昭和なタバコ文化の残るプロ野球。原監督の“禁煙令”に思い出すこと。

昭和なタバコ文化の残るプロ野球。原監督の“禁煙令”に思い出すこと。

 1980年代(私が10代の頃)、常々思っていたことがあった。『野球選手はスポーツ選手ではない』という持論である。

 野球選手は野球選手であり、他のスポーツ選手やアスリートと同じカテゴリーに入れるのはお互いに不幸だと思ったのだ。もっと言うなら野球選手に失礼ではないかと。

 野球選手はたばこを吸い、酒を浴びるように飲み、肉をたらふく食らい、おねえちゃんに夢中。男の中でもかなり男血糖値が高い人々が集結した世界に見えた。それぐらいの人物だからこそ、当時運動神経が優れた男はまずやったであろう野球でもトップになり得たのだと考えていた。

 今でも忘れられないシーンがある。1986年の「NHK特集」で「清原と桑田〜18歳の大物ルーキー〜」という密着ドキュメントが放送された。野球少年の私は食い入るように見たが、球界を代表するエース山田久志が清原を語っていた。その状況が印象的だった。

 山田久志はホテルの一室で紫煙をくゆらせながら、余裕たっぷりに新人・清原について語っていたのだ。やたらカッコよかった。「たばこが似合うスポーツマン」といったらヘンだが、野球選手だけにしかないオーラを放っていた。

 '90年代に入り、イチローが登場して流れは変わった。「野球選手のアスリート化」である。現在の野球選手はほぼアスリートにみえる。大谷翔平などはその結晶だろう。

なぜ日本の選手は喫煙するか。

 しかし先日「ああ、以前の残り香はまだあったのか」と思わせるコラムを見つけてしまった。

「某助っ人がポロリ…熱心に練習する選手に限って喫煙者が多いのはナゼ【広瀬真徳 球界こぼれ話】」(東スポWeb11月7日)である。

 外国人選手との談笑の際、ある質問をされたという。

「なぜ日本の野球選手の多くはたばこを吸うんだ? 熱心にトレーニングに励む選手ばかりなのに、そういう選手に限ってたばこを吸う。矛盾していると思わないか?」

 ああ、野球選手はまだたばこを吸っていたのか。

「あまりに唐突だったため、思わず答えに窮してしまったが、確かに野球選手の喫煙率は他のスポーツ選手と比べて高い気がする。CS試合前に球場内の喫煙室をのぞくと、主力選手4〜5人が同時に一服している姿があった。おそらく助っ人はそんな光景をシーズン中、毎日見続けたこともあり、チームとは無関係の私に本音を漏らしたのだろう」

選手がアスリート化する中で。

 コラムでは各球団が「体力維持や故障予防の観点から春季キャンプや新人研修等で積極的に禁煙を勧めている」ことも書いているが、逆に言えば喫煙する選手は今も多いということがわかる。

 野球選手はなぜたばこを吸うのか?

 嗜好品だから各自の自由だし、冒頭に書いたように私は「たばこを吸い、酒を飲みまくり、グラウンドで結果を出す」野球選手には非日常の超人を見る楽しさを感じていたので個人的には咎めるつもりはない。しかし、ついつい気になってしまうお題でもある。

 コラムには野球選手が喫煙する理由も書かれていた。

「以前、ヘビースモーカーである某チーム主力選手に禁煙を勧めたことがあるが、その選手は「野球はサッカーやバスケと違って持久力が重視されるスポーツじゃないので、たばこの害を意識しづらい。それにシーズン中に禁煙するとストレスがたまり、逆にたばこを我慢することでプレーにも影響が出る。だからやめたくてもやめられない人の方が多い」と胸の内を明かしてくれた」

 なるほど。

 昭和から平成へのプロ野球の変化のひとつは「選手のアスリート化」だと私は勝手に思っていたが、それにしてもやはり興味深いジャンルである。

原監督が岡本に出した禁煙令。

 そういえばこんな記事があった。

「原新監督 岡本へ禁煙令」(日刊スポーツ10月24日)

