3年生の区間配置が神奈川大学のカギ。主力好調の國學院大學は1区がポイント。

3年生の区間配置が神奈川大学のカギ。主力好調の國學院大學は1区がポイント。

今回で95回目を数える東京箱根間往復大学駅伝競走。2019年1月の箱根路では、23チームが健脚を競う。特色豊かな各チームが持つ、ポイントをそれぞれ紹介する。

神奈川大学

<予選会3位> <前回大会13位> 9年連続、50回目

悩む越川、荻野ら3年生の配置。
流れに乗れば上位進出も。

文=折山淑美

 神奈川大は、前回の箱根駅伝では優勝した青山学院大学、2位に入った東洋大学と並んで「3強」の一角とみられていた。ところが、山上りの5区で区間最下位の大ブレーキを起こすと、その後も立て直しに苦戦。総合結果も13位に沈んだ。そのメンバーから主力の4年生がゴソッと抜けた今年は、駅伝シーズンでも苦戦が予想されていた。

 そんな中、大後栄治監督は予選会が今年からハーフマラソンに距離が延びたことも考慮し「今年は育成の年」と割り切ったトレーニングを実施。夏合宿も1年生と2年生の動きを見てペース配分や次の練習の設定を決めるなど、土台作りを重視したという。

 その成果が形になったのが、10月の予選会だった。

 大後監督は「うちは初ハーフの選手が結構いたので、あまり冒険はさせられなかった」と5位前後での通過を狙っていたというが、10kmを30分設定で走った上位グループだけでなく、下位5人のグループも安定した走り。チーム10番目の小笠原峰士(2年)も1時間4分44秒でフィニッシュし、総合10時間39分16秒の3位で本大会出場を決めた。

下級生の台頭がプラス要素。

「今までハーフでは全然ダメだった4年生の多和田(涼介)がチーム3番の1時間3分16秒で走ってくれたり、2年生の北﨑(拓矢)と小笠原、1年生の川口(慧)ら新しい選手も出てきてくれたのは楽しみな要素。ただ、まだうちは層が薄いので、とにかくケガをさせられないという意識は常に頭にあります。あと2カ月は細心の注意を払いながらそれぞれに出た課題をつぶしていかなければいけない」

 そう大後監督は総括する。

 11月の前哨戦・全日本大学駅伝は前回優勝校としての出場で、8位以内のシード権を目指したいところだったが、無理は出来ない状況だった。主力は夏場から予選会のハーフマラソンを意識して作り上げた状態で、区間変更で短い距離の区間が増えた全日本にはなかなか対応しきれないというのが実情だった。

 大後監督の本音としては、予選会に出た選手の起用は5人程度に抑え、5000mで今年13分58秒77を出した杉優一郎(4年)や14分10秒15を出した成瀬隆一郎(2年)など、これまで実績のない選手を試してみたかったようだが、実際に試せたのは6区を走って区間7位になった森淳喜(3年)のみだった。

越川の復調が大きな収穫。

「予選会後は、誰を温存するべきかというところも考えなければいけないので。せっかくシード権が8位までと増えたので狙っていきたい気持ちもありましたが、箱根のシード権も欲しいので予選会に出た選手をあまり無理させても……。特に新人については無理をさせて疲労が出ても困るので、最後は箱根のためにと、どこかで何かを犠牲にしていかなければいけないと思っています」

 こう話していた大後監督にとってみれば、シード権に37秒遅れの10位という全日本での結果は、納得できるものだったのだろう。

 その中でも収穫はあった。

 特に最長区間の8区に起用した越川堅太(3年)が区間6位で順位を3つあげて、きっちり走り切ったことだ。予選会でも越川は、チームのエースである山藤篤司(4年)とふたりで走り、日本人トップ集団からは遅れたものの、最後は山藤を振り切ってチームトップの1時間2分51秒で15位に入っていた。

 越川は春シーズンは調子が今ひとつで、夏合宿でもナーバスになっていたというが、予選会では「トラックシーズンはうまくいかない部分は多かったけど、その中でも淡々とやって積み上げてこれたと思います。夏合宿も誰にも負けずに、予選会ではチームトップになるという自覚を持ってずっと練習が出来ていました。レース展開も最初からガツガツと自分の好きなように走れたので気持ちよくやれたと思う。まだ完成度は7、8割なので、これからギアも上がっていくと思います。鈴木(健吾/現富士通)さんの後継者になってエース区間を走りたいので、しっかり2区を勝ち取りたい」と意欲を口にしていた。

3年生の主力をどう配置するか。

 大後監督が箱根駅伝へ向けての最重要課題にするのは、1年次に3大駅伝を1人も走ることが出来なかった現2年生のレベルアップだ。裏を返せば、主力となる3年生には実績がある。

 前回5区でブレーキをした荻野太成(3年)は今年の夏場にヨーロッパ遠征にも行くなど、9月の日本インカレまでは3000m障害に専念して駅伝の準備は出遅れていた。それでも全日本は5区で区間8位と健闘。長い距離にも対応してきている。

 また、前回の箱根駅伝で6区を走って区間9位になっている安田共貴(3年)も「越川や荻野とは違って自分はスピードより長い距離で勝負したい」と語り、全日本ではエース区間の2区を走って区間賞に37秒遅れるだけと計算できる存在になっている。

 箱根駅伝本大会では、安田を昨年同様6区に起用する可能性もあるが、越川が2区を走り、3区に荻野、4区に安田を使えるようになれば、今年の全日本でも1区を走っている山藤を再びスターターで使えることになる。そうなれば出遅れることなく流れに乗れ、ハーフの力を付けた上級生の多和田を復路の切り札として温存できることにもなる。

