『グラゼニ』凡田夏之介が池田純にガチンコ人生相談!

『グラゼニ』凡田夏之介が池田純にガチンコ人生相談!

 2018年、秋も深まった頃――。

 仙台ゴールデンカップスの左腕・凡田夏之介は、東京・千代田区紀尾井町にある出版社・文藝春秋を訪れた。

 横浜DeNAベイスターズの前球団社長で、今もさまざまなスポーツに関わる池田純さんが学長を勤める「Number Sports Business College」での、池田さんとの公開対談に出席するためだ。

 以前は緊張を紛らわすため、慣れないラジオ出演時に酒をあおり暴言を吐いたこともあった夏之介だが、今日はあえてお酒を飲んでいないようだ。少し緊張した表情にも見える。

 スポーツビジネスに関心を持つ受講生を前に、池田さんは球団社長時代、宜野湾での春季キャンプ中に『グラゼニ』を球団職員に読ませたことがあると話し、夏之介をリラックスさせながら対談を進め、話を引き出していった。これまでのキャリアのこと、所属した球団それぞれの特徴やスタジアム談義など……。

今や「勝ち組」の凡田だが。

 しばらく話が進んでから、夏之介はおもむろに、池田さんに話しかけた。

夏之介「僕、池田さんに、どうしても相談したいことがあるんです」――。

 高校生ドラフト5巡目で神宮スパイダース入りした凡田は、メジャーリーグを含めてこれまで、4つの球団に所属してきた。使い勝手のいい変則左腕として、スパイダースではプロ入り以来、ワンポイントの中継ぎで使われてきたが、チーム事情もあり先発にリリーフにと大車輪。トミー・ジョン手術を経て現在プロ15年目の32歳となった。

 プロ野球選手が現役でいられる平均年数が9年ほどといわれている中、十二分に活躍してきたといえる。億を超える複数年契約を勝ち取り、今なら自分の年俸より下の打者のほうが多くなった(=ビビらなくなった)。プロ野球選手としては、明らかに「勝ち組」といえるだろう。

夏之介「悩みが、あるんです……。それは、将来への不安なんです!」

 堰を切ったように、夏之介は池田さんに自分の心境を吐露していく。

ちらつく「引退」の二文字。

夏之介「僕は先発で勝負したいと思って、昨年オフにパ・リーグの球団を選びました。大きなチャレンジでした。でも正直、全然活躍できていません……。その一方で、3人目の子供も生まれたばっかりです。しかも、まさかの双子! 今は1億以上の年俸をもらっていますが、やっぱり野球選手は、ユニフォームを着ているうちしか稼げない。今年で僕は32歳。正直にいえば、『引退』の二文字も少しチラついてきてるんです。

 僕はこの先、どうすればいいか……。悩んでいるんです」

 にわかに会場の雰囲気が変わった。池田さんの目の奥も、キラリと光っている。

池田「夏之介選手はつまり、セカンドキャリアを不安に思っている……と」

夏之介「そ、そうなんです!」

池田「なるほど……ではまず、夏之介選手は、何になりたいんですか?」

セカンドキャリアをどう築く?

夏之介「というと……?」

池田「大事なのは、どこで生き残りたいかを考えることです。そもそも引退後も野球界で生きていく、と考えるのか。それとも、野球から離れて、文字通りセカンドキャリアを築いていくのか。

 野球界にとどまり仕事を続ける、ということであれば、まずは指導者の道。夏之介選手は投手ですから、投手コーチ、ブルペンコーチ、さらにいえば監督だったりGMという職種も視野に入ってきます。あるいは、野球解説者としてメディアと契約を結んでいく、という方法もあります。

 一方、野球界から離れて勝負したい、というのであれば、勤め人でいくか、自営業で行くかを考えなければなりません。毎年何億と稼いでいたプロスポーツの世界から、その半分以下の年収となるようなサラリーマンになり、あるいは事業を起こし、いまの生活を維持していくことが果たしてできるのか。

 いずれにしても、自分が何になりたいのか、そこから始めなければなりません」

ほとんどが新たな世界に挑戦。

 アスリートのセカンドキャリア、という言葉が世の中に知られるようになってから、ずいぶんと時間が経った。

 プロ野球出身者で、球団に残り指導者や球団職員の仕事に就いたり、あるいはメディアで活躍するのはごく一部の人で、残りは新しい世界へのチャレンジとなる。昔であれば、プロ野球選手が焼肉店を開くのはよくあることで、飲食業に進出する選手が多かった。

 それは有名人としての知名度を生かしてのことだ。ただ、それらはいずれも、現役時代に手にしていた年俸には到底及ばないことが多い。

給与の推移は一般人と大違い。

池田「僕が球団社長時代は、新人選手が入ってきたときに、生涯賃金の話をして、いわゆる契約金はすぐに使わず、将来のためにとっておくように話していました。プロ野球選手の給与の推移は、一般のそれとはあまりにも異なるカーブを描きますし、何よりも激しい競争社会ですからね。

 支配下選手枠が70名と限られている中で、毎年ドラフトなどで10名弱の新人選手が入ってくるわけですから、育成枠をのぞけば毎年7人に1人の割合でクビになる選手が出るわけです。新人の時は、誰もが成功の夢を見ているけれど、残念ながらそう甘くはない。

 もしも大怪我などを負って、選手としてのキャリアを諦めなければならなくなったときに、自分はどうしたいのかを、頭の片隅に置いておくだけで、次の一歩の踏み出し方はずいぶんと変わってくるように思いますよ。

 さて、夏之介選手。あなたは現役を終えたあと、何になりたいのですか?」

夏之介「ひえ〜……全然わかりましぇ〜ん!」

 池田氏は、軽くパニックになり、目を潤ませている夏之介の肩をポンポンと叩くと、優しく声をかけた。

「だと思いました(笑)。ではこれから、私と一緒にセカンドキャリアを考えていきましょう」

 公開対談は一転して、「夏之介・セカンドキャリア会議」へと変貌を遂げていった。

(第2回につづく)

『グラゼニ 〜パ・リーグ編〜』1話目はコチラから
http://morning.moae.jp/lineup/970

文=池田純

photograph by Number/Morning


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