ルール未定のメイウェザー狂騒曲。那須川天心と大晦日RIZINで対戦!

ルール未定のメイウェザー狂騒曲。那須川天心と大晦日RIZINで対戦!

「日本に来るのは8回〜10回目かな。また来ることができて嬉しい。日本は大好きだし、しかも自分にとってプロで初めての海外での試合が日本になった」

 日本マット初参戦の選手として、ごくごく常識的なコメントである。なのにフラッシュとシャッター音が止まらない。何しろ言葉の主が、ボクシング界のリビング・レジェンドなのだ。

 フロイド・メイウェザーJr.はキャリア50戦全勝、世界5階級制覇を成し遂げたグレート・チャンプであり、スポーツ界で最も金を稼ぐ男であり、同時にスキャンダラスな存在でもある。

 暴言のみならず暴力事件を起こしたこともあり、またポイント重視の戦略が批判されることもある。

 昨年はMMAファイターのコナー・マクレガーとボクシングで対戦し、KO勝利を収めている。以前にはプロレス=スポーツ・エンターテインメント団体WWEのリングに上がったことも。単に優れたアスリートというだけでなく、良くも悪くも耳目を集めてしまうのがメイウェザーだ。

メイウェザーと那須川、高田本部長。

 日本でボクシングの試合を行なうということでも大ニュースだったはずだが、11月5日に彼が出席した記者会見は、MMAを中心とする格闘技イベントRIZINの大晦日大会(さいたまスーパーアリーナ)に関するものだった。

 これまで桜庭和志やクロン・グレイシーが参戦し、RENAがブレイクを果たし、ボブ・サップvs.大砂嵐も行なわれたリングにメイウェザーが登場するのだ。

 しかも対戦相手はキックボクシングの“神童”那須川天心だ。こちらは20歳にして32戦全勝(MMA、ミックスルール含む)である。

 会見の席上にメイウェザーと那須川、さらには高田延彦統括本部長までいる光景は、異次元すぎて何が起きているか把握するのに時間がかかってしまった。

那須川「パンチは当たりそう」。

 こんなこと、少し前までまったく想像もできなかった。実際、メイウェザー側からRIZINに打診があったのは10月に入ってからだという。那須川自身も「噂くらい(で終わる話)だろうなと」思っていたそうだ。

 ところが本当に発表されてしまった。

「フロイド・メイウェザーJr.対那須川天心」

 この字面だけでも頭がクラクラする。いや、これから大みそかまでずっと「どうなってんだ?」、「どうなるんだ?」と思わされ続けることになるだろう。気になるのはどちらが勝つか、だけではない。まずはその前提だ。

 現状、正式に決まっているのは「やる」ということだけ。まず実現させることが最優先というのが榊原信行実行委員長のスタンスだ。ルールも、契約体重もこれから決めるという。那須川は57〜60kgといったところで闘ってきた選手であり、メイウェザーは最終的にスーパー・ウェルター級(69.85kg)のチャンピオンになっているから体重差は大きい。

「ボクシングルールでもいいです」と言ったのは那須川だ。以前から、彼のモットーは「誰もできないことをやる、誰も行ったことがないところに行く」だった。さらには「パンチは当たりそう」とまで。

立ち技特別ルールの落としどころは。

 これに笑顔で拍手を送ったメイウェザーは、ルールに関しての希望や注文を口にしなかった。

「ルールはこれから数週間かけて話し合っていくことになる。きっとRIZIN側がいいアイディアを持っているはずだ。自分としては、みんなを楽しませたい」

 とはいえ、榊原氏によればMMAルールでの対戦はないという。氏の表現を借りれば「スペシャルスタンディングバウト」。要は既存のジャンル、カテゴリーに属さない“他流試合”用特別ルールである。

 仮に蹴り技が「あり」になったとしても、それは全面解禁なのかどうか。メイウェザー側が「ローキックだけ禁止に」といった条件を付けてくる可能性もある。

「ボクシング」とは謳えない。

 またパンチだけのルールになったとしても、「ボクシングルール」「ボクシングマッチ」とは謳えないというのがRIZINの見解だ。

 コミッションの許可がない試合であり「たとえばバックブローをありにしたらどうなるか。那須川がボクシングシューズを履くのも考えにくい。その時点でボクシングルールではないわけです」(榊原)。

 まずは「実現ありき」であって、それがどの競技カテゴリに属するのかを重視しないのがRIZINというイベントだ。だから安心ができない。それも含めて主催者の狙いではあるのだろう。

 ファンの見方もさまざまだ。那須川がメイウェザーにパンチ勝負を挑むことにロマンを感じる者もいるし、それでは差がありすぎて興ざめだと感じる者も。むしろメイウェザーをローキックで蹴り潰すことこそ“他流試合”の醍醐味だという見方もできる。

10kgほど体重差があっても。

 いやそもそも、10kgほども体重が違う他ジャンルの選手がいきなりメイウェザーと闘えてしまうこと自体がおかしいという人もいるだろう。それがスポーツとしての真っ当な考え方だ。

 榊原氏はグローブハンデ戦も考えているそうだが、10kg重い選手のパンチを頭部に食らった場合のダメージをどう判断するのかという問題もある。70kg対60kgは、120kg対110kgとは1kgの重みが違う。

 だがそれでも、だ。メイウェザー対那須川が見たいか見たくないかと聞かれたら、それは見たいのである。世界5階級王者にパンチだけの勝負を挑めば不利に違いないが「飛び飛び飛び飛び飛び飛び級くらい」の一戦に向けて「拳ひとつで世界を変えてみせる」と意気込む若者に頼もしさを感じないわけがない。

世界に向けた世紀の一戦を日本で。

 榊原氏は、このカード、特にメイウェザーの存在を従来のような大晦日のテレビコンテンツとして考えた場合に「お茶の間向けではないでしょう」としている。むしろ相手は世界市場ではないか。

 その一方で「とてつもないことが起こってるということを、日本のみなさんにも伝えていけたら」。

 ただならぬ雰囲気は、会見の時点で感じられた。写真撮影の段取りをめぐって怒号を発するカメラマンがいる。メイウェザーはといえば段取りを無視して途中で撮影を切り上げ、控室へと戻っていった。大みそかまで続く狂騒曲の始まりだ。

文=橋本宗洋

photograph by Susumu Nagao


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