5年前にU18だった彼らが東京五輪へ。侍ジャパンの松井、森、上林世代。

5年前にU18だった彼らが東京五輪へ。侍ジャパンの松井、森、上林世代。

 2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」まであと2年を切った。本番が近づくにつれて、出場が期待される選手たちへの注目度は日に日に高まっている印象だ。

 そんな選手たちのことを「東京五輪世代」といったりもするのだが、これはサッカー界を中心に語られることが多い。年齢制限のあるサッカー五輪代表は、本番にオーバーエイジ枠が設けられるものの、23歳以下で構成され、世代別として認識されている。

 過去のオリンピックに出場した世代も、本田・長友らの「北京五輪世代」、稲本・高原らの「シドニー五輪世代」と呼ばれるなど、サッカー界では当たり前になっている。

 その他の競技では、円熟期に差しかかる年齢で東京五輪を迎える選手たちもそう言われることがある。体操の白井健三はまさに金メダルが期待される選手だし、桐生祥秀らの陸上短距離勢、池江梨花子ら競泳陣も「東京五輪世代」と言っていいだろう。

 一方、3大会ぶりに正式競技として復帰する野球には「東京五輪世代」というのは存在しない。フル代表で挑む侍ジャパンは、現状の実力者たちが年齢に関係なく集うチームであるから、世代で分けられることはない。

東京五輪が決まった時に。

 そんな中でも、楽しみな世代は存在する。

 それは東京五輪の開催が決まった2013年当時、U18日本代表として日の丸のユニフォームを身にまとって世界と戦っていた選手たちだ。

 2013年の秋、U18W杯に出場していた選手たちは、東京五輪開催の決定を異国の地・台湾で知った。これには「またとない経験だ」と、時の指揮官、西谷浩一(現大阪桐蔭)は、当時の代表メンバーたちに熱い想いを伝えている。

「2020年の五輪の開催地が東京に決まった。異国の地にきているときに、東京五輪が開催されるのを知った。これは思い出深いぞ。東京五輪で、お前たちは24、5歳。野球選手としては一番いい時を迎えている。これは何かの縁やから、お前ら、その時に選ばれるような選手になれよ。お前たちが引っ張っていく存在にならな、アカンぞ」

侍ジャパンに入った3人の選手。

 先日まで開催されていた日米野球の侍ジャパンのメンバーに、西谷監督が率いたU18日本代表メンバーだった選手が3人いる。楽天の松井裕樹、西武の森友哉、ソフトバンクの上林誠知だ。

 プロでのデビューの仕方は異なっているが、それぞれが今やチームの中心となり、日本を代表する選手の1人として侍ジャパン入りを果たしている。

 すでにWBCにも出場している1番の出世頭・松井裕樹はこう話す。

「うっすら覚えていますよ。U18代表にいた時に、五輪決定の垂れ幕とかを見た記憶があります。西谷監督には、東京五輪に出るようにっていう話をしてもらったと思います。でも当時は、東京五輪出場のイメージを描けたかっていうと、そこまではできていなかったですね。プロの世界にまだいなかったですから。今こうやって代表に入るようになって、少しずつ東京五輪への思いは強くなってきた感じです」

 そんな彼らにとって、当時のメンバーや球界にいる同学年の存在はやはり気になるという。

 松井は続ける。

「森や上林は同じリーグですし、同級生は意識はしますよ。今回の代表では(高橋)礼も同い年ですね。同級生が活躍しているのを聞いたり対戦すると刺激になりますし、モチベーションは上がります。対戦するときは打たれたくないし、味方になったら頼もしいですし。日本の野球界では田中さん(将大、ヤンキース)の世代は実力が接近していると言われますけど、僕らもお互いが高め合っていければなと思います」

森が驚いたアメリカの意外な部分。

 2013年のU18W杯では、日本代表は決勝戦でアメリカに敗れて準優勝に終わった。

 その試合後、ベンチで人目をはばからずに大粒の涙を流していたのが2年連続でU18W杯に出場した森だった。

 日米野球では純粋な「アメリカ代表」との対決ではなかったものの、アメリカでプレーする選手たちとの対決に感じることはあったに違いない。

「パワーは圧倒的なものがあると思いますね。体つきも違いますので、飛ばすことに関しては日本人では勝てない感じはします。ただ今回の代表に入って思うのは、長打もあるんですけど、しっかりコンタクトしてヒットを打つとか、全てがパワー任せではないところがすごいなと思います」

