日本でバレー国際大会ができない?中国など海外での人気と放映権料。

日本でバレー国際大会ができない?中国など海外での人気と放映権料。

 9月29日から10月20日まで日本で開催された女子バレーボールの世界選手権は、セルビアの初優勝で幕を閉じた。

 中田久美監督率いる日本は6位。目標としていたメダルには届かず、上位5チームとの力の差が浮き彫りになったが、粘り強く拾って勝機を見出す戦いぶりや、古賀紗理那、黒後愛といった若きエース候補の奮闘は見る者を惹き付けた。日に日に会場の熱気は高まり、2次ラウンド後半以降、日本戦は平日でも満員となった。

 そんな中、日本バレーボール協会(JVA)と大会を共催するTBSテレビに、大幅な赤字が見込まれると報じられた。

 もちろん赤字より黒字になるに越したことはないが、赤字だからこの大会は失敗だったという訳でもない。

 むしろ日本で世界最高峰の戦いが見られたことは幸運だった。特に準決勝のセルビア対オランダ、イタリア対中国、決勝のセルビア対イタリアは、世界トップレベルの個々の能力と互いの戦術、駆け引きがぶつかり合う見ごたえのある試合だった。

TBS関係者が語っていたこと。

 決勝と3位決定戦が行われた大会最終日の10月20日は、日本の試合がなかったにも関わらず、横浜アリーナはほぼ満員となった。

 もちろん、日本が残ることを期待してチケットを買っていた人も多かったと予想されるが、試合中の会場の熱気や、試合後も表彰式まで多くの観客が残っていたことからも、この日観戦した人は十分に楽しめたのではと想像できる。そうした人々が、今後Vリーグの試合や、来年の国際大会に再び足を運んでくれれば、この先につながっていく。

 TBSの関係者はこう語る。

「今回は日本戦の中継の冒頭やニュース番組などで、“頑張れニッポン”だけでなく、海外のチームや選手のことも力を入れて紹介していました。決勝で会場がいっぱいになったのは、それが花開いた部分もあったと思っています。

 そもそも、儲かるからやっているというわけではない。僕らの思いとしては、バレーボールをトップスポーツにしたい、一番人気のスポーツにしたい。そのためにはやはりテレビで放映しないと。ゴールデンタイムで放送したことで、多くの人が見てくれて、バレーボール面白いな、中田さん応援したいな、という人が増えたことは間違いないと思うんです」

視聴率自体は好調だった。

 直接的な収益だけを見れば赤字だが、波及効果まで含めると、そうは言い切れないという声もある。

 今大会の日本戦の視聴率は、3次ラウンド進出をかけたブラジル戦で18.2%という数字を記録するなど好調だった。大会が盛り上がり、視聴率がよければ、局のステータスや広告価値が上がり、今後の局全体のスポンサー収入が増えることにつながる。

 実際、オリンピックやサッカーのワールドカップも、テレビ局にとっては、単体で計算すれば赤字だが、波及効果を含めると最終的にはプラスになると期待される。スポーツのソフトはそうした捉え方をされているという。

 来年、バレーボールのワールドカップを共催するフジテレビの関係者はこう話す。

「スポーツのソフトが多種多様化している中で、オリンピックではない大会で、今回バレーが18%以上取ったということには、僕らもすごく勇気づけられました。打ち出しかたによってはこんな数字が出るんだと。危機感は持っていますが、悲観はしていません」

日本以外の国も積極的に招致。

 ただ、バレーの国際大会の放映権料が高騰していることや、スポンサー収入で苦戦していることも事実。その要因はどこにあるのだろうか。

 放映権料の高騰の原因の1つには、チャレンジシステムなどの新システムや機器の導入による経費の増加が挙げられる。そして何より、海外でのバレーボール人気の高まりと経済状況の変化による影響が大きい。

 かつては、バレーの国際大会の開催に積極的に手を挙げるのは日本ぐらいだった。しかし今は違う。

 男子は、9月に行われた世界選手権をイタリアとブルガリアで共催したり、前回大会はポーランドで行われたように、ヨーロッパでの熱が高い。女子の場合は、ヨーロッパに加え、近年は女子バレー人気が非常に高く経済状況もいい中国やタイが積極的に招致に乗り出している。

2022年以降は競争入札に。

 そんな中、2012年に就任した国際バレーボール連盟(FIVB)のアリ・グラサ会長は、次回の2022年以降、世界選手権の開催国を競争入札で決めるという方針を打ち出した。ワールドカップについても、1977年から来年の2019年まで継続的に日本でフジテレビが共催してきたが、次回の2023年からは競争入札となる。

 バレーボールに限らず、スポーツに投資できる額は、今、中国などの伸びに比べて、日本はあまり伸びていない。そうなるとFIVBとしては、日本からどれだけ集められるかを考えるよりも、世界中から募ってより条件のいい相手を選んだほうが潤う、ということのようだ。

 海外でバレーの価値が上がっている一方、日本国内では、フィギュアスケートや卓球、バドミントンなど、国際競争力の高い競技が増えていることで、バレーの位置づけが下がり、スポンサー収入などに影響している。

世界に勝てる競技であること。

 JVAの嶋岡健治会長は言う。

「やはり強くないといけない。今、卓球やバドミントンが世界と伍して戦える競技になっている。その中で、バレーの価値がどうなの? というところはある。やはり国民の関心というのは強いところに向かいますから。強いから見てみよう、応援に行こう、と。もちろん底辺から作っていくことも大事ですが、トップが強いと、自然とそれについていくもの。やはり(代表に)憧れがないといけない」

 競争入札になれば、2022年以降、日本で三大大会(五輪、世界選手権、ワールドカップ)が開催されなくなる可能性がある。

 野球、サッカー以外で、これほど長きに渡ってゴールデンタイムにテレビ放送されてきたスポーツはない。しかし日本のバレー界はそれを当たり前のように捉えてしまい、その好機を、新たなサポーターの獲得や、競技の普及、国内リーグの発展に十分に活かしてこられなかった。それが非常に悔やまれる。

文=米虫紀子

photograph by AFLO


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