ギリギリでJ1に生き残った名古屋。52得点59失点をどう考えるか。

ギリギリでJ1に生き残った名古屋。52得点59失点をどう考えるか。

 2−2で試合が終わった後、スタジアムは凪ぎのようにシーンとなった。

 その時点で「プレーオフを戦わなければならない」と玉田圭司は覚悟を決めたという。

 ドローでJ1残留を決定づけた湘南ベルマーレのサポーターの歓喜の声が響き渡る。

 名古屋グランパスの選手ががっくりと肩を落としている中、名古屋ポーターの一部がザワザワし始めた。「もしかして?」という希望の空気が広がり、やがてあちこちで歓声が上がる。すると、スタッフからベンチにジュビロ磐田が川崎フロンターレに負けたというニュースが届き、選手が喜びを爆発させた。

 サブメンバーやメンバー外の選手も全員ピッチに集まり、喜び合う。ジョーは目に涙をためて、ガブリエル・シャビエル、エドゥアルド・ネットと抱き合った。

「ホッとしました」

 玉田は、表情を崩して、そう言った。名古屋は最終戦を終えた後、奇跡の逆転J1残留を決めたのである。

消えた“名古屋スタイル”。

 前半は、名古屋本来のスタイルがまったく消えていた。

 早めのクロスでジョーを狙い、相手のラインを下げてセカンドボールを狙うという攻撃は、攻撃のひとつのオプションとしてはプラスだ。ただ、それは持ち味である地上戦が主にあって、目先や流れを変えるのに効果的ということだ。

 ところがこの日は、ジョーのサポートが薄い中、ただボールを放り込むだけ。勝ち点3を取りたいという気持ちが先立ち、さらに湘南の激しいプレスを避けての手段だったのだろうが……これが完全に裏目に出た。

選手の動揺が止まらない……。

 地上戦も裏を狙う動きがなく、足元へのパスだけで相手に容易に狙われてボールを奪われた。その状況をベンチの前田直輝は地団駄を踏んで見ていたという。

 名古屋は後手を踏み、先制点を失い、PKで2点目を奪われた。

「2点目を取られた時、さすがにガクッという感じになった」

 丸山祐市は、選手の動揺を肌で感じていたという。

風間監督「自分たちの特長はなんだ!」

 前半終了後、ロッカーに引き上げてくる両チームの選手の表情はまったく対照的だった。手応えを感じ自信満ちた湘南と、落胆する名古屋。

 この時、スタジアムにいる誰もが2年前の2016年11月3日、湘南に3−1で敗れ、チーム初のJ2降格を味わったことを思い出しただろう。あの時と同じように、この日も「また湘南に」という空気が流れていた。

 業を煮やした風間八宏監督はロッカーで発破をかけた。

「自分たちの特長はなんだ!」

 その声に、多くの選手が「ボールを持って前に進むことです」と答えた。

 玉田は「今、やるしかないだろう」と、声を上げたという。

 チーム全員ですべきことを確認、さらに前田を投入し、4バックに変えて後半から巻き返しを図った。「後半から雰囲気が変わった」と玉田の言葉通り、名古屋は前田の仕掛けるプレーに引っ張られるように息を吹き返し、2つのPKを奪い、ジョーが決めて同点に追いついた。

 前半とは別のチームのような変化を遂げたのだ。

玉田「力があるがそれを発揮できない」

 今年の名古屋を象徴するような戦い方だが、勢いがつき、サポーターのボルテージがグっと盛り上がる。選手とサポーターの一体感が逆転のムードを作り上げていった。

 だが、ここまでだった。逆転できるチャンスが何度かあったが、ひっくり返せない。

 それが今の名古屋の力なのだろう。実際、長崎に負けて7連勝をストップされてから連勝がなくなり、それから9試合(3勝6敗)、複数点を取って勝ったのは前節の広島戦(2−1)だけだった。

 力はあるが、力強さが足りない。

「力があるがそれを発揮できない」と玉田は言っていたが、中盤戦で7連勝出来ていた時は発揮できていた。

 だが、自分たちの良さを研究され、封じ込まれた時、抵抗し、突破していく力が足りない。そういう時、守備力があれば耐えて、1点取って勝つということも可能になるが、今の名古屋はそれがなかなかできない。

 守備の整備をすれば、攻守にバランスが取れ、残留争いに巻き込まれるチームにはならないと思うのだが、そこにメスが入らないまま終わってしまった。

 59失点は最下位の長崎と並びリーグ最多である。

今季は歴代1位の観客動員数に!

 この日、最終戦のセレモニーで小西工己社長から来季の風間監督の続投がサポーターに告げられると、「おぉー」とゴール裏に膨らんでいたサポーターが大きく沸いた。

 この日、瑞穂には1万9840人のファンが訪れ、年間44万4233人の集客となった。名古屋のリーグ戦1試合平均2万4660人は歴代1位を記録した。

 ファンを魅了するサッカーを展開し、その期待感から多くのサポーターがスタジアムを埋めたのだが、この数字に結果がそぐわない。

和泉「この順位が自分たちの実力」

「いいサッカーしているよね」

「おもしろいサッカーしているよね」

 名古屋のサッカーをそう評する人は多い。

 しかし、「波があって勝てないよね」「優勝できないよね」とも言われてしまう。いいサッカーをしても勝てなくては、なかなか評価はされない。結果を出し、社会的な評価があってスタイルは認められるものだ。J1残留を決めたのは選手、クラブ、サポーターにとっては最良の結果になったが、「この順位が自分たちの実力」と和泉竜司が語ったように15位がチーム力だ。

 今回、J1残留は風間監督がかつて指揮した川崎に助けられた。

 その川崎が風間監督の遺産を活かして、どうやってリーグ2連覇を達成したのか。

 残留を果たしたが、2年前のJ2降格時とは違う明確な課題を名古屋は突き付けられている。

文=佐藤俊

photograph by J.LEAGUE


関連ニュースをもっと見る

関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索