柏・大谷秀和と鈴木大輔が語った、残留争いでの“割り切り方”とは。

柏・大谷秀和と鈴木大輔が語った、残留争いでの“割り切り方”とは。

 大型の台風25号の影響で10月6日、中国地方では強風が吹き乱れ、平和記念公園の約15メートルの樹木が根元から倒れたという。

 エディオンスタジアム広島で行なわれたサンフレッチェ広島対柏レイソル戦もまた、強風の影響を免れなかった。

 広島のGK林卓人の渾身のキックがみるみるうちに押し戻され、自陣半ばあたりに落ちる。グラウンダーのパスでさえ風で流され、コースから大きくズレる。「普通にサッカーができるような状態ではなかった」と柏のDF鈴木大輔は振り返った。

 だが前半、風上に立った柏は、強風をまんまと味方につけた。

「前半は風上だったのでクリアするというより、相手の裏に落とすことを考えていた」

 鈴木がそう語ったように、ロングボールを使って攻め込んだ柏は23分、GK林がパンチングでクリアしたボールを伊東純也がダイレクトで合わせて先制する。

 27分にも相手のクリアを拾った伊東が蹴り上げるようにしてミドルを決めると、35分には速攻からオルンガが追加点を奪う。なかでも伊東のゴールはいずれもペナルティエリアの外から放ったシュートが風の勢いに乗ったもの。「風を利用して、上手くいった」と自画自賛したファインゴールだった。

風上に立てた思惑通りの前半。

 ただし、柏が風を味方に付けたのも、前半に風上に立ったのも、偶然ではない。

「風向きがどうなるか分からないから、先手を取りたいと思っていたので、(キャプテンの)クリス(ティアーノ)がコイントスで勝ったのは非常に大きかった。なので、クリスのコイントスが(勝因の)50%くらい(笑)」

 ボランチの大谷秀和が明かす。加藤望監督から「風上を取れ」との命を受けたクリスティアーノがまんまとコイントスに勝ち、メインスタンドから見て左側のエンドを選び、思惑どおり前半、風上に立てたのだ。大谷がさらに続ける。

「試合前、グラウンドでアップをしてみても難しい状況だということは分かった。だから、ボールを下げたら前に蹴る、リスクのあるプレーはしない、ということをチームとして徹底した。準備してきたものとは違うけど、こういう状況を受け入れたなかでタフにプレーしようとみんなで話していました」

「クリスの頭を単純に使おう」

 大谷の言葉を補足するように、鈴木も語る。

「アップをしながら選手間で話し合ったし、アップ前やアップ後の監督のミーティングでも話がありました。スローインを後ろに下げるのはやめよう、GKにバックパスをするのはやめよう、なるべく前に付けよう。

 試合中も、真ん中の裏を狙うよりサイドの裏に流し込もう、クリスの頭を単純に使ったほうがいいんじゃないか、クリスを左に張らせて(相手の右サイドバックの和田拓也との)身長差を生かすべきじゃないかとか、話し合いながら決まりごとを徹底しました」

 大谷と鈴木が語った割り切りと徹底――。それこそが柏にあって、広島になかったものだった。広島の城福浩監督も「前半はもうちょっと徹するような戦いをしないといけなかった。後半風が少し止むという情報があったなかで、前半風下になったかと。そうなった時点で、いろんな徹し方がもう少しあったかもしれない」と悔やんだ。

広島と柏が置かれている状況の差。

 もっとも、広島は簡単に割り切れない状況でもあった。

 首位を快走してきた広島はリーグ戦でここ3試合勝利から見放され、前節ついに2位に転落した。とはいえ、0−1で敗れた前節のガンバ大阪戦だって内容が悪かったわけではない。それなのに、これまでやってきたサッカーを放棄すれば、選手たちの自信が揺らぎ、積み上げてきたものを失いかねない。

 一方、優勝争いを続ける広島とは対照的に残留争いに巻き込まれている柏もリーグ戦でここ4試合勝利から遠ざかっていた。クリスティアーノ、オルンガ、瀬川祐輔、江坂任、伊東とJ1でも上位クラスの攻撃陣を揃え、実際にゴールは奪えているが、チームとしてゲームモデルやプレー原則が共有されておらず、チグハグな印象が否めない。

 それゆえ割り切りやすく、むしろ準備してきたものを捨ててでも、悪い流れを断ち切りたい状況だったのだ。

割り切ったおかげで得たもの。

 ただし、割り切ったおかげで手に入れたものもある。

「こういう天候だったから、こういうサッカーになったけど、良かったのかなと。ここ数試合、全体的にコーチングが欠けていると感じていたんです。でも、今日は事故が起こりやすい状況だったから、行ったぞとか、カバーしろとか、当たり前のことだけど、みんなが自然に声を出していて、それが結果に繋がった。今日のコミュニケーションを基準にして、これくらい声を出してやっていければ、守備は安定すると思います」

 鈴木が手応えを覗かせれば、大谷も力を込めて言う。

「3点のリードではどうなるか分からないというのが、前半を終えた時の印象だったので、後半は自分と大輔のところで常に声を掛けながら、セーフティに割り切ってやりました。後半の立ち上がりに何本かシュートブロックしましたけど、全員が身体を張れていた。そういう部分はスタンダードにして、継続しなければならないと思います」

 残留争いを続けるリーグ戦とは一転、ルヴァンカップでは準決勝に進出しており、10月10日にはホーム、三協フロンテア柏スタジアムで湘南ベルマーレと第1戦が開催される。大一番の続く柏にとってあの日の強風は、チームの命運を変える“神風”になるかもしれない。

文=飯尾篤史

photograph by J.LEAGUE


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