森「いろんな餌まきが必要」

 日米野球の第3戦でスタメンマスクを被った森は、5回1死二、三塁のピンチの場面で、モリーナに右翼スタンドに放り込まれている。この試合で先発していたのはチームメイトの多和田真三郎(西武)だったが、アウトコースにしっかりコントロールされたスライダーを見事に弾かれてしまったのだ。アメリカの舞台でプレーするスーパースターに一発を食らったことは大きな経験になっただろう。

「日本と違ってセオリーがアウトコースでないことはわかっていましたが、アウトコースをしっかり弾かれてしまった。ボール自体は悪くなかったと思いますが、(配球が)丁寧に行き過ぎたのかもしれません。

 改めて感じたのは、いろんな餌まきが必要だということです。失投を失投じゃないようにするのが、キャッチャーとして大事だと思います。世界と対戦することができて、配球という部分ではいろんなバリエーションを考えないといけない。自分の引き出しを増やして行きたいと思います」

上林「JAPANは思い出したくないくらい」

 プロ1年目からデビューした松井・森と違って、悔しい思いを糧にしてきたのが上林だ。そのU18代表には上林も名を連ねていたが、当時は控え要員だったからだ。

 高校2年で夏の甲子園に出場した上林は、同年の秋、東北大会を制して神宮大会も連覇。翌年のセンバツ大会に出場するなど、松井・森と並ぶドラフト候補と騒がれていた。ところが、3年生になってからの1年間で大きくつまずいた。最後の夏の甲子園ではチームは2回戦まで進出したが、上林は1回戦の浦和学院戦で3三振を喫するなどどん底にいたのだ。

 なんとかU18代表入りは果たしたものの、ポジションは約束されていなかった。さらに彼にとって屈辱だったのは、ある試合で上林の代わりに外野を守ったのが本来は遊撃手の熊谷敬宥(阪神)なことだった。

 高校生当時、上林はこんな悔しさを口にしている。

「高校JAPANは思い出したくないくらい悔しい。試合に出ていた人たちの実力が僕より上だと思われたままでは悔しいので、そいつらの頂点にたてるように、見返せるようにしたい。JAPANで悔しい想いをして、そこで初めてメジャーに行きたいと強く思いました。日本のプロ野球も素晴らしいんですけど、野球界の最高峰は、メジャーです。そこで結果を残せば、何も言わないと思いますから」

 その想いの強さがあったから、上林は2年目のシーズンにデビューを果たすと、着々とその地位を確立していくことができたのだろう。今季は日本シリーズでも1本塁打を放つなど、同世代で最も早く日本一に輝いている。

森「同級生ならではの感覚・感情」

 いま、代表入りを果たしてどんな気持ちでいるのか。

「代表に入れる選手になりたいとは思っていたので、早い段階でそれが実現できていることは嬉しいですね。松井や森など同い年っていうのは当然意識しますし、だから一緒に選ばれて嬉しいです。ただあの2人は高校の時からずば抜けていて、今でも同じ学年では2人とも抜けていると思うので、早く追い抜きたい気持ちはあります。昔みたいな見返してやるとか言う気持ちは、今はないですけどね」

 この日米野球では3人ともにそれぞれ存在感を見せた。

 森は「東京五輪を意識している余裕は今の僕にはない」と、捕手としての山積する課題を口にする一方、代表に入って感じたこともあると語る。

「侍ジャパンとして同じチームでやっている以上、彼らの活躍が嬉しいと思います。その反面、自分ももっと頑張らなあかんなって思わせてくれるのはありますよ。それが同級生ならではの感覚・感情っていうか……。同級生だからこそ生まれるものがあります」

山岡や田口など同世代はまだまだいる。

 この3人と今回代表入りした高橋礼の他にも、同世代はまだたくさんいる。当時のU18代表メンバーでは、山岡泰輔(オリックス)、田口麗斗(巨人)がそうだし、先ほどあげた熊谷、今季おもに二塁手として60試合に出場した渡邉諒(日本ハム)、プロ入り初の2桁本塁打を記録した内田靖人(楽天)、チーム最年少の選手会長に就任した若月健矢(オリックス)。1学年下でメンバー入りしていた選手では高橋光成(西武)、安楽智大(楽天)などもいる。

 来年はプレミア12があるが、これから五輪の本番までに、あの時日の丸を背負って「東京五輪開催」を知ったメンバーが何人代表入りしてくるのか、注目していきたい。

「普段はいいライバルで、代表入りしたら心強い存在」

 松井と森は同じ言葉を口にしている。

 野球界の“東京五輪世代”、彼らにちょっとした期待を寄せている。

文=氏原英明

photograph by Nanae Suzuki


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