バド混合ダブルスの渡辺と東野が天敵・中国ペア撃破の先に見た世界。

バド混合ダブルスの渡辺と東野が天敵・中国ペア撃破の先に見た世界。

“6度目の正直”だった。

 11月13日から開催されていたBWFワールドツアー・香港オープン。18日には各種目の決勝戦が行われ、混合ダブルスで渡辺勇大、東野有紗組(日本ユニシス)が“天敵”中国ペアを破って、今季2個目のタイトルを掴んだ。

「全英オープンの優勝はもちろん、すごく嬉しかったですが、もう1度あのとき感じた優勝の気分を味わいたいと思っていました。だから優勝できてほっとしたというか……ここまで結構長かったですね」(東野)

 決勝戦は過去5戦全敗の中国の王懿律(ワン・イーリュ)&黄東萍(ファン・ドンピン)との対戦となった。香港オープン直前に行われた福州中国オープン準決勝でも0−2とストレート負けを喫していた相手に一矢報いることはできるのか――。

プラン通りプレーして、勝てた。

 試合前は「開き直ってというか、気持ちを落ち着かせて入ることができました」(東野)という。

 世界ランク2位(11月15日時点)の強敵ペアは、五輪レースが始まる前にどうしても勝っておきたい相手だ。純粋に何度も同じ相手に負けるのは悔しい。さらにここで負け癖がついてしまうのはよくないとも考えた。

 これまで5度対戦をし、5度敗れていた相手にも2人は一歩も譲ることはなかった。

 渡辺と東野は第1ゲームを21−18で先制すると、第2ゲームも先行し、途中、接近されることもあったが、相手をスピードで上回り、21−14と快勝。優勝を手にした。

「(ワン&ファンペアに対しては)過去の対戦で同じパターンで負けていたのですが、これまではレシーブの場面で速い球に対して速く返球していたところを、相手のスピードを利用してうまくかわすという作戦を実行できたんじゃないかなと思います。

 相手のパワーを利用するというところは、いつもジェレミーさん(ジェレミー・ガン日本代表混合ダブルス専任コーチ)に言われていることで、それがこの試合ではしっかりハマったと思います」(東野)

日本で遅れをとっていた混合ダブルス。

 日本バドミントンは、ロンドン五輪で銀メダル、リオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得した女子ダブルスが先行し、リオでは奥原希望が女子シングルスで銅メダルを獲得。

 さらに今年8月の世界選手権で金メダルを獲得し、日本勢男子で初の世界ランク1位にもなった男子シングルス桃田賢斗などが追随して成績を伸ばしてきた。

 その中で遅れを取り、唯一、スーパーシリーズで優勝がなかったのが混合ダブルスだった。

 しかし今年1月、専任コーチとしてジェレミー・ガン氏をマレーシアから招聘し、混合ダブルス強化と育成を図ってきた。就任2カ月で渡辺&東野は3月の全英オープンで日本混合ダブルス勢史上初の快挙を成し遂げる。

 以降、香港オープンまでワールドツアーで優勝こそ手にしていなかったが、コンスタントに少なくともベスト8入りを果たしていた。

 昨季の結果と比べると、その差は一目瞭然だ。

【2018年の主な成績】

・全英オープン      優勝
・マレーシアオープン   ベスト4
・インドネシアオープン  ベスト8
・世界選手権       3回戦敗退
・ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン ベスト4
・デンマークオープン   2回戦敗退
・フランスオープン    ベスト4
・福州中国オープン    ベスト4
・香港オープン      優勝

【2017年の主な成績】

・ドイツオープン     1回戦敗退
・全英オープン      ベスト4
・インドオープン     1回戦敗退
・マレーシアオープン   1回戦敗退
・シンガポールオープン  1回戦敗退
・インドネシアオープン  2回戦敗退
・オーストラリアオープン 1回戦敗退
・中国オープン      1回戦敗退

新コーチで戦術的選択肢が増加。

 ジェレミー・ガン氏が専任コーチに就任するまで混合の指導をほとんど受ける機会がなかった2人にとって、その教えは覚醒へとつながった。

 全英オープン後、渡辺は「本能的な動きでプレーすることが多かったが、スペースの使い方など戦術的な考えを持てるようになった」と話し、東野も「ジェレミーさんが増やしてくれたアイデアやプランをもとに、自分たちで話し合う時間も増えた」と自らの変化を実感。2人の特性を理解したジェレミーコーチの的確な指示に導かれ、ペアとしての能力が一気に開花した。

タイトル以上に大事なものを得た2人。

「全英で優勝できたことが本当に大きな自信になってプレーできていましたし、(渡辺)勇大くんと一緒に『継続的に成績を残せるように』と声を掛けあいながらやってきました。

 1つずつ積み重ねてきたことが、ベスト8以上の結果をコンスタントに残すことにつながった。私たちにとって価値のある1年になったと思います」

 全英オープンで2人が手にしたものは、“優勝”というタイトルや“日本混合ダブルス史上初”という快挙以上に大きなものだった。

 中学時代からペアを組む2人はこれまで以上に、自分たちがいかに戦うべきかという話し合いやコミュニケーションが増え、さらに試合経験を重ねることで、戦い方のバリエーションや引き出しが増えたことを実感している。

 全英オープン前(3月15日付)は48位だった世界ランキングも、最新(11月15日付)では5位と大きくランクアップ。目を見張るものがある。

来年は五輪出場を争う年に!

 しかし一切の油断はない。

「自分たちには、まだ勝てていないペアが何組もある。ワン&ファンペアには5度も負けていましたし、(世界ランキング上位の)マレーシアやデンマークのペアにも勝てていません。まだ対戦したことがないペアもいます。

 これからはそういう相手にもしっかりと勝つことを目指していかないといけないと思っています」

 まだまだ自分たちがやるべきことは多いと気を引き締める東野。

 この1年で大きな成長を見せた混合ペアは、五輪レースが始まる2019年、果たしてどんな進化を見せるのか。

 伸び盛りの21歳&22歳ペアのこれからに注目したい。

文=石井宏美(Number編集部)

photograph by Imaginechina/AFLO


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