「新たなネイマール」の挫折と今。ガビゴル、祖国ブラジルでの変貌。

「新たなネイマール」の挫折と今。ガビゴル、祖国ブラジルでの変貌。

 リオ五輪サッカーのブラジル代表には、注目のガブリエルがふたりいた。

 ひとりは、センターフォワードのガブリエル・ジェズス。2016年夏のリオ五輪で3ゴールを決め、19歳で金メダリストとなり、2017年1月にはブラジルのパルメイラスからイングランドへと渡る。

 入団したのは名将ジョゼップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティ。シティの一員となったG・ジェズスは2017-18シーズンのプレミアリーグを制すると、18年夏にはロシアワールドカップに出場し、現在はイングランドサッカー史上もっとも魅力的なサッカーを展開しているとも評される、マンチェスター・Cに居場所を確保する。

 リオ五輪前後のあの時期に、このG・ジェズスと同じくらい将来を嘱望されていたもうひとりのガブリエルはその後、どうしているのだろうか。

 ブラジルのサントスで当時のクラブ歴代6位となる16歳と11カ月で先発出場し、ガビゴルの愛称でも知られるようになるガブリエル・バルボサだ。

 ちなみに、その記録の歴代2位はサッカーの王様として有名なペレの15歳と10カ月、歴代9位がネイマールの17歳と1カ月だというから、何の当てにもならない単なる数字ではないだろう。

インテルに約40億円で加入も。

 実際、セカンドトップ兼ウイングのガビゴルもリオ五輪で2ゴールを決め、19歳で金メダリストとなり、2016年夏の移籍でサントスからイタリアへと渡る。2021年までの5年契約で入団したのは名門インテル。移籍金は3000万ユーロ(約40億円)を超えていたという。

「新たな怪物」とも「新しいネイマール」とも称され、入団プレゼンテーションの盛大さに期待の大きさが映し出されていたものだ。

 ガビゴルはその後どうしているのか。ご存じだという方は、なかなかのブラジルサッカー通だろう。

 インテルでは出場機会をほとんど得られず、2016-17シーズンのセリエAは途中出場9試合のみ。何とか1ゴールを記録したとはいえ、出場時間は9試合の合計で111分だけだった。

 続く2017-18シーズンはポルトガルに新天地を求めたが、インテルからのレンタル先ベンフィカでさらに評価を落とす。国内リーグの出場は1試合13分のみ。事実上の戦力外となり、在籍した5カ月のうち後半3カ月はベンチにすらほぼ入れなかった。

苦しむサントスを救う得点王。

 ヨーロッパで通用せず、そのまま檜舞台から姿を消したブラジル人のアタッカーはいくらでもいる。ガビゴルの場合は、イタリアだけでなく、ややレベルが落ちるポルトガルでも鳴かず飛ばず。自信を失い、プレーに悪影響を及ぼし、そのまま消えていってもおかしくない。

 追われるようにベンフィカを去り、2018年1月から古巣のサントスに復帰したガビゴルは、試合には出場できるようになる。

 ところが、今度は厳しい批判に晒された。ブラジル全国リーグでサントスが降格圏付近に低迷し、その戦犯として吊るし上げられたのだ。その頃、すなわち今から4カ月ほど前の2018年8月上旬に、ガビゴルがこれから華々しく復活を遂げると予言したところで、どれだけ信じてもらえたか。

 現在、ガビゴルは脚光を浴びている。ブラジル全国リーグで8月25日の第21節に1ゴール、9月1日の第22節にハットトリック、9月9日の第24節に2ゴールと量産すると、その後も得点を積み重ね、12月2日に全日程を終了したブラジル全国リーグで得点王に輝いたのだ。

 8月中旬の第18節終了時点で降格圏の17位に沈んでいたサントスは、20チーム中10位でシーズンを終え、結果的には余裕を持っての1部残留にガビゴルは大きく貢献してみせた。

国内外クラブが熱視線を送る。

 インテルからサントスへのレンタル期間は今年の12月31日までで切れる。11月中旬にはガビゴル自身がサントスへの残留を否定する発言を残しており、今冬の進路が関心を集めるようになっている。

 ガビゴルの保有権を持つインテルから最新のブラジル全国リーグ得点王を陣容に迎えようと、すでに国内外のクラブが行列を作っているようだ。ブラジル国内の名門クラブだとコリンチャンス、パルメイラス、クルゼイロ、国外の有力クラブだとイングランド・プレミアリーグのトッテナムやエバートン、ドイツ・ブンデスリーガのフランクフルトなどが取り沙汰される。

 サントスから一旦レンタルバックするインテルでのトレーニングでルチアーノ・スパレッティ監督を説得できれば、そのまま戦力となる可能性も低いとはいえゼロではない。

デブールが口にしていた戒め。

 ただし、ヨーロッパに本格的に戻る場合は、懐疑的な見方も出てくるだろう。二度あることは三度あると言うではないか、と。それを三度目の正直としていくには、どのような姿勢が必要なのか。参考になるのは、ガビゴルがインテルに入団した当時の監督、フランク・デブールの見解だ。

「彼(ガビゴル)は自分がまだブラジルにいると考えている。走るよりも歩いている時間の方が長い」

「スペースに走り込まずにパスをもらいたがる」

「ハードなトレーニングが必要だと理解していない」

「ファンタスティックなプレーヤーになっていくためのポテンシャル、素晴らしい左足は持っている。しかし、ヨーロッパのフットボールはブラジルと同じではない。そのことを早く学んでほしい。さもなければ、ブラジルサッカーにとっても損失となってしまう」

ローカルヒーローか、欧州か。

 デブールがそのように戒めていた2016年の秋から、すでに2年という歳月が流れている。ガビゴルはいかに変貌を遂げているのか。本人は次のように振り返り、前を向いている。

「(最初の欧州挑戦では)僕の適応が理想的ではなかったのだろう」

「ヨーロッパで多くを学び、今は継続性を持ってプレーできている」

「(サントスの監督からの)信頼を感じていて、それがピッチ上で何ができるかを示すのに役立っている」

 このままブラジルに残り、いわばローカルヒーローとして君臨しつづける選択肢もあるだろう。しかし、本人のこれまでの発言を総合していくと、気持ちは欧州再挑戦に大きく傾いていると見てよさそうだ。

 リオ五輪代表のチームメイトで、2年前には並び称されていたG・ジェズスが、世界でも最高峰のクラブで認められている。その事実が、ガビゴルの欧州再挑戦への意欲を後押ししていてもおかしくない。

野獣エジムンドからの助言。

 傾聴すべきは「アニマウ(野獣)」の異名を取り、1990年代にセリエAでも異彩を放ったエジムンドの言葉だ。

 2018年1月下旬にガビゴルがサントスに戻ったばかりの頃、同じブラジル人のまだ若いアタッカーを励ますつもりだったのか、メディアを介してこう声を掛けている。

「良い選手は、そこがどこであれ良いプレーをするものだ」

 二度挫折したヨーロッパで三度目の正直を目指すのか、それとも勝手知ったるブラジル国内に留まるか。まずは、ガビゴルのその決断が刮目に値する。

文=手嶋真彦

photograph by Getty Images


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