出雲&全日本から読む箱根駅伝。「一強」青学大を脅かすのはどこだ。

出雲&全日本から読む箱根駅伝。「一強」青学大を脅かすのはどこだ。

 2019年の第95回箱根駅伝に向けて、勢力図がハッキリと見えてきた。

 現状では、出雲駅伝、全日本大学駅伝で優勝した青学大が突出した強さを見せている。「一強」と呼んでいいのかもしれない。箱根駅伝5連覇、そして一昨年度に続いての学生駅伝三冠も手の届くところにある。

 今季の青学大の強さは、どこにあるのか。

 戦力を分析していくと、学生長距離界を代表するようなトップスターはいない。しかし、5000mで部内上位20名以上が14分10秒以内のタイムを持っており、おそらく他校ならばエース区間を走れる選手たちが、日夜激しい競争を繰り広げているのだ。

 レギュラー争いが激しいだけに、選手にもそれぞれ特色がある。出雲の1区で区間賞を獲得した橋詰大慧(4年)は、冷静な判断力が持ち味。主将の森田歩希(4年)は全日本の7区で先行する東海大を逆転し、優勝を決定づけたが、これまでの駅伝では外したことが一度もない安定感がある。橋詰、森田と並んで原晋監督が「三本柱」のひとりに挙げる鈴木塁人(3年)も、向上心が旺盛で、エース区間を安心して任せることが出来る。

 加えて、全日本では5区の吉田祐也(3年)、6区の吉田圭太(2年)が好走し、先を行く東海大との差を縮めたことが優勝をたぐり寄せる要因となった。新しい戦力が他校のエース級と互角の走りを見せられるところに、今季の青学大の強さがある。

 走る人数が多ければ多いほど、距離が長くなればなるほど、青学大の選手層の厚さが生きてくる。

 箱根駅伝では絶対的な本命と言っていいだろう。

青学大一強を阻止する学校は?

 では、青山学院大学の一強状態に待ったを掛けられる学校はあるのか。

 ある。

 出雲では最終6区で、青学大の背中を捉えそうになった東洋大。

 全日本では序盤で主導権を握り、原監督の胃をキリキリさせた東海大。

 この2校には期待がかかる。東洋大・酒井俊幸監督、東海大・両角速駅伝監督がどんな戦略で挑み、ベストのコンディションで箱根駅伝に向けて臨めるかが問われることになる。

東洋大で期待の「三本の矢」。

 中でも東洋大は、「三本の矢」がしっかりと揃えば、エース区間では青学大に見劣りすることはない。その三本とは、山本修二(4年)、相澤晃(3年)、西山和弥(2年)の3人。酒井監督はいう。

「将来性もある3人ですから、『東洋大らしさ』を表現して欲しいです。先輩の柏原(竜二)のように、劣勢になったとしても絶対にあきらめない姿勢を走りで見せて、チームを盛り上げる存在になってくれると期待しています。監督の私としても、彼らをそのレベルに育てていかなければいけないと思っています」

 打倒・青学大を現実のものとするには、山本、相澤、西山の3人がそれぞれの区間での直接対決で勝たなければ勝負にはならない。酒井監督は、あえて厳しいこともいう。

「優勝メンバーだった先輩たち、柏原、設楽啓太、悠太に比べれば、彼らもまだまだツメが甘いです。箱根までの残された時間で、どれだけ成長できるのか、私も彼らを信じてやっていきたいです」

 三本の矢がまっすぐな軌道を描き、いぶし銀の走りを見せる主将の小笹椋(4年)、全日本を欠場した渡邉奏太(3年)、吉川洋次(2年)のふたりが戻ってくれば、陣容としては決して見劣りしない。

 ただし、青学大に対抗するためにはコンディションが「万全」でなければならず、酒井監督の腕の見せどころとなるだろう。

東海大は箱根から五輪へ向かう。

 全日本を盛り上げたのは、東海大だった。

 東海大には独自の強化路線があり、全日本の3区で区間賞を獲得した館澤亨次(3年)は1500mのアジア大会代表だ。トラックの強化に注力しており、館澤だけでなく、他の選手たちも東京オリンピックの代表選考にきっと絡んでくるだろう。

