梅崎司が古巣浦和に見せたキレ味。湘南J1残留へ、ゴールあるのみ。

梅崎司が古巣浦和に見せたキレ味。湘南J1残留へ、ゴールあるのみ。

 J1第33節・湘南ベルマーレvs.浦和レッズの一戦。この試合は湘南のMF梅崎司が主役となった。

 昨年までの10年間在籍した古巣が相手ということもあり、スタジアムで販売されたマッチデープログラムの表紙も梅崎だった。

 試合では“キレキレ”のドリブルシュートで先制ゴールで叩き込み、その後も浦和サポーターから“キレ崎”と呼ばれた頃を彷彿させるプレーで、2−1の勝利に貢献。チームの自動降格圏入りを回避する、重要な勝ち点3となった。

 試合後、当然のようにマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた梅崎。ミックスゾーンでも1番人気の存在だった。

浦和だから、とあまり意識せず。

 ただ「古巣への恩返し弾」で盛り上がる周囲をよそに、梅崎は至って冷静だった。

「正直に言うと、みんなが言うほど“レッズだから”というのがあまりなくて、これは(地元凱旋となった第25節の)V・ファーレン長崎戦と一緒。試合前は勝つことしか考えていなかった」

 長いプロサッカー人生を歩んで来た梅崎司には、様々な因縁がある。だが、いちいち感傷に浸っている暇はない。

 なぜなら、彼は今や押しも押されもせぬ湘南のエースで。結果を出すことを使命としている。そしてチョウ・キジェ監督が熱望の末に獲得した“最大の戦力”だからだ。

 その想いに応えるためには、結果を出すこと。

 確かに今季、湘南はルヴァンカップ優勝という大きな勲章を得た。だが、一番重要なのはリーグ戦。来季もJ1で戦う権利を掴み獲ってこそ、“結果を残した”と言えるのだ。それは梅崎自身がよく理解している。

「もちろん長崎や浦和の試合はモチベーションが上がる。浦和戦も“成長しているところをサポーターに見せたい”と思っていたけど、それ以上にチームの状況と立ち位置を考えて、俺がやらなきゃいけないと思っていた」

マーカー森脇の強みを利用。

 その姿勢は浦和戦でハッキリと見えた。

「向こうは本当に自分が良く知っている選手達で、逆に向こうも俺の特徴を熟知している。試合前から特徴の“出し合い、消し合い”になることは分かっていた。だからこそ、この2つのポイントを意識してプレーできた」

 20分に見せた先制ゴール。DF坂圭祐の自陣からのロングパスが送り込まれた時点で、梅崎は左サイドに潜り込んで、縦に動き出していた。

 そこにFW山崎凌吾のヘッドでのパスが届くと、トップスピードに乗った状態から頭でボールを前に押し出し、さらに加速。最後は右足トゥーキックで大分トリニータU-18時代からの盟友であるGK西川周作の壁を破って、ゴールに突き刺した。

 このゴールには大きな伏線があった。

「僕は森脇(良太)とマッチアップしましたが、モリは立ち上がり凄くよかった。モリの特徴である前への強さ、インターセプトの上手さ、前向きの体勢で球際にガシッといけるプレーが出ていた。だから、そこを逆手に取ろうと思っていた」

 森脇の強みをよく理解しているからこそ、梅崎はそれを利用して自分の能力を引き出す判断を下したのだ。

開始早々、味方にアドバイス。

 また梅崎は、開始早々の3分に、試合の趨勢を決める言葉をピッチ内で発していた。

 DF山根視来の縦パスを受けた山崎が、そのまま自陣に戻って、3バック左の大野和成にバックパスする。これを受けた大野は、左サイドへ持ち出してからMF菊地俊介の足下にパスを送り込んだ。

 だが、これを読み切った森脇はインターセプトし、浦和ボールとなった。

 このシーンを目の前で見ていた梅崎は、すぐに大野の元に駆け寄ってこう伝えた。

「アイツは前に強いし、常に前を狙っている。もし判断を変えられたら、裏を狙ってくれ。俺はそこを狙いたい」

 この言葉でチームに“森脇の裏を狙う”共通認識が広がった。

自らの駆け引きが先制点に直結。

 それをより深めるべく、梅崎は自身のプレーで周囲に発信した。

 17分のことだ。梅崎はセンターライン付近で森脇を背負いながらターン。菊地に預けると、左サイド裏のスペースへ走り込む。菊地のリターンパスを受けると、追走してきた森脇のスライディングを、読み通りと言わんばかりに鋭い切り返しで運んだ。

 クロスはMF阿部勇樹のブロックで防がれたが、完全に森脇を手玉に取っていた。

 こういった駆け引きが、先制ゴールの呼び水となったのだ。

「坂からパスが出て、モリが食いついて、自分のところを超えるなと思った瞬間に裏に動き出した。ヤマ(山崎)もそれを意識してくれていたので来ると思った。狙い通り独走をして、GKにもう一歩近づいた方が良いと思って、近づいてからシュート。うまく行きました」

勝利の余韻より、名古屋戦。

 その後も相手の特徴を把握しながら、自分のよさを出すプレーで76分まで出場した。

「浦和に勝って、自分がゴールを決められたのは素直に嬉しい。でも、名古屋と鳥栖(が勝利)の情報が入ったので、すぐに“次だ!”という考えに切り替わった。長崎戦のように勝利の後の余韻はなかった」

 梅崎はこの試合のマン・オブ・ザ・マッチに輝いたが、その目にはもう名古屋との最終戦しか映っていなかった。

 J1リーグ最終節のアウェイ・名古屋グランパス戦は、湘南にとって文字通り“大一番”となる。

 名古屋との勝ち点差はゼロ。得失点2差で湘南の方が順位が上だが、同じ勝ち点40に湘南、鳥栖、名古屋の3つが並び、勝ち点41に横浜F・マリノスとジュビロ磐田がいるが、得失点差で見て、横浜FMがプレーオフに回る可能性は薄い。

 事実上、4チームのどれかがプレーオフに回る状況である。しかも、湘南と名古屋は直接対決だけに、この試合に負けるとプレーオフ行きの可能性は非常に高まる。

「引き分けを狙いにいかない」

 現時点で名古屋より順位が上の湘南としては、ドローでもいい計算だ。しかし、そもそも湘南はそんな“皮算用”をするチームではない。

「名古屋戦はもう勝つしかない。僕らは引き分けを狙いにいくチームじゃないし、そういう戦い方をしたら、いいことはない。最終戦でいかに自分たちが積み上げてきたものを表現できるか。イコール、相手の良さを潰す。名古屋は攻撃力のあるチームなので、押し込まれる展開になると思うけど、どれだけ劣勢の中でも(攻撃を)狙って、結果を出せるか。

 僕の仕事はゴールを演出すること。アウェイとか関係ない。今のベルマーレは純粋に良いチームになっているし、このチームはJ2に居るべきじゃないと思っている。だからこそ、勝ちたい。もう今考えていることはシンプルに勝ちたい。それだけです」

 梅崎司が感傷に浸るのは、この試合で勝利し、J1残留を確実に手にした時のみ。

 その時まで彼はエースとしてチームを勝利に導くこと以外、一切考えていない。

文=安藤隆人

photograph by Takahito Ando


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