DeNA濱口遥大の勇敢さは折れず。「苦しんだけど濃い2年目だった」

DeNA濱口遥大の勇敢さは折れず。「苦しんだけど濃い2年目だった」

 濱口遥大に今シーズン前半の不調の原因について尋ねると、頭の中でいろいろなことを反芻するような表情で首を傾げた。

「本当、今シーズンはチームに迷惑をかけてしまい申し訳ない気持ちです。ただ、自分の中では昨年と比べてピッチング自体そんなに大きく変わったという思いはないんです」

 ルーキーイヤーの昨季、2桁勝利を挙げ新人特別賞を獲得した濱口に掛かる期待は大きいものだった。しかし開幕前に左肩の違和感により出遅れ、5月中旬に戦列へ復帰するもオールスター戦まで勝ち星はなし。持ち味であるボールの勢いは鳴りをひそめ、制球に苦しんだ。特に7月1日の広島戦では、1イニング7四死球、プロ野球ワーストタイとなる4者連続押し出しを記録してしまう。

「前半戦は粘るところで粘れない、先頭打者をアウトにしてリズム良く投げることができず、なかなか噛み合いませんでした。相手から研究されていた? いや、それはあまり感じませんでしたね。あくまでも自分の問題。微細な加減というのか、そういった部分が試合中に修正できませんでした」

苦しんだ時期こそ暗くならず。

 相手ではなく、自分と戦ってしまったと濱口は語る。昨季は日本シリーズまでほぼフル回転で活躍し、春季キャンプでは肩の違和感を覚えた。きっと疲労の蓄積もあったのだろう。自覚があまりない状態で身体のバランスを崩し、結果、コンディショニングに苦労してしまった。

 濱口が苦しんでいた同時期、同じ左腕で先輩の石田健大や今永昇太も不振にあえいでいたが、ピッチングに関し相談やアドバイスなど互いに言葉を交わす機会などはあったのだろうか。

「いや、そういった会話はあまりしませんでしたね。各々が自分に向き合うという感じでしたし、苦しい気持ちや上手くいかない状況をチームに持ち込むべきではないのかなって。昨年も苦しい状態になるとうつむき加減になっていたんですけど、チームとして戦っている以上、そういう選手が身近にいてはチームのプラスになることはない。だから暗いことはあまり言いませんでした」

高速スライダーという収穫。

 ネガティヴなムードをチームに持ち込まないという濱口の気持ちは理解できる。ただ以前もこのコラムで指摘したが、やはり先発陣の中にチームを牽引するようなリーダーが不在ということなのだろう。この点は来季も気になるところだ。

「ただ、上手くいかないことばかりじゃなかったんですよ」

 濱口の口調に若干の熱がこもる。

「苦しかったかもしれないけど、すごく濃いシーズンだったんです。経験として、今後のことを考えれば大切なことを知ったし、勉強になることも多かった。なによりも自分がどんなピッチャーなのか、より理解できたのが収穫でしたね。果たして何が強みなのか。自分の取り組むことは何なのか。調整方法や修正力。この経験を無駄にしたくない」

 得る物は多く、着実に成長していると本人は自覚している。

 オールスター戦後の後半戦、濱口はようやく復活の兆しを見せ4勝を挙げた。特に印象的だったのは10月1日の阪神戦。濱口は7回1安打9奪三振の好投を見せた。大胆に、かつ繊細に。緩急を巧みに使い、新球の高速スライダーで三振を奪う姿は、投手として以前とは異なる趣と奥行きがあった。

カウントを作りやすくなった。

 昨季はあまり空振りを取ることのできなかったスライダーだったが、今シーズンの使用比率は約15%に上がり自信をもって投げている。コンディション不良の要因とも言われているが、新球について濱口は次のように語る。

「キャンプから取り組んできた高速スライダーですが、じつはシーズン序盤は精度も悪く、使えるボールではなかったんです。本格的に投げ始めたのは後半戦からで、ピッチングのいいアクセントになりました。

 例えば右バッターの場合、フォークやチェンジアップは外に行くのでアウトコース主体になっていたのが高速スライダーのおかげでカウントを作りやすくなった。また左バッターに対しては数字的にはわからないんですが、精神的な部分で余裕をもって内と外を使い分けられるようになりましたね。以前は踏み込まれて打たれていましたが、球速が出たことでそういうことがなくなったんです」

捕手・伊藤光の存在の大きさ。

 またシーズン途中にオリックスから加入したキャッチャーの伊藤光の存在もプラス方向に働いたという。

「“腕を振る”などベースの部分は昨年から今年の前半まで組んできた髙城(俊人)さんと同じなのですが、そこにプラスして緩急の割合などファールを打たせる配球が光さんの場合は多いんです。空振りだけがストライクを取る手段ではないと改めて学びましたし、変化球をインコースに投げるなど厳しくないゾーンでもカウントを有利にするためにリードしてもらえたのは心強かったです」

 最後にひとつ。苦しかった前半戦、四死球を多発し、結果も出ず、自分を見失いつつあったあの時期、マウンドに上がることを“怖い”と思ったことはなかったのだろうか。

「いや、それはまったくなかったですね」

 濱口はきっぱりと言い、勝ち気な顔をのぞかせる。

「マウンドを任された以上、どんな場面でもそういう気持ちを抱いてはいけないんです」

 この勇敢さこそが濱口の生命線である。

日米野球では「腕を振って」。

 真骨頂を見せられたのはわずかな期間だった。だが後半戦における好投が認められ、濱口は11月9日から開催される『2018日米野球』の侍ジャパンに選出された。

 濱口からすれば遅ればせながら調子が上がってきた状態だけに投げたい思いは強く、また今年3月の侍ジャパン強化試合を左肩の違和感により途中辞退していたので使命感もある。

「自分らしく腕を振って打者に向かっていきたい。持ち味の緩急を使い、日本代表として恥ずかしくないプレーをしたいと思います。メジャーリーグの選手と同じフィールドでプレーするので、ひとつでも多くのことを吸収して来シーズンに繋げたいですね」

文=石塚隆

photograph by Kyodo News


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