全日本女子バレーの好調を支える、中田久美のぶれない指導力とは。

全日本女子バレーの好調を支える、中田久美のぶれない指導力とは。

 バレーボール女子世界選手権で、日本代表が好調な戦いを続けている。

 アルゼンチン、オランダ、メキシコ、カメルーン、ドイツと同じ組に入った1次リーグを突破。2次リーグでも世界ランキング3位でリオ五輪銀メダルのセルビアに勝利した。最終戦の強豪ブラジルに敗れはしたものの、フルセットの激戦を演じて3次リーグ進出を決めた。

 選手全員を活かしながら、かねてからの課題も改善が見られる。

 両サイドからの攻撃に偏るなどバリエーションに欠ける面があり、相手ブロックに止められるケースが少なくなかった。しかし今大会ではバックアタックを効果的に使い、多彩な攻撃を展開しているのが成績につながっている。

 そんなチームの過程で思い当たるのは、方針にぶれがないということだ。それは指揮を執る中田久美監督の方向性が一貫していることを意味する。

選手の自立を促す指導方法。

 実は、日本代表監督就任前から彼女の指導スタイルは変わっていない。

 現役時代、中田は名セッターとして日本代表の中心にいた。2011年、久光製薬のコーチとなり、その翌年に監督就任した。現役引退から十数年間は、イタリアで指導したことはあったものの、現場から長期間離れてから、指導者復帰する形となった。

 しかし監督就任1年目にして久光製薬はタイトルを次々に獲得。女子史上初の3冠に導いたのだ。

 中田は激しい気性という印象が強いが、指揮官としてはまったく異なる姿を見せる。久光製薬で心がけたのは、選手との対話で自立を促す姿勢だった。特に印象的だったのは、ベンチでのもの静かな態度だ。

 それとともに大事にしたのは、チームの目標を明確にし、そこに至る道筋もはっきりさせることだった。

1年目の「40%」の完成度から。

 2016年10月、日本代表監督に選出されたあともそこに変わりはない。掲げた目標からもそれは分かる。

「2020年に、伝説に残るチームにしたい」

 これはすなわち、東京五輪での金メダルである。そのためには何が必要か、段階を追って追求してきた。1年目は守備の構築とともに、精度の高いサーブレシーブからの攻撃を基本として磨きをかけた。

「40%くらいです」

 チームの完成度をこう振り返って迎えた2年目の今シーズンは、攻撃の枚数を増やすことを心がけ、バックアタックの練習にも時間を割いた。その成果は、世界選手権初戦のアルゼンチン戦から現れ、その後の試合にもつながっている。

 セルビア戦を筆頭に好ゲームを展開する日本代表だが、その姿は今夏のアジア大会とは対照的だ。金メダルを目標に掲げて臨んだ同大会では優勝はおろか4位に終わり、メダルを逃した。大会後、方向性を疑問視する意見、チームの今後を憂う声も多かった。

「変えるつもりはありません」

 だが世界選手権でそれを払拭するような戦いを見せている理由は、指揮官のぶれなさに行き着く。大きな目標を描き、そのために何が必要なのか、目標までの過程とともに計算して実行していく。

 プロセスが正しい道だったとしても、結果が思うように出ないと、迷いが生じて修正を加えたくなる。方向転換も時に必要だが、たいていは迷いをさらに生んで方向を見失う危険性もはらんでいる。

 ただ中田には、一喜一憂することなく、ただひたすらに実行する力がある。選手に対しては、ミスをただ責めることなく、意図を聞くなど対話重視の姿勢も変わりはない。

 中田は世界選手権前にも、こう語っている。

「(目標を)変えるつもりはありません。覚悟をもって戦いたいと思っています」

 10月14日からは、いよいよ3次リーグがスタートする。

「選手たちに思い切りプレーさせたいです」

 強豪との対戦に、どんな試合を見せるのか――。2020年へ向けても、大事な試合が続く。

文=松原孝臣

photograph by AFLO


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