池田純が語るドラフト会議の考え方。大切なのは、外れ1位と成功の基準。

池田純が語るドラフト会議の考え方。大切なのは、外れ1位と成功の基準。

 10月25日(木)、プロ野球ドラフト会議が行なわれるちょうどこの日に、私にとっての「THE監督」、中畑清さんがまさかNumber Sports Business Collegeにお越しいただけるとは思いませんでした。

 私がベイスターズの球団社長で、中畑さんが監督だった時期は、ドラフトでは「とにかく即戦力!」となり、初年度は100敗するのではないかというほどチーム状況が苦しかったです。

 苦節7年の時を経てあの時から見違えるほどのチームに成長したことに、当時を思い出すと感無量ですよね。“あきらめない野球”でチーム改革がはじまり、戦い方が変わり、粘りが出て、7点差を何度もひっくり返すようになりました。戦いの裏にある「編成」「ドラフト」、高田繁GMとスカウト達の力も非常に大きくチームに作用したでしょう。

ドラフトの成功の基準は?

 ドラフトに関して、GMから数多く学ばせていただいた中でずっと心に刺さっている言葉として、「外れ1位が重要だ!」という言葉をよく思い出します。

 各球団のスカウトたちが考えた末の1位指名は競合するのが当たり前。しかもそれをくじで決めるのですから、外れても仕方ないくらいの気構えでいなければなりません。選手の人生に関わることですからくじと言えども責任がありますが、あくまで合理的客観的に経営の視点で言えば、ある種の割り切りをしないと冷静に戦略をたてられないのです。

 余談ですが、当時は控え室に抽選箱を用意し、事前にくじの雰囲気を球団のドラフトに関わるメンバーで盛り上げたりしていたこともありました。

 以前、私が独自にドラフトの成功率を計算してみたことがあります。「3年連続一軍で活躍する」というのを成功の指標の軸として全球団10年分ほど計算したのですが、ドラフト1位の成功率は50〜70%。そこから順位が1つ下がるごとに10%ずつ成功率が下がっていくんです。

 1位の契約金は8000万円から1億円、年俸も約1500万円。順位が1つ下がるごとに1000万円単位で契約金も下がっていって、年俸も1000万円を切るまでになってくる。

 FAで数億円を拠出して他球団から主力を連れてくることを考えても費用の差は明らかで、ドラフトでいかに成功する選手を獲得できるかが重要です。

ここ6年のドラフトをみて思ったこと。

 経営者として費用対効果を考えても、チーム編成としての戦力安定化を考えたときにも、ボラティリティ(シーズン中、複数年シーズンでの変動幅の激しさ)の波が少ない選手でチームのレギュラーを固定させていき、さらにそういった選手で層を厚くし、年間通して、かつ何年にもわたって、安定して戦力を計算できる状態にしたいわけです。その点でもいかに「外れ1位」が重要かを認識させられました。

 このセオリーとちょっと違うな、とDeNAの過去6年のドラフトをみて思ったことがあります。それは、GMとスカウト達が成し遂げたドラフトの成功率。上位下位の成功率ではなく、あまりドラフト順位に関係なく、必ず毎年成功の定義に当てはまる選手が2、3人出続けているのが、今の戦力、選手層につながっているのでしょう。

 年俸などを気にしなければ、チームとしては20代後半の脂の乗った、ボラティリティの少ない、計算できる選手を多く抱えるのがベスト。今の広島、ソフトバンクはそういった戦力で、チームの安定した戦力がつくられており、かつ毎年のドラフトで選手層を厚く担保し続けて、安定した強さを実現し続けている好例ですよね。

ドラフト会議はいわば“ショー”。

 ドラフトの戦略は、その状態を目指して、逆算して練るものです。そのためにはチーム編成を決める“人”が確かな戦略と目でもってある程度長い間、一貫した方針でドラフトに責任を負わなくてはいけない。

 高校生だったら3年、即戦力でも1年は二軍で下積みするくらいの最低限の余裕をもって考えると、ドラフトの成否は10年スパンで評価しなくてはいけないことだと思っていました。しかもドラフト対象選手だけでなく、現役選手の評価に関しても一貫していなければいけない。

 育成枠は70人の枠にとらわれないので自由に見えるかもしれませんが、三軍を抱えるのに2〜3億円かかると言われています。その中から一軍で活躍し、かつ成功の定義に達する選手が出る確率は数%。

 思い返してみても、育成上がりでうまくいっている選手よりもドラフト6位以内から成功する選手を挙げる方が明らかに多くなってしまいますよね。そうしたチームごとの成功率を過去のドラフト10年分で調べながら、毎年のドラフトを見てみるのもひとつの面白味かもしれません。

 ドラフト会議はいわば“ショー”。ファンの人が最初に球団の選手を様々なストーリーとともに知る機会、大きな接点の起点でもあるわけです。ここから3年後、5年後にも野球を観る文化が根付き続けるきっかけになりうる場所。数年後に野球を観ながら、今回の会議を思い出せるといいですよね。

 最後に、GM、本当に本当におつかれさまでした。

文=池田純

photograph by Yuki Suenaga


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