「えっ、捕手の年俸安すぎ……?」プロ野球のポジション格差を大調査。

「えっ、捕手の年俸安すぎ……?」プロ野球のポジション格差を大調査。

 人は結局のところ、他人のお金の話が大好きなんじゃないか。

「何をいきなり身もふたもないこと書いてんだ」との声をもらうことは承知である。

 でもネットニュースで「27歳外資系社員 年収1000万円でも生活苦」なんて見出しがあったら、うっかりクリックしてしまう。なんて心当たりはないだろうか。

 スポーツでもそうだ。

 契約更改は、野球ファンのオフシーズンのお楽しみの1つだ。来季に向けた選手たちの年俸が発表される。ただそれだけのことだが、ストーブリーグの恒例行事となっている。

 どこで用意したんだ? という大きなハンコを抱えて笑顔の若手が「高卒3年目、史上最速1億円到達!」とか、渋い表情をしたベテランが「野球協約の制限超える75%ダウン」といった感じで大きく報じられる。

 その辺り、オフシーズンでも野球からの興味を失わせないシステムが確立しているんだな、と思う。一方で、よく考えれば人の給料が上がった下がったという話を楽しんでいるのは、野次馬根性だと言われれば否定できない。

 その推定年俸、選手に対する評価が年俸という形に出る……というが、選手名鑑を見ていると「あれっ、この選手ってこのくらいの年俸なの?」と思ったりする。「そういえばポジションによっての年俸格差」はあるんだろうか。そんな素朴な疑問がわいてきた。

 そこで2018年開幕時点の各チームで、投手は先発とリリーフ、野手は捕手・内野手・外野手の今季最高年俸を調べてみた(※参照元はサンケイスポーツの2018年度の契約更改などで、出来高は除く。年齢は開幕時)。

先発とリリーフの年俸は……。

<先発>
広島:ジョンソン(3億4500万円/33歳)
ヤクルト:ブキャナン(1億4000万円/28歳)
巨人:菅野智之(4億5000万円/28歳)
DeNA:ウィーランド(1億3000万円/28歳)
中日:ジー(1億2000万円/31歳)
阪神:メッセンジャー(3億5000万円/36歳)
西武:菊池雄星(2億4000万円/26歳)
ソフトバンク:和田毅&攝津正(ともに4億円/37歳、35歳)
日本ハム:マルティネス(2億円/27歳)
オリックス:金子千尋(5億円/34歳)
ロッテ:涌井秀章(2億円/31歳)
楽天:岸孝之(3億円/33歳)
平均:2億8125万円(以下すべて、端数切捨て)

<リリーフ>
広島:中崎翔太(1億1500万円/25歳)
ヤクルト:ハフ(1億4700万円/33歳)
巨人:マシソン(3億5500万円/34歳)
DeNA:山崎康晃(1億5000万円/25歳)
中日:田島慎二(1億1000万円/28歳)
阪神:藤川球児(2億円/37歳)
西武:カスティーヨ(1億260万円/29歳)
ソフトバンク:五十嵐亮太(3億6000万円/38歳)
日本ハム:宮西尚生(1億5000万円/32歳)
オリックス:増井浩俊(3億円/33歳)
ロッテ:益田直也(1億1000万円/28歳)
楽天:松井裕樹(1億4000万円/22歳)
平均:1億8663万円

 先発>クローザー>中継ぎ、という序列があるように感じる。主な仕事場が9回ではないリリーフは藤川、宮西、五十嵐、益田ら。ただ彼らはそれぞれタイトルホルダーだったり、何年間も実績を残して、この年俸を手に入れたはず。契約更改で「中継ぎは評価されにくい」なんてコメントを見ることもあるが、やはりそれは実感なのだろう。

 ちなみに今オフ、ソフトバンクは攝津と五十嵐の2人に戦力外通告した。コストカットとはいえ、プロの世界の非情さを感じる。

捕手で1億円超えは2人だけ。

<捕手>
広島:石原慶幸(9000万円/38歳)
ヤクルト:中村悠平(5400万円/27歳)
巨人:小林誠司(5400万円/28歳)
DeNA:戸柱恭孝(3800万円/27歳)
中日:大野奨太(5500万円/31歳)
阪神:梅野隆太郎(2500万円/26歳)
西武:炭谷銀仁朗(1億1000万円/30歳)
ソフトバンク:甲斐拓也(4000万円/25歳)
日本ハム:鶴岡慎也(3000万円/36歳)
オリックス:伊藤光(5500万円/28歳※DeNAに移籍)
ロッテ:田村龍弘(5700万円/23歳)
楽天:嶋基宏(1億円/33歳)
平均:5900万円

