鹿島スタジアムキャンプに潜入取材。ピッチ上に泊まり、星を眺めてみた。

鹿島スタジアムキャンプに潜入取材。ピッチ上に泊まり、星を眺めてみた。

 2018年、平成最後の夏。

 鹿島アントラーズは、8月11日から12日にかけてクラブ初となるスタジアムキャンプを実施した。家族連れを中心に54組166人が参加し、ピッチ上に張られたテントで宿泊。いつも選手たちが戦う戦場で、ボールを蹴るも良し、星空を見上げながら過ごすも良し、思い思いの一夜を過ごした。

 クラブ初のキャンプイベントについて、カシマサッカースタジアムの萩原智行副所長は言う。

「ピッチを使って、いろいろなことをやりたいという思いから始まり、コンサートから運動会まで、大きなイベントから地域イベントまで、さまざまな構想がありました。せっかくイベントをやるなら、冬ではなく夏。寒ければ何かと外で楽しめないだろうから、あたたかい時期に何かできないか。その中で実現したのが今回のイベントでした」

実現のきっかけは、芝の張り替え。

 プロサッカークラブのスタジアムキャンプイベントは、これまで川崎フロンターレやコンサドーレ札幌などが実施。ただ、札幌はウォーミングアップゾーンで、川崎Fは陸上トラックでの寝泊まりにとどまり、傷みやすい天然芝の上に寝泊まりできるキャンプは、今回が初めてだった。野球チームでも実施される例を見るが、人工芝だからこそ本来の野球に影響なく開催できている側面がある。

 カシマスタジアムで実現できた要因の1つに、今季から夏芝の新品種への張り替えがあった。これまでの芝は、冬によく育つ「冬芝」を採用していた。そのため夏場の使用は、Jリーグの日程を踏まえても、ピッチに与える悪影響は目に見えていた。かと言って、通常貸し出しているユースや高校サッカーなど、アマチュアスポーツの使用も制限できない。夏に弱い冬芝を守るためには、現状維持が精一杯だったのだ。

 しかし、今季から夏によく育つ「夏芝」に張り替えた。それによって、夏は“ダメージを抑える”という観点から、“より育つ芝をどう活用するか”という観点に変わった。

 アントラーズは今年3月、クラブプロジェクトとして「ターフプロジェクト」を発表。短納期でターフを張り替えるビッグロール工法や独自の養生技術を新たに確立させ、芝のコンサルティング事業に取り組んでいる。芝が傷めば張り替えればいい。根本的な発想の転換によって、試合の前に一定のメンテナンス期間を設ければ、確実な回復を計算できるようになったのだ。

これでもかと企画されたイベントの数々。

「なるべく来た人が飽きないようにとプランニングしていた」(萩原副所長)

 キャンプイベント当日は、さまざまなコンテンツが用意された。ヨガなどの健康プログラムやスタジアムツアー、鹿島神宮周辺をウォーキングする神の道ツアーから始まり、子ども向けスイカ割り大会も開催。アントラーズのアウェイゲームに合わせ、夜はスタジアムコンコースで毎年夏の間に実施しているビアガーデン会場を使い、パブリックビューイング(PV)を開催した。

 PVはスタンド内の大型映像装置でも映し、ビアガーデン会場で応援する人、ピッチから声援を送る人、アントラーズの試合をそれぞれの形で楽しむ姿があった。夜には星座に関する謎解きゲーム、天文学者の布施哲治さんが講師となって火星大接近や天文学についての講座があったり、望遠鏡で星を見たり、星座早見表を作成したり。アントラーズOBのレジェンド名良橋晃さんもゲスト参加し、イベントを大いに盛り上げた。

 ピッチ上の構成にも一工夫を加えた。もともとカシマスタジアムにあるスポーツジム「カシマウェルネスプラザ」で実施しているヨガをコンテンツに入れようと計画していたため、ピッチ半分は何も置かずアクティビティスペースとして、もう半分はテントを敷き詰めて宿泊スペースとした。

ピッチで過ごすこと自体の特別さ。

 ただ、実際に当日を迎えると、参加者の反応が想定とは少し違っていた。

「とにかくヒマな時間を作らないようにしたけれど、コンテンツに参加しないでピッチで寝転んだり、サッカーをしたり、ピッチで過ごす時間を楽しむ方もいたんです。これが特別なことだったんだと改めて気がつきました」

「よくキャンプ場では、日よけのためにタープを張ったり、椅子を並べてバーベキューやキャンプファイアーをしたりという楽しみがあります。ただ、今回はそこを制限させてもらいました。ピッチ上での飲食は水のみ。テントもこちらで設営したものに宿泊してもらいました」

 本来、キャンプといえば、テントを立てたり、食事を作って飲み食いしたり、大自然を楽しむというものだろう。そのため、今回の企画は普通のキャンプよりも制限される分、キャンプ愛好者にとっては物足りなさがあるのではという懸念があった。

選手が使うロッカーのシャワーもOK。

 そこを制限したのには、理由があった。

「テントを立てるとき、どうしてもペグ打ちの作業があります。キャンプ後にペグが残っていて、試合中に選手がケガをしては元も子もない。こちらでテントを立てて、ペグの数を管理することで安全をコントロールしていました」

 サッカー専用スタジアムだからこそ、普段入ることのできないピッチを満喫してもらうことを売りとした。シャワーは選手が試合時に使用しているロッカーだったことも貴重なコンテンツの1つである。

「ファミリー層をターゲットとして、普段キャンプをよくやる方も想定していたが、キャンプをやったことがない人も参加してくれました。普通であれば、キャンプをやったことない人が参加しようとは考えないと思うのですが、このイベントに対するポテンシャルの高さを感じました」

サッカー以外の収入がクラブを支える。

 サッカークラブにとっての主な収入源は、スポンサー収入、入場料収入、放映権料収入の3本柱と言われる。アントラーズでは第4の柱として、ノンフットボールビジネス、つまりサッカー以外の収入を増やしていこうと取り組んできた。

 カシマスタジアムでは、アントラーズの歴史が詰まった「カシマサッカーミュージマム」、スポーツジム「カシマウェルネスプラザ」、スキンケアサロン「アントラーズスキンケア」、整形外科「アントラーズスポーツクリニック」を常設とし、今年10周年を迎えた「スタジアムビアガーデン」は夏限定で実施している。7月には謎解きイベント「ゾンビスタジアム」を開催した。

 今回のイベントを萩原副所長は、こう振り返る。

「これまでにやったことないイベントを実施できた。このままでいい部分もあるが、今後はコンテンツを変えながら進めていきたい。今回参加した方には、おおむね喜んでもらうことができました。継続して定番化することで、今回参加できなかった方にも参加してみたいと思ってもらえるようなものにしたいですね」

 スタジアムで特別な体験を。アントラーズは、さらなるイベントを企画して、スタジアム利活用を進めていくつもりだ。

文=池田博一

photograph by Hirokazu Ikeda


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