 前回ブレーキした5区と、主力の枚数の少なさが大きな課題ではある。だが、自覚を高めてきている3年生の主力を往路の主要区間にどう配置できるか――そこが神奈川大学の最大の見どころになりそうだ。

國學院大學

<予選会4位> <前回大会14位> 3年連続、12回目

“3本柱”の実力は確か。
1区で出遅れないことが重要。

文=折山淑美

 前回大会は、6年ぶりのシード権獲得の好機と目されていた。

 1区で2位と抜群の滑り出しをし、その後も区間3位が1区間、区間5位が3区間ありながらも、残りの5区間でいずれも2ケタ順位。ちぐはぐなレースをすると、終わってみれば総合14位に留まった――。

 そんな國學院大にとって、10月の予選会も、誤算が多い結果になった。

「力のある3人をフリーで走らせて、中盤のグループは1km3分ペース、後ろは10kmを30分30秒という3段階のパターンで行かせたけど、ラストが伸びなかったですね。各校のオーダーを見た時に、駒澤大学が明らかにレベルがひとつ違うかなと思いましたが、本番でシード権にチャレンジするのであれば予選会ではしっかり2位を狙って取りにいかなければいけない。15kmまでは想定内だったんですが、そこから上がって来なかったのが心残りです。10番手までは1時間4分30秒以内で入って欲しいと思っていましたが、9番手以降は1時間5分台。それより下は雰囲気に飲み込まれて10kmでおかしくなっていたので、正直なところ、下の方は崩壊というところです」

 前田康弘監督がこう話すように、ピーキングの問題もあるとはいえ、「まだ底力のない選手が多い」のが現状だという。

「勝負所で気持ちが引き気味になってしまうのではなく、もっと攻めて力を出し切る部分が欲しい。そういう面もこれからの練習で考えていかなければいけない」

 前田監督は、そう気を引き締めた。

前回1区で2位の浦野が好調。

 主力級にも誤算はあった。前回の箱根駅伝では4区で区間3位の好走を見せた土方英和(3年)は、フリーで走らせたものの5kmで走りが崩れてしまい、守りの走り。本来の力を出せなかった。また、3区で区間5位だった青木祐人(3年)は、調子が良くない中とはいえ、1時間5分台の結果に終わった。この2人にはもう少し上のレベルでまとめてほしかったという。

 一方で、本大会へ向けては収穫もあった。

 前回大会1区で区間2位に食い込んだ浦野雄平(3年)が日本人トップ争いに加わって、日本人4番目の7位に入ったことだ。

「15kmを過ぎて塩尻(和也・順天堂大学)さんが出た時について行こうか迷ったんですが、これまで立川のレースでは終盤の走りがなかなかうまくできなくて失速するということが多かったんです。無理していくより確実に自分のペースを刻んでいこうと判断しました。最後の集団で勝ちきれなかったのは課題ですが、大きく崩れなかったという点ではとりあえずよかったと思います」

 浦野は今年、世界大学クロカンに出場して日本人2番手の6位になり、5月の関東インカレ2部5000mでも3位に入っている。11月の全日本大学駅伝でも序盤のエース区間の2区を走り、19位でたすきを受けながらも区間賞に5秒遅れるだけの区間3位で走り切り、順位を7位まで押し上げてチームのシード権獲得の立役者となった。

1年生の藤木も全日本で好走。

 また、同じ全日本では、前述の土方も7区を走って区間6位とまずまずの走り。加えて、予選会ではエントリーメンバーに入りながらも走れなかった期待の1年生・藤木宏太が4区で区間6位と結果を出してくれた。

「前回の箱根の往路で区間上位になった浦野と土方、青木はそれ以降は目指すものが変わったというか、トップの位置を見るようになりました。2年生でそこを理解できる選手はうちにはなかなかいなかったので、その意味でも昨季の箱根駅伝は大きかった。そういう意識の選手が1人ではなく3人いるということに意味がある。

 土方は2月の丸亀ハーフで1時間2分47秒で走り、4月には10000mで28分44秒28の國學院大學記録も出した。青木も5月に5000mで13分54秒49の國學院大學記録を出している。地力としては浦野の方が上ですが、土方と青木が記録で浦野を上回ったことは、切磋琢磨という面でも意味があったと思います」(前田監督)

1区をどうしのぐかがテーマに。

 これまでの國學院大學は、毎年「総合力はある」と評価されながらも、なかなかシード権を取れなかった。その理由は、エース区間の2区の大学最高順位が13位で、他校のエースと互角に戦える主力がいなかったからだ。

 だが、今年は浦野がいるうえ、土方も「今年の最大の目標は浦野に勝って2区を走ること」とライバル心を顕わにし、青木も「3区で区間賞」と高い目標を持つようになっている。

 主力3人が実力通りに機能すれば、往路を上位で進めることになる。残る課題はそこにつなぐ1区をきっちり走れる選手がいるかということだ。現時点の1区候補は、前回6区を走った臼井健太(2年)だ。

「1年生の時に6区を走って、2年生で1区2位になった浦野さんのようになりたい」と、早くから1区に志願している。その臼井は予選会ではチーム4位で走ったものの、全日本は1区を走り19位と結果を出せなかった。

 それでも全日本では総合6位としぶとい力を発揮した國學院大學。箱根駅伝でのシード権獲得のカギは、1区をいかにしのげるかにかかっている。

文=箱根駅伝2019取材チーム

photograph by Yuki Suenaga


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