 箱根駅伝からオリンピックへ。トラックでの道筋を東海大の選手たちは目指している。

 ただし、駅伝では距離が長くなればなるほど戦力的には厳しくなる。今季、出雲では3位になったことで、全日本は苦しいだろうと予想していたが、2区では關颯人(3年)が先頭に立つと、7区の途中までその座を守った。

 全日本でたすきをつないだ顔ぶれを見ると、やはり選手層が厚い。

 1区の西川雄一朗(区間4位)、2区の關(区間4位)、3区の館澤までは3年生でつなぎ、4区の西田壮志(2年)は関東インカレのハーフマラソンで4位入賞の実力者で、区間3位できっちりとまとめた。

 5区の鬼塚翔太、6区の郡司陽大の3年生ふたりも青学大には差を詰められたものの、区間2位でしっかりとつないでいる。

 両角速監督は全日本をこう振り返る。

「前半はいい流れが作れたと思います。5区の鬼塚のところで引き離していれば、また展開は変わったでしょうが、7区、8区の距離の長い区間で差が出てしまいました」

 そのほかにも阪口竜平(3年)らの駅伝実績のある選手もおり、2年生の塩澤稀夕、名取燎太と高校時代から実績抜群の選手がそろっている。

 ただし、青学大を倒すうえで絶対に欠かせないのは4年生の働きだ。全日本では7区を走った主将の湊谷春紀が、青学大の主将・森田に逆転された。そして8区アンカーの湯澤舜も、先頭を追うというよりも、3位から追い上げてきた東洋大を意識せざるを得ない展開になった。

 長丁場の箱根駅伝では、4年生の力が必要不可欠である。湊谷、湯澤、そして三上嵩斗らの踏ん張りが東海大のレベルアップには欠かせない。

ダークホースとしての法政大。

 他にも楽しみな学校がある。出雲では12位、全日本では7位だったが、箱根駅伝では上位進出を狙えるチームがある。

 法政大学だ。

 法大の強みは特殊区間の経験者がそのまま残っていることで、前回5区では1時間11分44秒で区間賞を獲得した青木涼真、6区山下りで58分49秒で区間3位だった佐藤敏也(ともに3年)が残っており、箱根山中で順位を大きく上げてくることは確実だ。

 また、スピード自慢の坂東悠汰が最終学年を迎え、「法政の3位は十分にある」と他校の監督たちも警戒を怠っていない。

 法大の課題は、出雲、全日本で区間2桁に沈む区間があったことで、中間層のレベルアップを図れば箱根駅伝を盛り上げてくれるだろう。

駒澤大「原点回帰。泥臭く準備します」

 また、予選会で圧倒的な強さを見せた駒澤大学も上位進出をうかがう。

 その余勢をかって、真っ向勝負を挑んだ全日本では4位。予選会の疲れが残っていたと思われるが、全日本を走った8人のメンバーは全員が区間ひと桁でまとめている。ただし、区間3位以内となると、8区の長丁場を走った山下一貴(3年)ただひとり。

 青学大、東洋大、東海大の牙城を崩すためには、エース区間でブレイクスルーできる選手がどうしても必要だ。前回の箱根駅伝ではシード権を失い、「原点回帰。泥臭く準備します」という大八木弘明監督の声が箱根路に轟くことだろう。

 神奈川大学の大後栄治監督はいう。

「全日本が終わってからの2カ月で、チーム力が大きく変わることというのは考えづらいです。でも、学生が驚くような成長を見せることはあります。指導者としてはしっかりと選手のコンディションを見極めて、いい状態で1月2日、3日を迎えさせてあげたい。それだけです」

 それぞれのチームが、それぞれの目標に向かって、残りの2カ月を悔いなく過ごし、いいレースが生み出されることを祈りたい。

文=生島淳

photograph by Shunsuke Mizukami


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