8万人が宇都宮郊外の山中に集結!自転車ロードレースの国内最高峰。

8万人が宇都宮郊外の山中に集結!自転車ロードレースの国内最高峰。

 宇都宮駅から北西郊外へとバスで40分ほど走った先にある古賀志山。毎年10月下旬になると、麓の森林公園から山頂へと伸びる古賀志林道の両脇がびっしりと人で埋め尽くされる。

 彼らは、国内最大の自転車ロードレースであるジャパンカップサイクルロードレースの観客たちだ。

 10月21日、森林公園に詰めかけた観客はなんと8万2000人。サッカーや野球などのような観戦チケットこそ不要だが、都市部から離れた山中にまで足を運ぶのはなかなかのハードルのはず。にもかかわらず、台風の影響でどしゃ降りに見舞われた昨年も7万人を集めている。

 各国を転戦しているチーム関係者によれば、バスや自転車で来るしかない郊外のレースでこれだけ観客の多いレースは、アジアはもちろん本場のヨーロッパでも稀だという。今大会に出場した日本人初のツール・ド・フランス完走者・別府史之も「生きていてこんなに声援をもらえることはない」と話す。ジャパンカップはなぜこれほどの人を惹きつけるのだろうか。

参加選手たちも超豪華。

 1990年にロードレースの世界選手権が行われたのをきっかけに、ジャパンカップは'92年からこの地でスタートした。森林公園を中心としたテクニカルでハイスピードな周回コースだ。

 UCI(国際自転車競技連合)が統括する自転車競技は、ツール・ド・フランスなどグランツールを含むワールドツアーと、大陸ごとのシリーズ戦で行われるコンチネンタルサーキットがあるが、このジャパンカップは後者のアジアツアーの1戦で、そのなかで最上級の「オークラス」に格付けされている。

 ワンデーレースとしてはアジア最高位の格付けなだけに、参加選手も豪華だ。チームの格付けとして最上位の「ワールドチーム」が5つ、その次の「プロフェッショナルコンチネンタルチーム」も3つ参戦している。過去にはジロ・デ・イタリア覇者のイヴァン・バッソや五輪金メダルのファビアン・カンチェラーラら、世界のトップ選手が姿を見せている。

トップ選手が引退の場所に選ぶことも。

 また、シーズン最終盤というタイミングのため、これを引退レースに選ぶ選手も多い。

 今年も例外ではなく、この大会が見納めとなる選手の中にはBMCレーシングチームのサイモン・ゲランスもいた。グランツール3大会で区間優勝を挙げている実力者だ。

 ワールドチームで活躍したのち、日本のチーム右京でタイトルを重ねてきたオスカル・プジョルも最後の勇姿を見せた。

 サッカーで言えば、欧州組がこれほど増える前のトヨタカップのようなものだろうか。テニスで言えば、錦織圭登場以前のジャパンオープンが似ている。最高峰のレースではないし、優勝争いをする日本人もほとんどいないけれど、テレビでしか観られない本物のトップ選手をこの山道なら間近で観ることができる。

ヨーロッパ人が驚くファンの若さ。

 だがジャパンカップが世界的に珍しいのは、単に集客力だけではないという。イタリア籍のチーム、NIPPO・ヴィーニファンティーニの大門宏監督が教えてくれた。

「ヨーロッパでの自転車競技は、日本での柔道や水泳、体操のような昔ながらの人気スポーツ。安定した人気はありますが、年々ファンの年齢層が高くなっているんです。だから向こうの監督がここへ来ると皆びっくりしますよ。まさか日本にこんなたくさんの若いファンがいるなんて、と」

 実際、選手たちを追いかけるチーム車両のスタッフが助手席から沿道の若い熱気をスマホに収める姿はあちこちにあったし、複数チームのインスタアカウントから世界に発信されていた。

 大門監督は続けた。

「こういう人気があるということは、別府や新城幸也のようにワールドツアーで活躍する日本人がだんだん増えてくるんじゃないかと思っています」

この山道の熱気は何につながっているか。

 今年のレースは、UCI規則の変更に伴い大幅増の126選手が出走。地元の声援を浴びた宇都宮ブリッツェンがレース中盤まで集団の先頭を固めて存在感を示し、終盤からは地力に勝るワールドチーム所属選手がアタック。

 最後はそのワールドチームの2人による一騎打ちとなると、互いに牽制しながらラスト1キロで先に仕掛けたロブ・パワー(ミッチェルトン・スコット)がアントワン・トールク(ロットNL・ユンボ)を押さえてトップでフィニッシュ。日本人最高位は、終盤まで集団に残った中根英登(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)の12位だった。

 今年も若いファンを含む多くの観客が声援を送ったジャパンカップ。世界のトップレーサーに引き寄せられ、逆に彼らを驚かせている山道の熱気は、いずれ日本人選手を世界に押し上げる力のひとつになるのかもしれない。

文=生島洋介(Number編集部)

photograph by Sonoko Tanaka


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