カープが何としても生き残るため、緒方監督に迫られる“決断”とは。

カープが何としても生き残るため、緒方監督に迫られる“決断”とは。

 激闘4時間25分。4対4の同点で今シリーズ2度目の延長戦にもつれこんだ、直後の10回裏ソフトバンクの攻撃だ。

 広島の守護神・中崎翔太投手がソフトバンクの4番・柳田悠岐外野手に投じた2球目だった。

「打った瞬間は『あっ、折れた』と思ったけど、歓声で『えっ』です。そしたらテラス席に入っていた。歓声がボールを運んでくれた」

 折れたバットで強引に運んだサヨナラアーチ。連続日本一に王手をかける一発に、打った本人の柳田は興奮が隠せない。

 継投の勝負となったシリーズ第5戦。負ければ後がなくなる広島・緒方孝市監督も、シーズン中には見せない早め早めの投手リレーで勝負をかけた。

 1点リードした5回に先発の大瀬良大地投手がピンチを招くと、2番手のジョニー・ヘルウェグ投手にスイッチ。6回から一岡竜司投手を投入したが、2死から今宮健太内野手に二塁打を許すと、すかさずこのシリーズのキーマンとなるサウスポーのセットアッパー、ヘロニモ・フランスア投手を投入した。

 ここから回またぎのフランスアで8回までしのいで、9回に守護神・中崎投入という青写真。しかし、誤算はフランスアが7回に明石健志内野手の一発を浴びて同点に追いつかれてしまったことだった。 

迫られる、緒方監督の決断とは?

 それでも緒方監督は延長戦を睨んでフランスアを9回のマウンドに立たせたが、内野安打と送りバントで1死二塁となったところで中崎がマウンドに。この回は後続を断ったが、回またぎの10回に先頭打者だった柳田の一発を食らった。

「甘かったです。ど真ん中でした」

 その1球を振り返った右腕だが、絶対守護神が浴びた一撃は、チームにとってのダメージが重い。

「ウチとしては手を尽くしたから。あと(6戦以降)は注ぎ込んでいくしかない」

 投手陣を預かる畝龍実投手コーチが、試合後にこう絞り出したように、広島に戻った6戦以降は投手陣総動員で、明日なき戦いを演じるしかなくなった。

 そしてもう1つ、その総動員の中で緒方監督が迫られる決断がある。

 それはこの日、サヨナラ弾を食らった中崎を、そのまま守護神で起用するのか。

 それとも明石の一発は浴びたが、ソフトバンク打線が攻略に手こずるフランスアをクローザーに持ってくるのかということだ。

守護神が守護神でなくなる時。

 シーズンでずっと試合の最後を任せてきた守護神を外すことは、監督にとっては大きな決断である。

 特に長丁場のペナントレースを勝ち抜くためには、絶対守護神の存在は不可欠だ。だからこそ監督もチームの選手たちも、そしてファンだって、そのクローザーに託す思いは1つなのである。

「あいつで負けたら仕方ない」

 そういう守護神がいたからこそ、広島もソフトバンクもこの舞台にいるともいえる。

 だが、彼らとてマウンドに立ったときに常に相手打者を封じ込めるわけではない。

 この日の中崎のような失敗は必ずある。

 ただ、日本シリーズという短期決戦では、そこで監督が見分けなければならないことがあるのだ。その失敗が果たして一過性のものなのか、それとも状態が落ちていて試合の最後を託すには厳しい状況なのか、ということだ。

守護神で、まさかのサヨナラ負け。

 2012年の巨人と日本ハムの日本シリーズを思い出す。

 この年の巨人は前年の守護神・久保裕也投手が故障で、西村健太朗投手に開幕から抑え役が託された。その後、一度は中継ぎに回ることもあったが、スコット・マシソン投手の故障で7月末に再びクローザーに戻った西村は、最終的には32セーブを挙げる大車輪の活躍を見せた。そうして原巨人にとっては3年ぶりとなるリーグ制覇の原動力となったのである。

 そうして迎えた日本シリーズだった。

 第4戦に同点の延長12回に登板した西村がサヨナラ負けを喫した。すると原辰徳監督は王手をかけた第6戦では、4対3の1点差で迎えた9回のマウンドに西村を指名することはなかった。

 シリーズではセットアッパー役だった左腕・山口鉄也投手をクローザーとして起用して逃げ切り、3年ぶりの日本一奪回を遂げたのである。

原監督が下した守護神交代の真意。

「健太朗がいなかったら、我々はこの舞台に立てなかったかもしれない。しかし最後はいま、最も信頼できる投手をマウンドに送った。日本シリーズとはそういうものなんです。何が起こるか分からないですから」

 原監督はこのときの守護神交代の決断を、こう振り返っている。

 中崎が浴びたサヨナラ弾の内容をどう見るかだろう。

 さらにはこのシリーズでのフランスアと中崎のソフトバンク打線との兼ね合いを、どう判断するのかということだ。

 1つだけフランスアに利点があるとすれば、8月にはプロ野球タイ記録の月間18試合登板を達成し、その中で防御率0.51をマークしたタフネスぶりだ。

 回またぎもできるし、ある程度の連投が利くことは分かっている。そう考えれば8回から2イニングをフランスアに任せるという選択は、もちろん指揮官の頭にあるはずなのだ。多少の酷使にも耐えられるこの左腕をどう有効に活用できるか。それが広島の逆転日本一への扉を開く、1つのカギになることは間違いない。

いつもと違う野球になるか!?

 負ければ終戦。広島が勝ち続けて逆転日本一を手にするとしても、残りは3試合である。

 好調な4番・鈴木誠也外野手に加えて、第5戦ではようやく丸佳浩外野手にも一発が出て復調の兆しが見えてきた。

 第2戦で好投したクリス・ジョンソン投手が先発する第6戦を凌げば、第7戦からは大瀬良もブルペンでリリーフ待機できる。投手陣も総力戦を挑めるのだ。

 だから何がなんでも生き残るために第6戦を取らなければならない。そこでは普段とは違う野球が、広島の活路を開くはずである。

文=鷲田康

photograph by Naoya Sanuki


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