本屋大賞ノンフィクション賞受賞!角幡唯介の次の冒険の地はどこだ?

本屋大賞ノンフィクション賞受賞!角幡唯介の次の冒険の地はどこだ?

 今年、ノンフィクション界で話題をさらった角幡唯介著の『極夜行』が、このたび、「Yahoo!ニュース|本屋大賞 2018年ノンフィクション本大賞」に輝いた。全国の書店員約100名の投票と選考委員により、今年一番読みたいノンフィクション本として選ばれたのだ。

 実は、『スポーツ・グラフィック ナンバー』には古くから、植村直己や、白石康次郎ら冒険家を応援してきた歴史がある。『ナンバー』及び文藝春秋は、角幡唯介という平成を代表する冒険家にも様々な形で寄り添ってきたが、彼が特異なのは、冒険にかかる費用として自分の収入(印税、講演会)以外の金銭的支援を一切拒んでいることかもしれない(企業から物品提供は受けることこそあるが)。

 それには確固たる理由がある。

 自由に旅をし、自由に物を書きたいからだ。

 だから、当然ながら周囲の人間は彼の旅のプランに一切口出しができない。彼が書く冒険ノンフィクションの内容も、「完全に」お任せしなくてはならないのである。

ホントにホントの経費はいくら?

 準備を含め4年がかりで完成させた『極夜行』は、冬の日の昇らない北極を一匹の犬と旅した内容だ。

 途中、経費はどれくらいかかるのかと聞いた時、「いや〜それほどかかりませんよ。氷の上は宿泊費タダですから。飛行機代と村の滞在費くらいで、1回あたり100〜150万円くらいですかね」とあっけらかんと答えていた。

 しかし、本当のところ、この4年でどれくらいかかったのか改めて聞いてみた。

「2015年は7カ月滞在しましたから、その年は250〜300万はかかっていますね。トータルで……800万円くらいかな〜」

貯めていた食料を白熊に食べられる。

 手作りのソリ、数カ月分の燃料と、自分と犬の食料、それらもバカにならない。

 今回の“極夜(日の昇らない北極の4カ月間のこと)”の旅は、自身が「呪われた旅」というほどに次から次へと予期せぬことが起きた。

 一番大きなハプニングが、前年の氷の溶けている春から夏に、カヌーを使って遠い目的地まで食料を無人小屋に運んでおいたにもかかわらず、それが白熊にすべて食べられてしまったことである。

「あれで旅が全部ひっくりかえっちゃいましたからね。あはは」

 今となっては笑い話のようだが、作品の中でここは最も緊迫した場面だ。時間とお金が一気に無駄になってしまったわけだ。彼の落胆は日本でヌクヌク生活している我々には到底想像できない。

本屋大賞の賞金は冒険資金に。

「本屋大賞」の副賞はありがたいことに100万円。これは角幡唯介がこれからする冒険のためにも大切な資金源となる。

「賞金はまずはマッサージチェアに使いたい。でも調べてみたら最近はずいぶん安いものも出ているので、3万円くらいのものを買って、残りは次の遠征費に使いたい」と言う。

 角幡唯介、42歳。体力はここから落ちていく。

「僕には、自分の内側から湧き出てくるものを形として残したいという気持ちがあります。そこには手応えのあるもの、本なら『書けた』と自分が思うものを世に出したい。

 僕の場合は探検という身体行為がつきものですから、肉体的な制限を常に考えているんです。いつこういうことができなくなるのか、今が一番の体力のピークなんじゃないかと。経験とともに感受性が高まってこないと、湧き出るものも吐き出せません。感受性の高まりと経験値の高さがいい具合に高まってくるのは、30代後半から40代前半だろうなとずっと思っていました。だからその時期に一番やりたいことをやると意識していました」

次なる冒険の地はどこか?

「今、世界中のどこを見回しても未踏の地を見つけるのは難しい。実際ないと思う。そんな中で、『極夜』を旅するというのは、探検のテーマとしてはすごく新しいものになるなという予感があった。だから、自分の人生そのものとして表現したかったんです。納得のいく旅をして、それを文字で表現したいという気負いがありました」(角幡)

『極夜行』が「最高到達点」だという角幡の次なる目的地はどこなのか。

「先月、ニューギニアに視察に行ってきました。17年前に行ったことがあるんですが、その時にやり残したことがある。来年それを完結させたい。

 それとその前に来年は1月から5カ月間、再び北極を訪れる予定です。犬ゾリに興味を持ってしまって、数年かけてそれを習得したいと思っています。

 体力も落ちてきますけど、犬ゾリがあれば、北極のもっと深部まで入り込めるのではないかと。そこで狩りをしながら旅をしたいんです」

 我々が見ることのできない世界を伝えてくれる角幡唯介の次の作品も待ち遠しい。

文=藤森三奈(Number編集部)

photograph by Takuya Sugiyama


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