天心vs.メイウェザーで思い出す、異種格闘技トラブルと“猪木アリ”。

天心vs.メイウェザーで思い出す、異種格闘技トラブルと“猪木アリ”。

「やはりこうなってしまったか」

 多くのファンや関係者がそんな思いを抱いたことだろう。

 今年の大晦日に開催される格闘技のビッグイベント『Cygames presents RIZIN.14』の超目玉カードとして、11月5日に発表された那須川天心vs.フロイド・メイウェザーJr.の一戦。

 キックボクシング28戦全勝の“神童”が、50戦全勝で世界5階級制覇を成し遂げたボクシング界のレジェンドに挑む超・夢の一戦だけに絶大な反響があったが、相手は1試合で300億円を稼ぎ出したこともある桁違いの大物。それだけに発表した時点から「本当に実現するのか?」と、疑問視する声も上がっていた。

 すると対戦発表会見からわずか3日後の11月8日、メイウェザーが自身のインスタグラムで「那須川天心との公式試合に一度も合意していない」「3分3ラウンドのエキシビションで、高額の料金を支払うごく少数の富裕層の前でやるもので、広くテレビで放送されるとは認識していなかった」などと主張。いきなり暗礁に乗り上げてしまったのだ。

 結局、RIZINの榊原信行実行委員長が急遽渡米し再交渉した結果、「3分3ラウンド制の限りなくボクシングに近いルールでの“非公式戦”として行う」と、あらためて対戦実現を発表。

 ただ榊原委員長自身、当初から「大晦日当日、両選手がリングに上がって向かい合うまで安心できない」と語っていただけに、まだこれから一波乱、二波乱ある可能性も否定できない状況だ。

猪木vs.アリを思い起こした。

 この一連の流れを受けて、同じ超大物ボクサーの“異種格闘技戦”として、1976年のアントニオ猪木vs.モハメド・アリ戦を思い起こした、古くからのプロレスファンも多いことだろう。

 猪木vs.アリも実現まで紆余曲折あり、当初アリは「エキシビション」「エンターテインメントとしてのプロレスリングショー」と認識して対戦を受諾。来日した際、通訳のケン田島に「いつリハーサルをやるんだい?」とたずね、「ノー。リハーサルはない。これはリアルファイトだ」と告げられ驚いたというエピソードも知られている。

ボクサーの異種格闘技はトラブルだらけ。

 この猪木vs.アリ戦以外でも、これまで超大物ボクサーが出場する異種格闘技戦では、必ずといっていいほど、なんらかの問題が起きてきた。那須川天心vs.メイウェザー会見にも同席した、現RIZIN統括本部長である高田延彦も、現役時代にそんな試合を経験している。

 高田は91年12月22日、両国国技館で行われたUWFインターナショナル初のビッグマッチで、プロボクシングの元WBC世界ヘビー級王者のトレバー・バービックと対戦。

 この試合は、猪木vs.アリの精神を継承するというコンセプトで組まれたもので、高田の対戦相手として、ボクシングの現役世界王者か元王者を条件にリストアップ。何人かの候補の中から、モハメド・アリの最後の対戦相手であり、マイク・タイソンに敗れるまで世界王者だった現役ヘビー級ボクサーのバービックが対戦に応じたことで実現した。

直前にローキック禁止を要求。

 当時、バービックはドン・キング・プロダクションズ傘下のプレーバーマン・プロモーションズの契約選手であり、Uインターはプレーバーマン・プロモーションズと契約。猪木vs.アリを再現するべく、いわゆる"プロレス内異種格闘技戦"ではなく、リアルファイトでの格闘技戦として行うことに合意した。

 しかし大会前日になり、バービックがローキックの禁止を要求。結局、試合はそのまま行われたものの、高田のローキックを食らったバービックがリング外に逃走。わずか1ラウンド2分52秒、試合放棄という後味の悪い結末となってしまった。

 この時、バービックが試合中もレフェリーに対して、しきりにローキックをやめさせるようアピールしていたため、一部では「下半身への攻撃は禁止のルールがあったのではないか」とも言われた。しかし関係者によると、もともとローキックは禁止事項には入っていなかったという。

 それがなぜ問題になったかといえば、当時はまだMMA(総合格闘技)が確立する前の時代。ローキックの威力や恐ろしさが認識されていなかったため、ルール交渉時に禁止にする旨の話は出なかったが、その後試合直前になり、ローキックが危険な攻撃だと認識したバービックが禁止を主張し、押し通そうとしたことが真相と言われている。

船木誠勝と4階級王者の対戦も……。

 高田vs.バービックの5カ月後、当時、プロフェッショナルレスリング藤原組の若きエースだった船木誠勝も、超大物ボクサーとの異種格闘技戦を経験している。

 船木は、'92年4月19日に東京体育館で行われた藤原組の1周年記念興行で、ボクシングで世界4階級制覇している“パナマの英雄”ロベルト・デュランと対戦。

 船木にとって初となる本格的な異種格闘技戦で、しかも相手はボクシング界のビッグネームということで注目を集めたが、デュランは明らかなウェートオーバーの身体で登場し、Tシャツ姿で試合をして、観客を失望させた。

 この試合、デュランはエンターテインメント性の強いメキシコのプロレス「ルチャ・リブレ」の選手とエキシビションを行うつもりだったため、あのようなコンディションだったといわれている。

 母国パナマはスペイン語が公用語のため、「プロフェッショナル・レスリング」が「ルチャ・リブレ」と訳されて、誤解が生じてしまったのだ。

 結局、試合は船木が3ラウンドに腕固めを極めてギブアップ勝ちしたが、デュランがあまりにも調整不足すぎたため、船木にとっては素直にはよろこべない勝利だった。

天心の名前が世界に広がってほしい。

 このように、これまで超大物ボクサーの“異種格闘技戦”は、すっきりしない結末の試合がほとんどだった。はたして今年の大晦日に行われる、那須川天心vs.フロイド・メイウェザーJr.の3分3ラウンド“非公式戦”は、どういった試合になるのか。

 どんな結末になろうとも、かつて猪木が「アリと戦った男」として、その知名度を世界的に広めたように、那須川天心が世界に衝撃を与え、その名が一気に広まるような試合に期待したい。

文=堀江ガンツ

photograph by AFLO


関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索