イカルディなどスター候補は多い。アルゼンチン代表監督は大丈夫か?

イカルディなどスター候補は多い。アルゼンチン代表監督は大丈夫か?

 11月29日、AFA(アルゼンチンサッカー協会)は、現在臨時でアルゼンチン代表を指揮しているリオネル・スカローニU-20代表監督を、来年ブラジルで開催されるコパ・アメリカまで正式に監督として任命すると公表した。

 スカローニはロシアW杯後、ホルヘ・サンパオリ前監督の後任として暫定的に(半ば強制的に)アルゼンチン代表を任され、これまでに親善試合6試合で4勝(グアテマラ戦3−0、イラク戦4−0、メキシコ2連戦(2−0)、1分け(コロンビア戦0−0)、1敗(ブラジル戦1−0)、11得点・1失点というまずまずの戦績を残している。

 11月にアルゼンチン国内でメキシコ代表相手に2連勝を遂げた際には、新生アルゼンチン代表のキープレーヤーであるマウロ・イカルディがようやく代表での初ゴールを決め、チーム再建の試みが形となって見え始めた。そのことが、メディアからも肯定的に評価されているところだ。

 AFAが来年のコパ・アメリカ終了まで代表チームをスカローニに任せることに決めた理由も、まさにそこにある。

落ちた代表をどう立て直すか。

 イカルディを始め、パウロ・ディバラやジョバニ・ロセルソ、エセキエル・パラシオスといった今後の代表を担うスター選手およびその候補生たちに惜しみなく出場機会を与え、短期間ながら継続性と一貫性を重視するコンセプトに基づいてチーム作りに従事するスカローニの取り組み方に、将来性を見出したというわけだ。

 AFAのクラウディオ・タピア会長は、29日に行なわれた会見で次のように語っている。

「我々が代表チームに何を求めているのかを知ることは重要だ。これまでリオネル・スカローニの仕事ぶりを見てきた結果、コパ・アメリカまでの継続をオファーすることに決めた」

 つまりAFAは、ロシアW杯で落ちるところまで落ちたアルゼンチン代表を立て直すために何が必要か、そのためには何をどのようにして取り組むべきかを理解している指導者として、スカローニを選んだことになる。

ロシアW杯での決裂を重く受け止めて。

 さらにタピア会長は、自身が度々口にしてきた「10年計画」の軸となる構想として、「監督が交代してもそれまでのプロセスが無駄にならないプロジェクト」の重要性を強調。代表チーム強化プランが「監督の名前ではなく組織によるもの」であるべきだと話した。

 ブラジルW杯以後、わずか4年の間に3人の監督が入れ替わったことでチーム内に混乱を招き、挙句の果てにはロシアW杯期間中に選手と監督の仲が決裂してしまった事態を、協会として重く受け取っていることがよくわかる。

将来性はあるが経験不足?

 では、今回スカローニを正式に代表監督に任命したのは賢明な判断だったのだろうか。

 知り合いの記者3人の意見はNoだ。

 アルゼンチンの有力メディアで20年以上にわたって代表チームの取材にあたる彼らは、スカローニが代表監督に任命されたことについて全員が「反対」だと述べ、その理由として「代表チームは“監督が学ぶ場所”ではない」と声を揃えた。

 スカローニは現役時代、U-20代表とA代表でホセ・ペケルマンの指導を受け、8シーズン所属したデポルティーボを始め、スペイン、イングランド、イタリアの欧州主要リーグでプレーした経歴を持つ。

 2015年に引退したあと、指導者のライセンスを取得してマジョルカの下部組織のコーチとなり、サンパオリがセビージャの監督に就任した2016年6月、同チームのアシスタントコーチとして初めてトップチームの指導に携わることになった。

 そしてその1年後、サンパオリがアルゼンチン代表監督になると同時に指導スタッフに加わり、ロシアW杯後からU-20代表監督およびA代表監督代行の役目を任されている。8月には、U-20代表監督を任されてから2週間後に開催されたアルクディア国際ユース大会で優勝を遂げた。

 ペケルマンやサンパオリのような名将たちから教えを受け、選手としても指導者としてもW杯に出場した豊富な経験を活かせる貴重な人材であることは確かだろう。

 また、一緒にユース代表の指導にあたるパブロ・アイマール(U-17代表監督)とディエゴ・プラセンテ(U-15代表監督)とはチーム作りにおいて共通したアイデアと価値観を持っており、育成世代からの一貫した指導を目指す(厳密に言えば90年代にペケルマンが実施していた形式に戻す)上で好都合だと受け止めることもできる。

優秀な指導者は大勢いるはずなのに。

 私自身も実際、後任がなかなか見つからない現実を考慮した場合、一時的に代表チームから離れているリオネル・メッシをはじめ選手たちからの信頼も厚いスカローニに、このままA代表を任せるのも悪くないと思っていた。

 だが、記者たちの見解は「トップチームの監督としての経験がない指導者に代表を任せることは間違っている」と手厳しい。もちろん、悪いのはスカローニではない。

 責任は、世界の第一線で采配を揮う優れた監督を次々と生み出す「指導者輩出国」でもあるアルゼンチンにおいて、代表再建に相応しい知識と実績を持ち、具体的な強化計画を実施できる人物を説得し、納得させる手立てを持たないAFAにある。

 しかもスカローニは、11月のメキシコとの親善試合を終えたあと、来年1月17日からチリで開催される南米ユース選手権に向けてU-20代表の指導に専念することになっていた。今この時期にエスカローニをU-20代表から外して新たな監督を任命することは、AFAが相変わらず迷走し続けている現状の証でしかない。

 果たしてスカローニは、そんなメディアの厳たる批評を見返すほどの結果を出すことができるのだろうか……。

文=藤坂ガルシア千鶴

photograph by UNIPHOTO PRESS


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