青学無双の予感が漂った出雲駅伝。原監督は「いやあ見事だったね」。

青学無双の予感が漂った出雲駅伝。原監督は「いやあ見事だったね」。

 出雲駅伝は、青山学院大が東洋大を振り切った。

 青学大と東洋大の差はわずか12秒。ひとりあたり2秒という僅差である。

 ゴール後、両校の監督、選手たちに話を聞くと、勝敗のカギとなった区間は「1区」だったことが浮かび上がってきた。

 青学大・原晋監督、東洋大・酒井俊幸監督とも、1区に惜しみなくエースをつぎ込んだ。6区間の出雲では出遅れが致命傷になりかねない。

 青学大は7月のホクレン・ディスタンスチャレンジの5000mで13分37秒という青学大記録をマークした橋詰大慧(4年)、対する東洋大も13分台の自己ベストを持つ相澤晃(3年)を投入した。

 当日の出雲は気温が高く、集団走が続くなかで両者ともに仕掛けどころを探っていたが、残り2kmの地点で動いたのは相澤の方だった。

 その背景には、ラストスパートに対する不安があったと酒井監督は語る。

「レース前に、『誰が、嫌な相手なの?』と聞いたら、『橋詰さんです』と相澤が言ってたんです。ラストのスプリント勝負になると厳しいと思ったので、ラスト2kmのところで勝負に出たんでしょう」

原監督「いやあ、見事だったね」

 たしかに、相澤がスパートした時点では橋詰との差は開いた。しかし、橋詰は冷静だった。ライバルの背中を見ながら、橋詰はこう考えた。

「相澤君が出た時、一瞬迷いましたが『ここじゃないな』と思って、自重しました。僕としてはラスト1kmまでは我慢して、そこから勝負に出ようと」

 この判断が、青学大の「三冠」の可能性を確実に高めた。

「もしも相澤君についていったら、ラストはバテていたかもしれません」

 第1中継点まで1kmを切ってから橋詰はペースを上げ、相澤を抜き去る。橋詰は、2区の鈴木塁人(3年)にタスキを渡す時点で、相澤に6秒差をつけていた。原監督は教え子の判断をべた褒めした。

「いやあ、見事だったね。あれが橋詰の持ち味です。レースの流れのなかで、冷静に状況判断ができる。焦らないのがいいですよね。6秒差って大きいんですよ。2区の鈴木が精神的に余裕を持って走れますから、今日の橋詰は最高の仕事をしてくれました」

控えが他校であればエースのタイムを出す。

 敗れた酒井監督は、1区の駆け引きをこう振り返る。

「相澤としては、あそこで引き離すしかなかったですからね。判断は悪くない。でも、まだ力不足ということでしょう。いい勉強になったと思います」

 出雲駅伝が終わった現段階で、11月4日に行われる全日本大学駅伝を予想すると、「青学一強」という構図が見えてくる。

 今年の青学大は過去に例を見ないほど、選手層が分厚い。毎年、出雲駅伝が終わった後、各校の出場できなかった選手たちが5000mのタイムトライアルに参加するのだが、青学大の神林勇太(2年)は13分58秒の自己ベストをマークした。

 他校であれば、エースのタイムである。

 その神林が補員に回っているところに青学大の底知れぬ力がうかがえる。

青学無双がはじまるのか。

 全日本で青学大に挑戦できるのは、東洋大と東海大か。

 東洋大も8人までなら、勝負できる。区間配置がうまくいけば、青学大にチャレンジできるだろう。

 東海大は選手層で対抗できる可能性があり、エース対決でも青学大と十分に勝負できるはずなのだが、出雲を見る限り、勢いに欠ける。東洋大、東海大とも全日本では先手を取りたいが、果たしてどんな作戦に出るだろうか。

 対する青学大は、全日本でも8区間でトップを譲らない可能性もある。原監督も、

「そのチャンスはあるでしょう」

と自信をのぞかせるほどだ。

 昨年の全日本は1区で出遅れたことが敗因となっただけに、安定した力を持つ選手を起用してくるだろう。そうなると、橋詰の可能性も出てくる。橋詰本人も、

「今日走ってみて、1区の楽しさが分かったような気がします。監督がそういうなら、全日本も1区かもしれませんね(笑)」

と、まんざらでもなさそうな表情だった。

 2018年、青学無双。

 この相手を負かすのは、容易なことではない。

文=生島淳

photograph by Kyodo News


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