日本がエディーとの対戦を前に、オールブラックスから学んだ教訓。

日本がエディーとの対戦を前に、オールブラックスから学んだ教訓。

 試合前、オールブラックスのバックスリー(両ウィングとフルバック)はハイパントの処理の練習を念入りに行なっていた。

 日本がキックを織り込んでくるのは想定済みで、それに対する丹念な処理、そこを起点としたカウンターアタックのシナリオを書いているのは明白だった。

 惚れ惚れしたのは、練習で繰り出されるハイパントの美しさだった。

 滞空時間が長く、距離もドンピシャ。万事に曖昧さはない。

 ハイパントの軌跡を目で追っていると、2011年のラグビー・ワールドカップ・ニュージーランド大会の取材に行ったときのことを思い出した。

 登校時にラグビーボールをバウンドさせながら歩いている小学生や、放課後、キックの高さを競っている子どもたち。ボールが体の一部になるよう、幼いころから楕円球と戯れているのだ。

ソフトだったハイパント。

 11月3日、日本vs.ニュージーランド。

 14時45分キックオフ。

 試合が始まってみると、日本のハイパントはソフトだった。滞空時間、蹴ったエリアも曖昧だった。

 目的意識を欠いたボールを受けるたび、オールブラックスの選手たちは嬉々として走り出し、あるいはショートパントやゴロパントを蹴っては、そのボールを自分の胸にすっぽりと収めて、また自由自在に走り出すのだった。

 まるで、ジャパンのキックは相手に餌を与えているようだった。

 ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチは、「特に後半は不必要なキックが多かった。もっと、ポゼッションを高めていれば、違った展開になっていただろう」と語った。

トライはもう少し防げたはず。

 ティア1、ラグビーの一等国相手にみすみす餌を与えている余裕は、当然のことながらない。

 スコアは31対69。

 31点を積み上げた日本のトライはたしかに見事だったが、曖昧な状態からプレゼントしたかのようなトライは、もう少し防げた気がする。

 曖昧さを生んだのが、選手の判断なのか、それとも指示の不徹底なのか。原因の究明は、残り2戦のテストマッチを見て総合的に判断したい。

 日本の次戦は11月17日、ロンドンのトゥイッケナムで行なわれるイングランド戦である。敵将はいうまでもなく、エディー・ジョーンズ氏だ。

エディーは弱点を徹底的に突く。

 6月末、沖縄で高校生相手にラグビーのクリニックを実施したジョーンズ氏は、日本戦の展望を語った。

「11月のトゥイッケナム、ジャパンの諸君は是が非でもイングランドを倒したいでしょう。もちろん、簡単なことではありませんよ。イングランドも十分な準備をしますから」

 なにせ日本の事情に通じている戦略家のジョーンズ氏のこと、日本の弱点を徹底的に暴いてくるだろう。

 曖昧なキックに対する、厳しい処罰。上がりの速いジャパンのディフェンスに対し、セカンド・フェイズでの仕掛けの準備。セットプレーでは、スクラムでは反則をもらいにいき、ラインアウトではサイズ不足に悩むジャパンを苦しめるに違いない。

 ただし、日本には2週間の準備期間がある。攻防の焦点はハッキリしているし、準備はしやすい。また、コンディションも上向くはずだ。

自分たちの時間帯さえ持てば。

 オールブラックス戦での収穫は、トライは意図したアタックから取り切ったものもあり、自分たちの時間帯さえ持てば、スコアは可能だろう。

 また、昨年の11月のテストマッチ・シリーズでは、フランス戦で引き分けに持ちこんだ成功体験もある(本来であれば、勝てた試合だった)。急激にチーム力が向上することもあり得るだけに、首脳陣の手腕が問われるところだ。

 いずれにせよ、いちばん相手にしたくない敵将を相手に、曖昧さ、ソフトさを排除できるかどうか。

 来年のワールドカップに向け、期待値を下げてしまうことは絶対に避けなければならない。

文=生島淳

photograph by Itaru Chiba


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