横浜FC、J1への道は断たれても。「やり切ったので悔いはないです」

横浜FC、J1への道は断たれても。「やり切ったので悔いはないです」

 アディショナルタイム90+6分での失点。横浜FCにとっては悔やんでも悔やみきれない敗戦となった。

 東京Vが大宮を下した1回戦に続いての1−0、2試合ともゴールはセットプレーから生まれた。それはプレーオフらしい決着といってもいい。

 下位にとっては一戦必勝、上位にとって絶対に負けられないプレーオフは緊張感が高く、厳しいプレッシャーの中でのゲームとなる。こういう試合では、セットプレーが重要性を帯びてくる。流れの中でプレッシャーをかいくぐり、ゴールを決められるほどJ2は技術レベルが高くはないからだ。

 さて、敗れた横浜FCのタバレス監督は淡々と試合を振り返った。

「全体的にはいいゲームをしたと思う。0−0の引き分けを狙ったわけではなく、多くのチャンスを作った。ただJ1に上がるには、多くのものが欠けていた」

 そういって指揮官は、欠けているものをふたつ挙げた。

「このチームには、負傷した選手を回復させる体制に問題がある。レアンドロ・ドミンゲスもしっかり回復させられれば、この試合に間に合っていただろう。(途中出場)の戸島章も万全ではなかった」

 もうひとつは、ゴールを決める力について。

「この試合での我々の問題は、数々のチャンスを決められなかったこと。そうなると最後に痛手を負う。それがサッカーというものだ」

レドミがこの試合にいれば。

 指揮官の言葉には説得力がある。

 今季11ゴール14アシストと傑出した数字を残したレアンドロ・ドミンゲスは、この大一番を欠場した。2週間前の最終節で右足を負傷。前日練習には参加したが、間に合わなかった。

 多くの決定機を作りながら、ひとつも決められなかったことを考えると、プレッシャーの中でも狙ったところに蹴れる彼がいたら、という思いは残るだろう。

ゲームプランは完璧に遂行したが。

 結果だけが求められる一戦、敗れた横浜FCには何も残らないのかもしれない。だが、それでも彼らはいいゲームをしたと思う。

 今季の横浜FCは、レギュラーシーズンの2試合で東京に1分け1敗と負け越した。だがGK南雄太は試合後、「守りがハマらなかった2試合に比べて、この一戦では完全に守備が機能した」と振り返った。

 実際に、狙い通りのゲームをしたのは横浜FCだった。

 3バックはGK南も含めて冷静にパスを回してリズムを作り、ボールへの出足でも東京を上回った。自陣のスペースをしっかりと消して、カウンターからゴールに迫る。

 後半立ち上がり、東京はレアンドロと梶川諒太のふたりを投入して、一気に勝負をかけてきたが、それでも横浜が主導権を失うことはなかった。多少、受け身になっても守備陣はバランスを保ち、球際の攻防でも引けを取ることはなかった。

 とくに目を引いたのが、FWイバの献身的な働きだ。29分の決定的なヘッドはポストを叩き、ゴールを決めることはできなかったが、労を惜しまず中盤の守りに参加してピンチの芽を摘み取った。エースが汚れ役を進んで買って出たことで、チームの士気は高まった。

泣き出す選手、さばさばした選手。

 7分という長いアディショナルタイムでも、先に決定機を迎えたのは横浜FCだった。しかも2度も。そのうちひとつでも決めていたら、私はいまごろ「横浜は完璧なゲームを遂行した」と書いていただろう。しかしゴールは決まらず、96分のCKですべてがひっくり返った。「これがサッカー」としかいいようがない幕切れだった。

 試合後、横浜FCの選手たちは多くが敗戦のショックから立ち直れず、しゃべっているうちに泣いてしまう選手もいた。だが、さばさばした選手もいた。レアンドロ・ドミンゲスの代役として、スタメン出場を果たした野村直輝だ。

 前線からの守備とセットプレーのキッカーを任された彼は、身を粉にして働き続けた。労を惜しまず敵のボールを追い続け、ボールを持ってもプレッシャーを怖がらずに溜めを作って、味方の攻め上がりを引き出した。

 80分で交代を余儀なくされたが、この試合の重みを引き受けて堂々とプレーした。

野村「悔いはないですよ」

 残酷な結末が嘘のように、彼ははっきりとした口調で語った。

「毎年、昇格プレーオフではこういうことが起きている。最後のセットプレーは、もうどうしようもないというか。やれることはやり切ったので悔いはないです。今年、ぼくは自分を犠牲にしても、チームのため、みんなのために戦おうということを言い続けてきました。レアンドロがいたらといった、たらればもあるかもしれません。でも今日は、出た選手みんなが自己犠牲の精神を持って戦うことができた。そういう試合が最後にできたので、悔いはないですよ」

 この試合を三ツ沢で観戦した横浜FCサポーターは、立ち直るまでしばらく時間がかかるだろう。だが、この野村の言葉には共感できるのではないだろうか。

文=熊崎敬

photograph by J.LEAGUE


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