スラムダンクの魚住、高砂が手本。太田敦也がBリーグで伝えたいこと。

スラムダンクの魚住、高砂が手本。太田敦也がBリーグで伝えたいこと。

 3シーズン目のBリーグが開幕し、各地で第1節の熱戦が繰り広げられた。発売中のNumber PLUS『Bリーグ2018-19公式ガイドブック』でもインタビュー取材を行なった、太田敦也を擁する三遠ネオフェニックスは、京都ハンナリーズと対戦。昨シーズンと同じ開幕カードとなった両チームの試合は、1勝1敗という結果だった。

 昨シーズンの三遠は京都を相手に開幕2連敗を喫している。欲を言えば2連勝したかったところだろうが、それでも開幕白星は幸先が良い。日本代表活動でチームへの合流が遅かった太田は、途中出場ながら2試合で34分のプレータイム、11得点7リバウンドという個人スタッツだった。

 開幕前、太田は「今年はアグレッシブに攻撃できるチームになっていると感じる」と語っていた。その言葉通り、負けた2戦目も1Qは先行した。

 今シーズンも確固たる信念を持って走り続けるであろう太田。先にあげた公式ガイドブックでは「一番好き」というスクリーンについての哲学を語ってもらったが、それ以外にも揺るがぬ信条を持っていることがあるので紹介したい。

「世界大会に行くと全然違った」

 まずはBリーグと日本代表の兼ね合いについて。今年は5月中旬から9月中旬まで約4カ月間にわたって日本代表活動があり、この後もBリーグの戦い真っ盛りの11月と来年2月にワールドカップ予選が組まれている。長距離移動を伴いながらの代表戦は過酷この上ないものだろう。しかし、太田には並々ならぬ使命感がある。

「日本では当たり前にプレーしていることでも、世界大会に行くと全然違ったということが結構あります。そういうものを体感して、三遠に戻って伝えたい」

 例えば、太田が獅子奮迅の活躍を見せた今夏のジャカルタ・アジア大会。日本は、フィリピンやイランというフィジカルの強い相手に対し、ボディコンタクトで苦労を強いられた。

「彼らはちょっとしたカットにも体をしっかり当ててくる。ドライブでも、最初から下がっているわけじゃなくて、プレッシャーの中でどんどん体を当てて、ドライブを遠回りさせたりしているんです」

練習中から示していくことで。

 フィジカルコンタクトを仕掛けられた日本は次第に体力を消耗し、後半に突き放されていった。

「体力が削られていく感覚は、口で言っても伝わりません。僕がまず練習中から示していくことで、周りに伝わっていくと思うんです。僕が三遠で伝えて、それが他チームにも伝わっていく。そういうところでBリーグに寄与したいと思います」

 太田は現在34歳。バスケットボール選手としてやっていけるという自信を持ったのはいつ頃、どういうきっかけだったのだろうか? その問い掛けへの答えはいささか意外だった。日大を卒業し、三遠ネオフェニックスの前身であるオーエスジーに入ってからのことだったのだ。

 オーエスジーに入って1年目の太田は出場機会が少なく、出場しても外国人選手にシュートをブロックされてしまう苦しい時期を過ごしていたという。太田は思い悩み、自問自答しながら毎日を過ごした。

「自分には何ができるのだろう。何が得意なのだろう。どうしたら生きるのだろう。ひたすら練習に追われながら、真剣に考えました」

センスは要らない、努力でいい。

 それは、与えられたことを必死にやっていた学生時代にはなかった作業だった。

「自分は別に運動能力があるわけじゃない。跳べるわけじゃない。つまり拠り所がなかったんです。でも、センターをやらなきゃいけない。そこで、何をやろうかといったときに考えたのがディフェンスです。センスは要らない。努力でいい。じゃあ、ディフェンスを頑張ろう。点を取られなければ取らなくてもいいんじゃないか」

 これが太田の転機となった。

「やるべきことが見つかったんです。そういうことを考えなければ、昔のまんまで終わってたんじゃないかなと思っています」

魚住に魅かれ、高砂から学び。

 やると決めたら一直線。派手さはなくても、勝利に欠かせないプレーに徹する太田の信条がよく分かるエピソードがある。『スラムダンク』で、どのキャラクターが一番好きかと尋ねたときに出てきた名前と理由だ。

 太田がまず、最も身近に感じたキャラクターとして挙げたのは、陵南高校の魚住純。身長202cmのセンターは、高校入学当初、フットワークトレーニングなどの基本練習についていけず、苦しんだ過去を持つ設定だ。

「魚住は自分と同じような感じだなと感じました。僕は千葉の柏で高校時代を過ごしたのですが、最初1年の時は学校帰りに自転車を降りたら両足が攣って倒れるようなこともあって。フットワークでヘロヘロになってというのも同じような感じでした。身長が高くて、同じような境遇だなと思いましたね」

 しかし、好きな選手は別にいた。海南大附属高校のセンタープレーヤー、高砂一馬だ。高砂の話になったとたん、それまで静かな話しぶりだった太田の口調がグッと熱を帯びた。

「海南は神奈川から全国大会に出る、メチャクチャ強い高校ですよね。(海南の選手で作品に)登場するのはいつも牧紳一や神宗一郎なんですが、でも、そのチームでインサイドを全部1人で支えてるのが、そんなにデカくもない高砂なんですよ。目立たないのに全国ベスト4に入るチームのインサイドを全部支えている。僕はそれが一番すごいと思うんです」

「目立たなくていいから……」

 高砂の身長は191cm。作品の舞台は約25年前の高校バスケ界であるとはいえ、確かに「そんなにデカくもない」と言える。

「目立たなくていいから、そういう成績を残して、でもよく見たら、この選手が支えている。そういうのが一番いいなと、僕は思っているんです」

 34歳のビッグマンは、ほぼ既にその域に達している。しかし、太田が見つめる場所はもっと高く、もっと遠いところ。その志がある限り、存在感はさらに増していく。

文=矢内由美子

photograph by B.LEAGUE


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