谷原秀人、欧州ツアーでの日常。「靴下とパンツを毎日洗ってる」

谷原秀人、欧州ツアーでの日常。「靴下とパンツを毎日洗ってる」

 ゴルフクラブの手で握る部分、いわゆる“グリップ”は消耗品だ。

 ゴムや樹脂を素材にするグリップは、時間の経過とともに摩耗し、プロゴルファーなら数カ月に1回のペースで新しいものに入れ替える。それぞれのスイングや感覚にフィットさせるべく、形状や太さが違ったり、入れ方(装着のさせ方)にこだわりがあったりと様々だ。

 素人でも交換が可能だが、意外と手間と時間がかかる。古いものにカッターで切り込みを入れて外し、シャフトについている両面テープを交換して新しいものを装着。その際に限りなく「真っすぐ」にしなければ、実際に打つ時に気になって仕方がない。

 だから、たくさんのアマチュアも町場のゴルフショップでお願いする。

自らネットショッピングで。

 ほとんどのプロゴルファーは、この作業を各メーカーの用具担当者にお任せするのだが、谷原秀人はこの秋、宿舎でひとり格闘していた。最近はパター用のグリップに多くの種類があり、合うものを選ぶだけで一苦労。「コレ、イイかも」と取り寄せた10数本の多くは自らインターネットショッピングで手に入れたものだった。

「(両面)テープをはがして、つけて取り替えるんだけど、なかなかキレイにできなくて。繰り返すうちに、もう『まあ、いいや。グリップなんかハマってりゃいいや……』ってさ」

 谷原は昨年から、欧州ツアーの一員として世界を巡っている。2018年はここまで日本ツアーに1試合も出場していない。新しい主戦場のシード権をまた確保し、'19年シーズンで3年目を迎えることが決まっている。

 世界各国を巡る欧州ツアーで用具のサポートを受けることは簡単ではない。10月末、トルコに来てくれた契約メーカーの担当者にさっそくグリップ交換をお願いし、キレイに付け替えてもらった。

環境もコースも日本と違う。

 かねて谷原の“ネットショッピング好き”はゴルフ界では知られたところで、賞金王を争った'16年にはアマチュア向けに制作された、飛距離アップのDVDを購入して教材にしたことが話題になった。

「最近はスパイクもネットで買って、日本から持ってきてもらったりしてるよ。いろいろ試せていい」

 研究熱心な姿勢の現れではある。ただ、欧州ではそうせざるを得ない理由もある。日本でのように、日々、手取り足取りのサポートがあるわけではない。プレーする国が毎週変わり、その都度難しい戦いを強いられる。そして、周りに実力者が多いのも前提の上だ。

「ヨーロッパのコースは本当に狭いところばかり。それでもみんな、ボールを“置きに”いかない。しっかり振りきって、まっすぐ飛ばしてくる」

 上背があり、特に欧州出身選手は上半身が強靭。それでいて、グリーン上でも技術が光る。谷原は本来、パッティングで勝負するプレーヤー。それが戦いの場を変えて苦しみが始まった。

「日本みたいなキレイなグリーンは入るけど、重いグリーンではまったく入らない。“免疫”がない。慣れなんだろうなあ。ラインの読みなのか、打ち方なのか……。なかなか感覚が出ない」

転戦経費は米ツアーより高い。

 もちろん、フィールドでの悩みはプロゴルファーに付きまとって然るべきではある。ただ同じくらい、コース外での気苦労が多い。それは20代の時に体験した米ツアーで感じたのとはまた違うものだ。

 転戦経費はおそらく米ツアーよりも高くつく。国をまたぐフライトが続き、宿泊代も日本や米国と同じ質のホテルを選ぶならより高額になる。その質もまた問題で、例えばシャワーの水圧が総じて弱い……。一泊、二泊と我慢すればいいわけではないから大変だ。

「イタリアで泊ったところなんか、チョロチョロ……だった。そういう時はゴルフ場で浴びて帰る。なぜかゴルフ場はどこもちゃんと出るんだよね」

 日本との往復を繰り返すキャディやマネージャーらと、外国のどこかで落ち合うことも増えた。つい先日も、トルコのイスタンブール空港で、係員のミスリードからターミナルをたらい回しにされ、ヘトヘトになったばかりだった。大きく、重たいスーツケースを転がしながら……。

ジャスティン・ローズもそう。

 日本でエリート選手だった頃とはちょっと違う。個人スポーツのゴルフでは、それぞれのプロの周りに多くのサポートスタッフが日常的に帯同する。それこそ大名行列よろしく、と受け取られる選手もいる。

 谷原は欧州に来て、分かった。

「移動が大変? いや、でもね、みんなそうしているから。ジャスティンもひとりでやっている」

 現在の世界ランキング1位、イギリスのジャスティン・ローズのことだ。

「南アフリカで、ひとりでスーツケースをふたつ持って、飛行場を歩いていたんだ。『このクラスで、普通にこれをやるんだ……。みんなタフだわなあ』って思う。試合が終わってすぐ移動をして、翌朝にコースについたら練習をする。それが当たり前。飛行機でしか寝ていない。全員ではないけれど、こっちのやつらはそれがフツーなんだよね」

転戦するうちに荷物は少なく。

 転戦を繰り返すうちに、谷原の荷物は少なくなっているそうだ。「(フライトで)すぐに重量オーバーの料金を取られるからさ。ポロシャツは6枚くらい、ズボンも4、5枚で何週間もやる。パンツなんか3枚あれば十分。靴下とパンツは毎日、自分で石鹸で洗ってるよ」と笑う。

「ゴルフがうまくなりたい」

 その思いだけで海を渡ってきた。不便さもいとわない。荷物も、気持ちも身軽にさせるのは、別の世界に身を置いて得た実体験に他ならない。

「選手もそうだし、コースもそう。環境がそうさせてくれる。それは間違いない」

 11月16日に40歳になる。

 若い時の苦労は買ってでもせよ―――とは言われるけれど、どれだけ年を重ねてもそれをやめない人もいる。

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文=桂川洋一

photograph by Yoichi Katsuragawa


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