バルサ化神戸、守備はどうする?リージョ監督は伊野波雅彦に託す。

バルサ化神戸、守備はどうする?リージョ監督は伊野波雅彦に託す。

 J1残留を争うサバイバルマッチは、ヴィッセル神戸に軍配が上がった。

 11月3日、秋晴れの豊田スタジアムには、41044人のファンが集まった。名古屋グランパスにとっては、豊田スタジアムでの今シーズンのラストゲーム。残留争いからの脱出を図るためにも満員のファンの前で勝利を挙げることが必須だった。

 神戸にとっても、名古屋戦は非常に重要な試合だった。

 前節(30節)の川崎戦は3−1とリードしながら、最終的に4点を奪われ、3−5と屈辱的な逆転負けを喫した。これ以前も27節の浦和戦は4失点、28節の鹿島戦は5失点と大量失点で敗戦した。勝利は8月19日の湘南戦以来7試合なく、その結果、残留争いに巻き込まれた。

 もしこの一戦に敗れると名古屋に勝ち点で並ばれ、残留争いでシリアスな状況に陥る。厳しい状況の中、これまでとは見違える展開を作った影の立役者は伊野波雅彦だった。

バルサ化と守備での課題点。

 神戸は「バルセロナ化」を推し進めている最中だが、相手にいくべきところで厳しくいききれず、自由を与え過ぎていた。アンドレス・イニエスタ、ルーカス・ポドルスキというワールドクラスがいるからこそ、主導権を握ろうとの意識が強くなり過ぎたのかもしれない。

 前述した試合で大量失点したのは、プレーに甘さが生じていたからだろう。誰が守備のスイッチを入れるかが決まらず、中盤から前線の連動性が高まらなかった。

 また、守備ラインが非常に低かった。

 とりわけ川崎戦は、個人技術の高い相手に対して最終ラインがズルズルと後退。ボックス内でワンツーで崩されるシーンもあった。それもあって川崎戦から名古屋戦までの期間は、守備の修正に重きを置いて練習したのだという。

「川崎戦の敗戦のショックはなく、すごく良い雰囲気、練習ができた。その状態のまま試合に入れた」

 ベンチから見ていた那須大亮の言葉通り、この日の神戸は攻守ともにアグレッシブだった。大崎玲央が統率するディフェンスラインはハイラインを敷き、全体をコンパクトに維持していた。

積極的にスイッチを入れよう。

 そこで効いていたのが、伊野波のプレーだ。前に出て行って相手にプレッシャーをかけ、守備のスイッチを入れた。相手に厳しく当たるなど、持ち味である球際の強さも見せた。

 前線の選手がボールを失っても、伊野波が全力で走ってアプローチした。奪われたら素早く取り返す役割を務めていたのだ。そうしてゲームの主導権を握り、前半は名古屋にほとんどサッカーをさせなかった。

「大量失点して負けた試合は誰が守備のスイッチを入れるのか不明で、守備が中途半端になっていたし、相手に自由にやらせ過ぎた。攻守のメリハリがなかったんで、まずは自分が守備のスイッチを入れようと積極的にいきました」

 伊野波ら中盤の激しい守備に引っ張られたのか、普段は守備が期待できないポドルスキも回数こそ少ないが自陣まで戻った。今シーズンの最終盤に来てベテランのプレーがチームに活気を与え、守備の修正を可能にしたわけだ。

ボランチでプレーしてみて。

 とはいえ伊野波にとっては、納得のいくシーズンではなかった。

 序盤戦の5節、柏戦までは試合に絡んでいたが、その後は出場機会に恵まれず、10月6日の長崎戦にようやく出番が回ってきた。それもラスト10分での出場で、続く川崎戦も19分間の出場に終わった。それでも腐らずに、練習から球際の激しさを見せて、アグレッシブな守備を監督にアピールした。

 そして、名古屋戦のスタメンを勝ち取った。

「リージョ監督になってからボランチでしかプレーしていないので、今までと求められているものが違った。だけど、試合に出れなかった時にアプローチしたものを少しずつ試合に活かせているし、この試合に出られて今までの期間がムダではなかったなと感じています」

 ブラジルW杯のメンバーにもなったベテランだが、伊野波は出場した時のために、自分を高める努力を怠らなかった。だからこそ、久しぶりの出場機会で以前と異なるポジションでも目に見えた結果を出せた。

リージョ監督も名指しで称賛。

 リージョ監督は試合後「普段、個人名を上げることはないが」と前置きしながらも「伊野波はチームに熱を加えてくれた」とベテラン選手のプレーを絶賛した。

 自身が指揮する3試合目で“伊野波”という手を打ち、大量失点を防いだリージョ監督。ただもう少し早く伊野波や那須らが試合に出ていれば、ここまで苦しまなかったかもしれないが。

「まだまだ厳しい状況がつづきますが、今日の勝利は(残留に向けて)大きい。これで、次もいい感じで戦えると思います」

 那須は、ホッとした表情でそう言った。

 後半の立ち上がりに失点したように、まだリズムにムラがある。だが、神戸は勝ち点40の11位。自動降格圏の17位・柏レイソルと勝ち点差は7に開き、残り3試合、残留の光がハッキリと見えてきた。

「バルサ化」はまだ遠いが、伊野波のプレーはチームに自信とひとつの真理を与えてくれたはずだ。輝く選手の背後には泥をかぶる選手がいる。その選手がいかに重要であるか。

 それを伊野波起用で証明し、結果を出したリージョ監督と神戸。

 もう、うしろを振り返る必要はないだろう。

文=佐藤俊

photograph by VISSEL KOBE


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