新生Vリーグは客層が変わった!「社員のもの」から真の興行へ。

新生Vリーグは客層が変わった!「社員のもの」から真の興行へ。

 体育館に入ると、今シーズン、サントリー・サンバーズに新加入したリーグ最高身長218cm、ドミトリー・ムセルスキーの等身大パネルが出迎えてくれる。ビールや水割りを手にした会社帰りの男女が、自分の席を探して通路を行き来する。19時30分にスタートするゲームのスタンドは、昨シーズンまでとは明らかに違う客層で徐々に埋まっていった。

 10月26日金曜日、ビジネス化を目指し「チームが主管となって運営するホームゲーム」を増やして開幕した新V.LEAGUE。大田区総合体育館で開催されたサントリーのホームゲームに足を運んだ。今シーズンよりすべてのホームゲームは、チームが主導権を握り、試合開始時間や演出、イベントなどを決める。どのような雰囲気で行われているのか、興味津々で会場へ向かった。

 入場時に配られた赤いビブスを着た観客が、コートの半分以上を埋めている。観客に配られたのはビブス以外に、ポケット式の選手名鑑と、バレーボールの国際試合でよく見るスティックバルーン。

 同封されたチラシでは、次回ホームゲームの案内や、ハッシュタグをつけてSNSに投稿した人へスポンサーの飲料をプレゼントするキャンペーンなどが紹介されている。口コミでの拡散や、次回の観戦につながる情報を発信しようという意図が明確に見えてくる。配布物の充実ぶりを見て「力が入っているな」「お金をかけているな」という印象を受けた。

選手横断幕でのアクシデント。

 実は、開幕前にはアクシデントもあった。

 会場に貼る選手横断幕について、“ビジターチームのみ認められない”という内容がサントリーのホームページに掲載されたのだ。開幕戦の数日前のことだった。

「ビジターのファンを排除するのか」

「応援したいという気持ちを無視するのか」

 インターネット上で抗議の声が上がり、サントリーは一旦、掲載を非公開にする。その後、試合前に申告したもののみ許可するという内容へと訂正、再掲載された。

選手はどう感じていたのか?

 試合後、主将の藤中謙也はホームゲームについて「見渡せば赤いし、声援も大きかった。観客の温度も違うと感じました」と語った。続いて、横断幕の一件については質問が出る前に自らこう言及した。

「今シーズンから新リーグとなってホーム&アウェイというカラーをさらに強くしていこうという動きがあります。急にそういった動きになったために、難しい部分はたくさんあると思います。ただ、サンバーズは以前からホームゲームに力を入れている。

 今回、リーグ開幕前にファンの方から意見をいただきましたけれど、そういうところも含めてホーム&アウェイだと思っています。もちろんJTさんの協力があってのホームゲームだということはわかっていますので、“僕らが勝手にやった”と誤解せず、正しい理解をしてほしいと思います。もっと熱くバレーボールとサンバーズを応援していただければ、リーグも盛り上がっていくと思いますので」

 当日、スタンドを仕切るフェンスにはすべてサントリーのホームゲームを記すバナーが貼られていた。サントリー側の選手個人の横断幕が見当たらなかったことを思えば、相手へサポーターへの連絡が遅れたという初歩的なミスだろう。

金メダリストの世界水準の高さ。

 さて、ゲームのほうに話を移す。試合は大いに盛り上がり、フルセットでホームチームであるサントリーの勝利で終わった。終始、観客や報道陣の度肝を抜いたのは、新加入のムセルスキーのプレーだ。さすがオリンピックの金メダリスト。218cmという高さを生かした、鋭い角度のサーブやスパイクは、見ている人を大いに楽しませてくれた。

 サッカー界にイニエスタがいるように、バレー界にはムセルスキーがいる。ムセルスキーの存在が新リーグやサンバーズの認知度アップに一役買い、観客動員に結び付くことがビジネス化への成功モデルとなるのではないだろうか。

 もちろん、課題は残されている。外国人選手に予算を取れないチームと、サントリーのような補強ができるチームで成績に差が出ることを懸念する声は以前からあった。しかし野球やサッカー、バスケットのようなプロリーグでは、力のある選手に資金を投入するのは当たり前で、そうやって強くなったチームは観客動員やグッズ収入などでクラブを徐々に大きくしている。

 完全な「プロ化」ではなくても、話題性や観客動員のアップはリーグやチームの価値を高めることにつながるはずだ。

SNSのプロモーションは課題。

 そして最後にもうひとつ。チームやVリーグ機構にももうひと踏ん張りしてほしい。新しく生まれ変わるリーグの開幕戦であるにもかかわらず、その情報が、もともとバレーボールに興味を持っている人以外には全く知られていなかった。

 特にSNSでの事前告知は少なく、Tリーグの開幕やプロ野球ドラフト会議と重なったこともありメディアへの露出も十分ではなかった。特に最も力を入れたという、オフィシャルソングと選手のダンス動画に関しては、公開から3週間で9000回程度の再生数にとどまっている。

 これは、既存のファン以外に関心を寄せる者がいないと判断していい数字だろう。チームや選手に多くを求めるのであれば、Vリーグ機構も本気でリーグの知名度アップに力を入れてほしい。

 ただし、横断幕の件も含め、さまざまなクレームが出るのはバレーボールチームが「企業の福利厚生」から脱却し、興行として認められつつある証拠でもある。

 過去には招待券で入った応援団が座る席をねらってサインボールを投げ入れる選手の姿も見られ、チームは選手の視線はサポーターではなく会社のほうを向いていると感じる機会も多かった。

 おそらく観戦していたサポーターの中にも「企業スポーツは各企業の社員のもの」という、あの会場が醸し出す雰囲気に、居心地の悪さを感じていたかたも少なからずいたのではないか。そういった、クラブが大切にすべき「顧客」が堂々と意見を言えるリーグになったのだと、まずは前向きにとらえたい。

文=市川忍

photograph by Kyodo News


関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索