ドジャース“マン振り野球”の中でマエケンの好守にプロの技を見た。

ドジャース“マン振り野球”の中でマエケンの好守にプロの技を見た。

 114回目のワールドシリーズはレッドソックスが4勝1敗でドジャースを破り、5年ぶり9回目のワールドチャンピオンに輝いた。21世紀に入ってから4回目の世界一はジャイアンツの3回を抜き最多となり、この間の成績は16勝3敗となった。8割4分2厘の勝率はまさに驚異的と言える。

 今回のシリーズを全米テレビ中継したFOXスポーツの解説者ジョン・スモルツ氏は感想を問われこんな言葉を残した。

「レッドソックスは素晴らしい野球をしたね。アレックス・コーラ監督の戦術、選手掌握力はともに優れていた。ドジャースはナ・リーグチャンピオンに相応しい野球ではなかった」

 現役時代に通算213勝と154セーブを挙げ、野球殿堂入りも果たしたレジェンドが嘆いたナ・リーグチャンピオンに相応しくない野球、それはドジャースの攻撃を指していた。

実況が繰り返す「Big Swing」。

 第3戦。18イニング、7時間20分の戦いはともにシリーズ史上最長となった。戦う選手たちは最後まで全力を尽くし、まさに死闘を演じたと感じるが、ドジャース攻撃陣のアプローチは昨今のメジャーリーグの野球を象徴していた。

「Big Swing!」

 FOXスポーツで実況を担当したジョー・バック氏はドジャースの攻撃中にこの言葉を繰り返した。バック氏は親子2代に渡るスポーツ実況アナウンサー。アメリカで最も上手なテレビ・スポーツ・アナウンサーの評価もある。

 その彼が「Big Swing!」と語り続けた意味は何なのか。直接的に批判する言い回しは避けたものの、何がなんでも本塁打狙いの“マン振り野球”に嫌悪感を抱いていたのは間違いない。

フライボール革命の弊害。

 この試合、ドジャースは無死一塁の好機を5回、7回、9回、13回と作り出した。だが、彼らはそのすべての場面で次打者が得点圏となる状況を作り出せなかった。フライアウトが3、三振が1。「Big Swing!」を繰り返した結果、総アウト数に対するフライアウトと三振の割合は両チームの間にこれだけの差が生まれた。

レッドソックス 35/54 64.8%
ドジャース   41/51 80.4%

 昨年もリーグ4位の221本塁打を放ったドジャースだが、ここまで“マン振り野球”は顕著ではなかった。脇を固めるユーティリティーのキケ・ヘルナンデスやオースティン・バーンズ捕手などは進塁打や逆方向の打撃を実践し、身の丈にあったアプローチも見せていた。

 ところが、今年はジャスティン・ターナー内野手を除く全員が常に本塁打狙いである。ファーハン・ザイディGMが推進する『フライボール革命』や『バレルゾーン』の理論を忠実に実践している。その中で唯一、状況に応じた打撃を続けるチームの主砲ターナーの打撃をバック氏は実況でこう表現した。

「Best Hitter in the league」

マエケンが示したプロの技。

 選手が持つ才能や技術は間違いなく世界最高峰。なのに、味気ない野球に特化していくメジャーリーグの流れ。その中でこの第3戦、前田健太が“日本野球ここにあり!”とも言うべきプロの技を見せてくれた。

 同点の15回。7人目として登板した前田はいきなり無死一、二塁のピンチを招いた。打者は8番のクリスチャン・バスケス。ドジャースならばここで犠打のサインはないが、レッドソックスならば当たり前。前田は内角に球威を殺した直球を投げ込むと同時に三塁側へダッシュ。バント処理すると振り向きざまに三塁へ矢のようなストライク送球で封殺。流れに乗った前田はその後5者連続三振の快投を見せた。

 すべてのプレーがパーフェクトだったスーパー・ファンダメンタルにも前田は涼しい顔で言った。

「相手がバントをやりやすいような球をしっかり投げて、三塁側にしてもらうっていうのが一番大事なので。投げることに集中というよりも、ボールを取りにいくことに集中してアウトにできたので、そこはすごく狙い通り。やらせてアウトを取るっていうのは僕の中での理想だったので、うまくいきましたね」

新時代にマッチした融合性を。

 先のジョン・スモルツ氏は戦前から今のデータ野球に警鐘を鳴らしていた。全国紙USA TODAYのインタビューで力説していた。

「三振が多すぎる上に本塁打が出すぎる。極端な守備シフトは野球を壊す。動きのない試合は野球本来の素晴らしさとドラマチック性を奪っている」

 コンピューターが導き出したデータ野球を全否定するつもりはない。

 本塁打を狙っていい場面で打つ本塁打こそプロの技であり華である。それと同時に野球というスポーツには豊潤な歴史がある。故きを温ねて新しきを知る。新時代にマッチした融合性を求めたい。

文=笹田幸嗣

photograph by Getty Images


関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索