 安い。安すぎる。調べてみて一番びっくりしたのは、このポジション。「扇の要」なんて言われるが、年俸的には相当報われにくい。実績を積み上げた炭谷と嶋でも1億円そこそこ。いろいろな投手をリードしたり盗塁阻止したりと、忙しそうなのに……結局打たないと年俸は上がらないのか。

強打者ぞろいの内野手は。

<内野手>※順に一塁手、二塁手、遊撃手、三塁手
広島:エルドレッド(1億1500万円/37歳)、菊池涼介(1億9000万円/28歳)、田中広輔(1億4000万円/28歳)、安部友裕(4600万円/28歳)、平均:1億2275万円

ヤクルト:畠山和洋(1億1000万円/35歳)、山田哲人(2億8000万円/25歳)、大引啓次(6000万円/33歳)、川端慎吾(1億4000万円/30歳)、平均:1億4750万円

巨人:阿部慎之助(2億1000万円/39歳)、寺内崇幸(3200万円/34歳)、坂本勇人(3億5000万円/29歳)、マギー(2億6600万円/35歳)、平均:2億1450万円

DeNA:ロペス(2億3000万円/34歳)、石川雄洋(5500万円/31歳)、大和(1億円/30歳)、宮崎敏郎(8000万円/29歳)、平均:1億1625万円

中日:ビシエド(1億7000万円/29歳)、荒木雅博(7000万円/40歳)、京田陽太(4000万円/23歳)、福田永将(3600万円/29歳)、平均:7900万円

阪神:ロサリオ(3億4000万円/29歳)、西岡剛(7500万円/33歳)、北條史也(2000万円/23歳)、鳥谷敬(4億円/36歳)、平均:2億875万円

西武:メヒア(5億円/32歳)、浅村栄斗(2億1000万円/27歳)、源田壮亮(4100万円/25歳)、中村剛也(2億8000万円/34歳)、平均:2億5775万円

ソフトバンク:内川聖一(4億円/35歳)、本多雄一(1億8000万円/33歳)、今宮健太(2億2000万円/26歳)、松田宣浩(4億円/34歳)、平均:3億円

日本ハム:中田翔(2億円/28歳)、田中賢介(7500万円/36歳)、中島卓也(8600万円/27歳)、レアード(3億円/30歳)、平均:1億6525万円

オリックス:マレーロ(1億900万円/29歳)、西野真弘(3100万円/27歳)、安達了一(6400万円/30歳)、中島宏之(3億5000万円/35歳)、平均:1億3850万円

ロッテ:ドミンゲス(9000万円/28歳)、中村奨吾(3500万円/25歳)、三木亮(2240万円/26歳)、鈴木大地(1億1000万円/28歳)、平均:6435万円

楽天:銀次(1億円/30歳)、藤田一也(1億1000万円/35歳)、茂木栄五郎(6400万円/24歳)、今江年晶(2億円/34歳)、平均:1億1850万円

 内野手は錚々たるメンバーが並ぶ。特に高年俸なのは、ファースト。強打者が多く、バッティングでの評価基準が高いからか1億円プレーヤーがほとんどである。

 守備力が求められる二遊間でも、セカンドなら山田や菊池、浅村、ショートだと坂本や鳥谷(ここ近年はサード)、今宮らバッティングでも頼れる選手の年俸はグッと上がる。やはり高年俸への近道はミットやグローブよりバットなのだ。

外野手は1億円超えだらけ。

<外野手>
広島:丸佳浩(2億1000万円/28歳)
ヤクルト:バレンティン(3億3600万円/33歳)
巨人:陽岱鋼(3億円/31歳)
DeNA:筒香嘉智(3億5000万円/26歳)
中日:大島洋平(1億8000万円/32歳)
阪神:糸井嘉男(4億円/36歳)
西武:秋山翔吾(2億2000万円/29歳)
ソフトバンク:柳田悠岐&デスパイネ(ともに4億円/29歳、31歳)
日本ハム:西川遥輝(1億6000万円/25歳)
オリックス:T−岡田(1億2000万円/30歳)
ロッテ:角中勝也(1億3100万円/30歳)
楽天:ペゲーロ(2億円/31歳)

