心を寄せる。

 それがコッパ・イタリアを含めた8試合ですでに13ゴールを量産している現在は、KP9とも称されるようになった。C・ロナウドのCR7をもじったKP9(Krzysztof Piatek/背番号9番)に関心を寄せるビッグクラブは、メディアで取り沙汰されただけでも国内のユベントス、インテル、ナポリ、ローマから、国外のマンチェスター・ユナイテッド、リバプール、チェルシー、さらにはバルセロナに至るまで片手に余る。

 高騰する市場価格は、すでに4000万ユーロ(約52億円)超とも見積もられる。ジェノアが今夏の獲得に要した移籍金は推定450万〜500万ユーロ(約6億円前後)であり、ほんの数カ月で大きく跳ね上がった計算だ。ちなみにKP9の推定年俸は45万ユーロ(約5850万円)。CR7の3000万ユーロ(約39億円)と比べると、わずか67分の1でしかない。

 移籍金のクラブ記録が2500万ユーロ('09年夏のディエゴ・ミリート。インテルへ移籍)のジェノアにとっては、歴史的な“オークション”も期待できる。ただし、今冬(2019年1月)の放出には慎重にならざるをえない。

 ゼネラルディレクターのジョルジョ・ペリネッティが示唆している通り、KP9の早期売却にはティフォゼリア(熱心なファンのグループ)からの強い反発が予想されるからだ。

レバンドフスキから学んだこと。

 何かと比較されるのは同じポーランド人で、同じストライカーのロベルト・レバンドフスキ(バイエルン)だろう。前所属クラブのクラコビアでピアテクを指導したミハル・プロビエルツは、こう語る。

「私は知っている。ピアテクはレバンドフスキから(間接的に)多くを学んできた。とてもよく似ているのは、ペナルティエリア内での振る舞い方だ」

 現在もクラコビアを率いるプロビエルツは、こう付け加える。

「週末になると私は欧州各国リーグをチェックしているが、ピアテクほどボールをコント
ロールできて、右足も左足も使えて、ヘディングでもタレントを示せるアタッカーはそういない。将来的にはレバンドフスキのレベルにも到達するだろう。世界のトップレベルに、だ」

 2018年9月11日のアイルランド戦(強化試合)でポーランド代表デビューを果たしたピアテク自身は、「レバンドフスキは大好きだけど、より似ているのはハリー・ケインだ」と、普段はトッテナムでプレーするイングランド代表FWで、ロシアW杯得点王の名前を挙げている。

FWとしてすべてが水準以上。

 イタリアでピアテクが奪った13ゴールを分類すると、右足で8ゴール、左足で1ゴール、ヘディングで4ゴールだ。フィジカルの強さやアジリティが水準以上で、敵の守備者を背負ってのポストプレーと最終ラインの裏を狙う飛び出しのどちらもレパートリーにあり、闘争心、犠牲精神、守備意識を持ち合わせている。

 ジェノアのダビデ・バッラルディーニ監督は「ゴールのためだけには生きていない」という表現で賞賛し、「モダンなアタッカーのプロトタイプ」という評価も聞こえてくる。

 少なくとも“力任せ”のストライカーではない。動きやプレーの無駄が少なく映るのは、フィニッシュまでどう持ち込むかを常にイメージできているからではないだろうか。それゆえ、地上戦ではパスを受けてからシュートに至るまでの時間が短い。足下の技術も備えているので精度が伴い、右足でも左足でもシュートはGKや守備者の及ばない軌道を描く。

 空中戦でも守備者との間合いをうまく取っているので、クロスさえ正確ならヘディングやボレーシュートで叩き込める。3-4-1-2を基本システムとしている現在のジェノアは、右足のダルコ・ラゾビッチに左足のドメニコ・クリーシトと優秀なアシストメーカーを擁している。クリーシトはすでに3アシスト、ラゾビッチも2アシスト、さらにはピアテクと2トップを組むクリスティアン・クアメもすでに2アシストを記録する。

4勝中3勝がピアテクの決勝ゴール。

「個人的には驚いていない」

 前所属のクラコビアでピアテクを指導したプロビエルツは、セリエAの得点ランクでトップを走る教え子の活躍をそう受け止めている。

 ピアテク自身には、ゴールの量産そのものを目指していないふしもある。

「ここジェノバにやってくるや、皆に“ボンバー”と呼ばれるようになった」

 そう前置きしてから、次のように続ける。イタリアでは“ボンバー”がゴールを量産するストライカーを意味しているようだが、ポーランドでは違っているのだと。最後に“ピストル”を発砲する選手、つまり“殺し屋”こそボンバーと呼ばれていると言う。

 事実、ピアテクがセリエAで決めている9ゴール中6ゴールが先制ゴールであり、ジェノアの4勝中3勝はピアテクのゴールが決勝ゴールとなっている。ゴール後のパフォーマンスでピストルを撃つ仕草を見せているのも、試合を決定づける重要なゴールへのこだわりからかもしれない。

バティらに肩を並べられるか。

 恩師のプロビエルツは予想する。

「ここからの戦いは、より難しくなってくるだろう。なぜなら、敵のディフェンダーがピアテクをよく知るようになっていくからだ」

 その上で、こう続ける。「25ゴール以上はいけるだろう」。なぜ、楽観的にそう予想できるのか。

 このストライカーを指導した別の監督も異口同音に証言するのは、ピアテクの改善への強い意欲だ。トレーニングを含めて「常に成長し、適応していこうとする」特性が、強く印象に残っていると言う。

 ピアテクが記録上で争っているバティストゥータは、セリエA開幕から11試合連続ゴールを決めた1994-95シーズンに、そのまま得点王となっている。シェフチェンコも開幕からの出場6試合で7ゴールを奪った1999-2000シーズン、セリエA得点王に輝いた。

 セリエA歴代12位の通算184ゴールまで数字を伸ばしたバティストゥータ、2004年のバロンドール受賞者となったシェフチェンコ、こうしたレジェンドたちにピアテクもいずれ肩を並べられるか――。

 本当に、そんな未来が訪れてもおかしくない。

 そう予感させるだけの資質は、二丁拳銃のパフォーマンスでスタンドを沸かせ続けてきたセリエAデビューイヤーの序盤戦だけで、もう証明されているだろう。

文=手嶋真彦

photograph by Getty Images


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