甲斐拓也、午前3時の素顔。日本一当夜のインタビュー裏話。

甲斐拓也、午前3時の素顔。日本一当夜のインタビュー裏話。

「いや、ちょっとびっくりしましたね。僕とは思えなかったので、本当に嬉しく思います」

 日本シリーズMVPに輝いた甲斐拓也捕手は、お立ち台で驚きの声を上げた。

 これでもかと走ってくるカープ自慢の機動力を封じ続け、シリーズ連続盗塁阻止記録を60年ぶりに更新。打率.143にもかかわらず、守備で日本一に貢献したという異例の評価で、大きな勲章を手にした。

 メディアも観客も“甲斐キャノン”の威力を改めて認識し、仕舞いには捕手から一塁へ牽制しただけでもどよめきが起きるほどだった。

「本当にピッチャーの方が牽制やクイックなどをすごく工夫してやってくれた結果だと思いますし、今日(第6戦で1回に田中広輔内野手の盗塁を刺した場面)も野手の方が素晴らしいタッチをしてくれたおかげだと思うので、ピッチャーの方にも野手の方にも本当に感謝の気持ちでいっぱいです」

 試合後に行われた共同会見に、工藤公康監督、柳田悠岐選手会長とともに出席した甲斐選手は自らを謙遜し、チームメイトを称え続けた。

謎に包まれた甲斐を直撃。

 しかし、あの肩の強さはどこから生まれたのか、キャッチャーを始めたきっかけはなんだったのか……まだまだ知らないことばかりの、彼のインタビューを誌面に載せるべく、我々はホークスのビールかけ会場へと向かった。

 喜び冷めやらぬ様子で会場入りする選手たち。第2先発としてフル回転した武田翔太投手はスマホ片手にインスタグラムで生中継。彼が写す先にはアルフレド・デスパイネ外野手がいる。本塁打でチームを勢いづけた助っ人は痛めた左足を引きずりながらも、ゴーグル片手に気合十分の参戦だ。チームとしてこの5年間で4度経験した、いわば“恒例行事”だが、それでもこのビールの味は格別なものだろう。

 甲斐選手はというと、MVPに祝福のビールを、と言わんばかりに大量に浴びせかけられていた。報道陣からは自慢の“砲台”を見せてくれるようお願いされ、惜しげもなく見せる場面もあった。

疲労困憊のはずだが笑い声。

「寒い、寒い」

 美酒を浴び終えた選手たちがぶるぶると震えながら会場から出てきた。甲斐選手はこの日先発で好投したリック・バンデンハーク投手(198cm)と身長差約30センチのハイタッチを交わす。

 さあいよいよインタビューに……と思ったところで、部屋へ戻ろうとする選手たちに球団関係者が声をかける。

「1時25分集合ね」

「え、もう1時なの?」

 驚いた表情を見せたのは、優秀選手賞に輝いた中村晃外野手だ。そう、この時点で時刻は既に午前1時。選手たちはこの後、地元福岡で選手の声を待つファンのため、テレビ番組への出演を控えていたのだ。

 約20分を一区切りに、用意されたテレビの番組ブースを2、3人の組を作って次々と回り続ける選手たち。6戦を戦い抜き、ビールかけでひとしきりはしゃいで疲労困憊のはずの選手たちだが、各ブースからは笑い声が聞こえてくる。

「小学校の頃から……」

 深夜のテレビ中継出演を終え、ようやく甲斐選手が我々の前に現れたのは午前3時のことだった。目の下にクマを作りながらも、ひとつひとつの質問に丁寧に、時に笑顔を交えながら答えてくれた。

「小学生の頃からキャッチャーっていうのがなんでか好きで……」

 捕手への愛が溢れ出る彼のインタビューはあっという間に終わってしまったが、その内容は余すところなくNumber965号「BASEBALL FINAL 2018 鷹が撃つ」でご紹介する。

「深夜3時の顔ってこんな感じですか?」

 写真撮影の際、彼はそう言いながらおどけてくれた。次の瞬間には、真面目で柔らかい印象の好青年に早変わり。

 育成出身の26歳は激動の日本シリーズを終え、充足感に満ちた表情をしていた。

文=中川聡(Number編集部)

photograph by Nanae Suzuki


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