平均:2億1758万円

 なんと全球団、1億円プレーヤーが存在する。ソフトバンクに至っては柳田以外にも、長谷川勇也(2億円)、中村晃(1億6000万円)と1億円超えが数多い。いわゆる「走攻守」のうち2つ以上(3つなら完璧)、もしくは打力で突き抜けていれば、高く評価されている。捕手と比べるのは……ちょっとかわいそうだ。

なかなか称えられない捕手。

 さて、煌びやかな年俸を目にした上で、問題の捕手だ。

 ひと昔前によく見たバナー広告風に言えば、「うわっ……捕手の年俸低すぎ……?」である。ここ近年は捕手の分業制も進んで、盤石のレギュラーがいないとはいえだ。年俸が選手に対する評価だとするなら、捕手は「勝敗に影響を与える度合い」そのものが低く見積もられているのではないか。

 チームが負けると、やれリードが悪い、やれ打力が足りないとやり玉に挙げられ、切ない役回りになりがちな捕手たち。もう少し年俸に考慮してあげても、と素人目には感じてしまう。

 またプロ野球には色々なタイトルがあるが、キャッチャーが称えられる場面は少ない。もちろん盗塁阻止率や守備率、そしてゴールデングラブ賞などはあるが、やっぱり本塁打王や首位打者の「打つ」、最多勝投手や最優秀セーブなどの「投げる」と比べれば、なんだか日の目を見ないイメージである。

「打てる捕手」の年俸は高い。

 その一方で「打てる捕手」に対しては、この限りではない。前述した阿部慎之助はファーストにコンバートされる以前、キャッチャーかつ主砲として大活躍し、最高年俸は6億円に及んだ。結局、捕手でも年俸を上げるには打ちまくった方がいいのだ。

 他にも城島健司(4億円)、矢野燿大(2億1000万円)らはしっかりと評価された方なのだろう。球団や時代の違いがあるにせよ、あの古田敦也の最高年俸が3億円(選手専任時代)にとどまったのは、ID野球全盛の頃にパワプロで育ち、古田の「キャッチャー◎」効果を実感した筆者としては正直意外だった。

 話が脱線したので、本題に戻る。現状の「捕手の年俸低い問題」、救世主となりうるのは……セ・リーグなら會澤翼、パ・リーグなら森友哉と甲斐拓也ではないか。

 打てる捕手でリーグ制覇にも貢献した會澤と森は大幅アップ間違いなしで、今季のような成績が続けば、順調に年俸が上がっていくだろう。

 そして森以上に、甲斐の契約更改でソフトバンクに大盤振る舞いしてほしい。

強肩というレアなスター。

 前述した通り、甲斐の推定年俸は4000万円。日本シリーズのレギュラークラスで、甲斐の次に低い年俸なのはグラシアルの5500万円、それ以外はほとんど1億円プレーヤーだから、かなり格差がある。

 シーズンで見た時、打撃成績で称賛するのは少ししんどいが、133試合出場はレギュラーとして十分の数字だ。

 何より、あの強肩である。12球団No.1の盗塁阻止率.447、そして日本シリーズ新記録の6連続盗塁阻止、MVP獲得。あの送球に柳田悠岐のホームラン以上に衝撃を受けた人は多いはず。ホークスにとっても「強肩」というレアな全国区のスターが生まれたのは大歓迎だろう。

 脚光を浴びづらいリリーフ投手や守備職人にもしっかり年俸を払っているソフトバンクだからこそ、期待したい。甲斐が日本一の貢献度を踏まえて大幅アップ、もっと言えば育成ドラフト6位から1億円プレーヤーの仲間入り、なんてなれば夢のある話だ。「あ、盗塁バシバシ刺せると稼げるんだ!」とキャッチャー志望の野球少年が増えるかもしれない。

 だからこそ捕手の年俸格差、“甲斐キャノン”で打破してみてはどうだろう?

文=茂野聡士

photograph by Hideki Sugiyama


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