西武の熱男・山田遥楓の憧れ。松田宣浩は「常に目標とする人」

西武の熱男・山田遥楓の憧れ。松田宣浩は「常に目標とする人」

 現在、熱い戦いが繰り広げられている日本シリーズ。10年ぶりにリーグ優勝を果たしたものの、クライマックスシリーズ・ファイナルステージでソフトバンクホークスに敗れ、日本シリーズへの出場が叶わなかった西武ライオンズで、最後まで日本シリーズへの出場権をかけた戦いをスタンドで見つめていた選手がいた。

 山田遥楓、プロ入り4年目の内野手だ。

 一軍に帯同し、ほかのベンチ入りメンバーとともに試合前練習を続けていたが、最終戦となった第5戦まで登録はなく、そのまま山田の2018年シーズンが終わった。

「すごい試合ばかりでした。残念ですね」

 帰り際、そう言い残して球場を去った。しかしスタンドから見た光景は一生、山田の記憶に残るだろう。

「これほど緊張感のある試合は野球人生で初めてです。見ているだけでも緊張しました。急に呼ばれることも想定して、いつ呼ばれてもいいように、すぐにプレーできるように、気持ちの準備だけはしていました。

 こういう試合でベンチに入るかもしれないというチャンスがあるなんて、想像もしていませんでした。今シーズンは、とにかく一軍に上がりたい、一軍で結果を残したいと、それだけしか考えられませんでしたから」

「熱男」パフォーマンスで有名に。

 昨シーズン、山田はプロ入り初の一軍昇格を経験した。しかし、試合での出番はないまま二軍に降格。今シーズンは6月から断続的に昇格と降格を繰り返した。

 2018年シーズン、山田を一躍有名にしたのはホークスの松田宣浩を真似た「熱男」のパフォーマンスだ。

 4度目の昇格直後の9月19日の北海道日本ハム戦、4−1とリードした4回、2打席目の攻撃でプロ入り初ホームランを記録。ベンチ前でチームメイトに迎えられると、そのままレフトスタンドのライオンズファンへ向けて、右手を突き上げるポーズを見せた。大尊敬するホークス・松田のパフォーマンスを真似たものだ。

ベンチで先輩たちが「やれ」。

 二軍戦ではたびたび見せていたパフォーマンスを一軍の大舞台でも披露するとは、当初は考えていなかったそうだ。

「まず、自分が一軍でホームランを打てるとは思っていなかったんです。それが、打てた。ベースを一周して舞い上がったままベンチに戻ってきたら、みんなが『やれ』と。先輩たちに『やれ』と言われたんだから、やらなきゃって必死でした」

 一気に山田の名前が野球ファン、そしてホークスのファンにも知れ渡った。話をしたことがない他の球団の選手からも「おまえが西武の熱男か」と声をかけられた。メディアではライオンズに関連付けて「獅子男」と形容された。「あれで名前と顔を覚えてもらえた」と笑顔で振り返る。

フォームも、声も松田そっくり。

 九州、佐賀県の出身で、物心ついたときから家族揃ってホークスのファンだった。テレビや球場で試合を見るうちに、元気で、チームを献身的に引っ張る松田の姿に心惹かれた。ヤフオクドームに試合を見にいくと、スタンドからずっと松田だけを目で追った。サード側に席をとって間近でプレーを見ることもあった。

 初めて本人に会ったのは、一昨年の自主トレーニングのとき。幼いころから松田のファンだったことを知る山川穂高が、以前から交流のある松田に山田を紹介してくれた。

「子供のころからずっと好きでした!」

 そう山田が伝えると、「うん、聞いてるよ」と優しい笑顔で答えてくれたという。まるで野球少年に戻ったような笑顔で振り返る。

「最初に話をしたときは、めちゃめちゃ緊張しましたね。でも、そのあとは球場でお会いすると、僕が松田さんに気づく前に松田さんが僕を見つけたときには、必ず松田さんのほうから声をかけてくれるんです。一流の選手は人間性も素晴らしいんだなって思いました。

 今年はシーズン最終戦のヤフオクドームで、スタメンで出させてもらったんですけど、昔、僕がワクワクしながら見ていた場所で、しかも憧れの松田さんと同じサードを守っている。そう思うと、めちゃうれしかったですね」

 似ているのはパフォーマンスだけではない。ファウルを打ったあと一本足でケンケンする仕草やバッティングフォームなどもそっくりなのだが、決して真似をしたわけではなかった。「動画を繰り返し見ている間に、体に染みついてしまった」と語る。劣勢でも大きな声を張り上げ、チームを鼓舞する山田のスタイルも、松田に憧れるうちに自然と身についた。

 山田にとって松田は常に「目標とする人」だった。

守備は源田に、打撃は山川に習う。

 2018年シーズンは山田にとって、プロ入り後、最も多くの時間を一軍で過ごした1年だった。しかし結果は19打席で1安打。ヒットはプロ入り初ホームランだけに終わった。

 それでも、来季へつながる収穫は多かった。

 課題だと言われている守備は、チームの先輩である源田壮亮に教えを乞うた。「一軍の打者は足が速いので、何歩もステップを踏んで投げていると間に合わない」とアドバイスされ、二軍降格のあとも、少ないステップで「足の運び方」を意識し、送球する練習を積んだ。

 打撃面では今シーズン、本塁打王に輝いた山川がつきっきりで練習を見てくれた。クライマックスシリーズ、ファイナルステージの試合が終わったあと、室内練習場には山田と山川がボールを打つ音が響いていた。

 クライマックスシリーズでのベンチ入りは果たせなかったが、来シーズンに向けて、宝となるであろう貴重な経験を積んだ。

 次の目標は一軍に定着し、ライオンズの優勝に貢献することだ。

「そして、将来は自分が松田さんに憧れたように、自分も子供たちに憧れてもらえるような選手になりたいです」

 もちろん、今年、叶わなかった憧れの人と同じファイナルステージで戦い、成長した姿を見せることも山田の目標のひとつである。

文=市川忍

photograph by Kyodo News


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