 巨人の新監督となった原辰徳氏の就任会見を伝える記事なのだが、「禁煙」というザワザワする文字が。

 何かと思えば、今年ブレークした岡本和真が「4番としてさらに成長するに何が必要か」と問われた原監督は、

「まず、たばこをやめることだね。青少年育成を含めた夢を追い掛ける点で改めれば、来季はさらに上の成績になるのでは。自分を新しいステージに上げる、目標を置くために。勧めないようにしてください(笑い)」

 と言ったという。マスコミ受けを考える原監督らしいキャッチーな発言である。実際に「岡本へ禁煙令」は各紙大きく報じた。

現役時代を思い出してみると。

 しかし私は覚えているのです。原監督の現役時代のことを。

 劇的なホームランを打った原辰徳の様子を伝えるベンチレポートで「いま、ベンチに戻ってきた原選手はまずダッグアウト裏に行き、おいしそうにタバコを吸っています!」というのがあったのだ。

 たしか現役晩年の頃だった。原の久しぶりのホームランに中継は盛り上がっていたので、大仕事のあとにまず一服して落ち着いているという報告は間違いなく「美談」調だったのである。中継を見ていた私も「さぞかし美味いたばこだろうなぁ」と普通に思っていた。

 そんな原監督が今回岡本に禁煙令というのも面白いではないか。自分が現役の頃に言われて嫌だったことを監督になったら実行するのが監督の性(さが)なのだろう。

 そもそも質問は「岡本が4番としてさらに成長するに何が必要か」であった。自分が現役の頃に禁煙していたらもっと凄い4番になっていたかも……という思いをずっと抱いていたのかもしれない。

FA戦線で飛び交った丸の噂話。

 さて、今年もプロ野球はFAの話題が多い。注目の1人は広島・丸佳浩外野手。

 大物になればなるほど噂は飛び交う。タブロイド紙にはさっそく「巨人熱視線のFA丸『家族は関東に引っ越した』情報」(夕刊フジ11月6日付)という記事が。

「実は夕刊フジは丸について気になる情報を得ていた」とし、

「地元広島の飲食店オーナーが『丸の家族はすでに関東に引っ越したそうだ』というのだ。さらに広島の球団関係者も『全然違うところから、それと同じことを聞いた』と証言。本当だとすれば、丸はすでに関東の球団へのFA移籍を決意し、すでにその準備に入っているということなのか」

 夕刊フジは報道陣の輪が解けるのを待ち、丸を単独で直撃。「ご家族が引っ越されたと、複数から聞いたのですが?」と聞いた。

「そのウワサ、どっから出たんですか?」

 一瞬驚いた表情を浮かべた丸だったが、「ウワサはウワサでしかないんで……」とだけ言い残すと、特に強く否定することもなくタクシーに乗り込んだ。

 カープファンにはなんとも気になる記事だ。

独り歩きする怪情報に……。

 その5日後。今度は東スポに「困惑 独り歩きする怪情報にFA丸」(11月10日)。

 東スポは夕刊フジの記事を念頭に置いているのだろう。

「『家族は関東に引っ越した』という一部情報に丸は『引っ越してないですよ!』とキッパリ否定。FA時に噂話はつきものだが、決着がつくまでこの手のデマに本人も周囲も散々悩まされそうだ」

 噂やゴシップは夕刊紙・タブロイド紙の醍醐味のひとつだと思うが、このように他紙の記事が本当かどうかの確認もどんどんやってほしいと思った。面白いし、何より事実でないものを打ち消す効果があるからだ。

 丸はこのあと移籍を表明したが、途中のこの噂に迷惑したのは確かだろう。

 以上、11月のスポーツ新聞時評でした。

文=プチ鹿島

photograph by Kyodo News


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